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318    ARTISTS    LUKIE D

LUKIE D
LOVE AGAIN
 
Interview by Minako Ikeshiro / Photo by Marvin Bartley
 

 ルーキー・Dの新作『Love Again』は、昨年からヒット中の「Just As I Am」、既に大人気ながら、正規にはリリースされていなかった「Rescue Me」、そしてアッシャーの「Love In This Club」のカヴァーなど、強力な内容。レゲエ・シンガーとして昨今稀にみる充実した仕上りになっている。お得意の「キュン」とさせるラヴァーズも満載だ。
 
 "DJ全盛時代"の現在のジャマイカ音楽シーンで一人気を吐く男、ルーキー・D。シンガーには向かい風が吹き続けている世界でたくましくサヴァイヴし続けている貴重な人物だ。アメリカR&Bからの影響を受けながら、しかしジャマイカならではの清涼感溢れるクリアでよく伸びるヴォーカル。実にソウルフルではあるけれど、多彩なリズム、サウンドにスムースに対応できるより鮮やかな歌唱は"レゲエ・シンガー"独自のものと言ってよい。20年を越えるキャリアを経ても、そのヴォーカルには衰えなし。
 
 「声が変わらないと言ってくれるのは嬉しいよ。声を保つためにはね、まずはとにかく休養する事だ。充分な休みを取る事が何よりも大切さ。あとは食べ物にも気を使っている。生活する上で、とにかくいつも声の事を最優先に考えているんだ」(ルーキー・D。以下発言部分は全て本人)。
 
 ジャマイカのシンガー(に限るわけではないけれど)の中には、声の衰えで全盛期を短くした人も少なくないが、ルーキー・Dに関しては全くその心配はないですね。歌のスキルは年々上がってきているし。デビュー期の初々しい歌も良かったけれど、最近の彼の歌唱は、安定感抜群で、尚かつ切れ味も最高。今回紹介するニュー・アルバム『Love Again』でも、その吸引力のあるヴォーカルは冴え渡っている。
 
 このアルバム、前作に引き続きプロデュースはMaximum Sounds。オーセンティックなジャマイカン・サウンドを現代にアップデートする手腕はピカイチのプロダクションだ。前作『Deliver Me』も最新のダンスホールとは一線を画した"歌のアルバム"だったが、今回もその続編的内容と捉えてもよいだろう。実際、じっくりと聴き込める作品に仕上がっている。
 
 「そうだね、今回のアルバムは前作『Deliver Me』の続編と考えていいと思う。前作との違いがあるとすれば、今作の方がより一層ラヴァーズ・ロック寄りというところかな。前作はもう少しルーツ寄りだった気がする」
 
 「このアルバム収録曲の中では『How Will I Know』が一番好きだ。理由はスウィートだから。スウィートなリディムが大好きなんだ。歌の内容も男女の関係でよくある事だしね」
 
 この本人が一番お気に入りだと言う「How Will I Know」(Studio Oneの名曲、ケイブルズの「Baby Why」リメイク・トラック使用)を筆頭に、透明感に満ちたヴォーカルのラヴァーズ・チューンがズラリとラインナップされているのが本作の特徴だ。そして今回はMaximum Sounds以外のプロダクションが制作した音源も約半数収録されている。
 
 UKの注目レーベル、Special Deliveryからは、ゲンズブールの「Je'taime」を下敷きにしたメロウなラヴァーズ「Young Love」(ハリー・J・オールスターズが70年代に「Je'taime」をインスト・カヴァーしたテイクをヒントに作られたと思われる。中々洒落たアイデアですね)。Penthouseレーベルからはベレス・ハモンドのヒット曲「I Feel Good」のトラックを使用した「Save Me」。スライ&ロビーのTaxiからは "Darker Shade Of Black" リディムの「Love Again」が等々、様々なプロダクションが手掛けたルーキー・Dの好曲が収録されている事も、前作との大きな違いだ。
 
 Fi Mi Musicからの大ヒット「Missing You」("Old Skool" リディム)も収録されていますよ。で、この曲、「Missing You」って元ネタはTreasure Isleのロックステディの名曲「Moon Light Lover」ですよね。完全なリメイクではないけれど、サウンドも歌も60年代のあのフィーリングをそのまま生かした楽曲です。他にも本作収録の曲にはロックステディを現在に蘇らせたかの様なチューンがあって、中でも「How Long」が素晴しい。フィリス・ディロンの「Perfidia」を見事にリメイク。フレンチー、流石です。
 
 「ロックステディは勿論大好きだ。本当の"歌""メロディ""歌詞""ブリッジ"が詰まっているからね。リディムに"ブリッジ"があると、本物の唄い手として多様性を表現できるからね。だから。とてもインスパイアされるよ」
 
 そして、彼のもうひとつの十八番カヴァー・チューンも当然充実している。1曲目のサム・クック名作のセミ・アカペラ・カヴァーから、アッシャーの大ヒット曲まで。ジョーディン・スパークス&クリス・ブラウン「No Air」、エアサプライの「Just As I Am」は熱心なレゲエ・ファンにはお馴染みの好カヴァーですよね。青い空に向かって真っすぐに昇る様な彼の美声とレゲエのリズムで料理されると、凡庸なクラシックも生まれ変わります。選曲も昔から独特ですよね、幅広いジャンルの音楽を聴いてきた事が伺える。そんな彼のフェイヴァリット・シンガーは少し意外なアーティスト。
 
 「一番好きなアーティストは、ナット・キング・コールだよ」
 
 時代、地域を越えて愛される歌を歌えるという点が彼のフェイヴァリットとルーキー・Dの共通点。サンチェス以降たくさん出現したシンガーの中で確かなオリジナリティをいち早く確立できた秘密が少し分かった様な気がします。スタート・ラインが他の人とは既に違っていたんですね。目線が違う。
 
 という訳で、益々今後に期待が高まるルーキー・D。本当に良いアルバムを作りました。ジャマイカのシンガーものが聴きたいという方には自信を持ってお薦めできる作品です。
 
 「とにかく歌い続けて良い曲を作り続けたい。もっとプロデュースもしたいし、レゲエを世界に広める手助けがしたいんだ」

 

"Love Again"
Lukie D
[Victor / VICP-647564]

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