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BOOM BAP
 
『Distant Relatives』はDamian "Jr. Gong" MarleyとNasty Nas(aka Esco / aka God's Son)による共同制作中のアルバムだ。このプロジェクトの目的は(イイ音楽を作る事以外に)レゲエとヒップホップの深い繋がりを探求・賞賛し、この2つの音楽の他にも素晴らしい音楽を育んだアフリカ(人類誕生の地ともいわれている)に音楽を通して辿っていく事だ。Super CatとBiggie Smallsによる「Dolly My Baby」、ShabbaとKRS Oneの「The Jam」(リミックス)、Beenie ManとT.I.の「I'm Serious」など、ジャマイカとアメリカのアーティストによるコラボは数多くある。だが『Distant Relatives』はリミックスやシングルの様に限定されたコラボではない。新たな音楽表現の道筋を切り開く、2人のアーティストによるフル・コラボレーション・アルバムなのだ。
 
この2人が最初に出会ったのは、Damianの兄Ziggy MarleyとStephen Marley、それにNasとThe Fugeesが共に出演した96年の「Smoking Grooves」ツアーの事だった。ちなみにLauryn HillとKymani Marleyが知り合ったのもこのツアーで、後に「Zion」とマルチ・プラチナ・アルバム『The Miseducation Of Lauryn Hill』を生むきっかけとなったツアーだ。そして、Damianがグラミー賞アルバム『Welcome To Jamrock』(05年)を制作中にNasに声をかけて完成したのが「Road To Zion」だ。この曲での2人のコンビネーションは抜群だ。「オレはずっとNasのファンだった」とJr.Gongは言う。「彼はいつも素晴らしいアルバムをリリースしていたからね、2つ返事だったよ」とNas。この曲の後に2人が再びタッグを組み、更に大きなプロジェクトにとりかかったのはごく自然な流れだったのだろう。
 「お互いの意見は尊重しあうよ」と今夏の「Rock The Bells」ツアーでメイン・アクトをJr.Gongと共に務めたNasは言う。「2人の共同作業は楽しいよ。お互いリリックに関して真剣だからね。Jr.Gongのリリックに興味深い部分があると、すぐ彼にその真意を聞くようにしているよ」
 
「オレにとっていい勉強になっているよ」とMontego Bayの「Reggae Sumfest」のファイナル・ナイトにNasをゲストに連れてきたJr.Gongは言う。「最近はスタジオで一緒に作業をする事が多いんだ。2人とも"リリック書き"だから鉄が鉄を鍛えている様なものさ。もう、行けるところまで行くしかないね」
 
『Distant Relatives』というプロジェクトは、ラップの傑作がレコード会社の会議室ではなく地下の粗末なスタジオで創られていた時代、つまりKRS-OneがStudio Oneのベースラインを使ってヒップホップの傑作「The Bridge Is Over」(この曲で、アフリカとジャマイカ、そしてNYCを結ぶ音楽の橋は、より強固なものになった)を作っていた時代を顧みるものだ。いや、更に時代を遡り、Kool Hercという若いDJが混沌としたジャマイカのKingstonからThe Bronxと呼ばれる希望の地に移住した、1968年頃はどうだろう。彼は大量のスピーカーを公園に積み上げ、マイクを握るDJが人々を朝まで熱狂させていたのだ。このプロジェクはそんな時代の事までを語ろうとしている。
 
時を遡れば色々な発見があるはずだ。ヒップホップ特有の"発明"だと思われているものは、ジャマイカのサウンドシステムに起源があると考えていいだろう。アメリカのラップ・プロデューサーがラップの進化に貢献した事は揺ぎ無い事実だ。しかし、既存の曲を解体し、それをもとに作ったトラックにリリックをのせて新しい曲を作るという手法(つまりラップだ)はアフリカ系移民の国ジャマイカで生まれたのだ。Peter Toshはかつてこの様に言っていた。「この事実に関して残り半分のストーリーが全く知られていない」と。
 
そこでBob Marleyの末っ子の登場だ。彼はMarley一家の中で初めてダンスホール・スタイルに深く関わり、レゲエ・カテゴリー以外でグラミー賞を獲得した初めてのレゲエ・アーティストだ。同賞では、ヒット・シングル「Wel-come To Jamrock」で最優秀Urban/Alternativeパフォーマンス賞を獲得している。
 
Main Sourceが91年に発表した「Live At The Barbeque」にゲスト参加し強烈な印象を残したNasは、ヒップホップ界で誰もが一目を置く存在だ。ジャズ・トランペッターのOlu Daraを父に持ち、80年代前半からラップ・アーティストを数多く輩出しているQueensbridge団地で育った。世界中で2,000万枚以上のアルバム・セールスを誇る伝説的なアーティストだ。
 
「オレ達がこのプロジェクトをスタートさせた際にどのような方向を目指すべきか考えたんだ」とNasは説明する。「レゲエやラップといえば様々な共通点がある。そこで"Empowerment"(自分自身のルーツを知り、それにより他人に対しての繋がりと理解を深めること)にしたのさ。『Distant Relatives』では人類を一つの家族の様なものとして考えているからね」
 
「アルバムのサウンドはオレやNasの典型的なそれには仕上げたくないのさ」とアルバムの殆どの曲をプロデュースしたDamian Marleyは語る。「リスナーがオレとNasのサウンドの特長の一部をアルバムの中で認識してくれればいいいと思っている。音楽には所謂中間点というものが存在すると理解して欲しいのさ」
 
「アルバム作りの全てのプロセスが楽しいよ」とNasは付け加える。「スタッフと様々な問題を解決しながら作るのは楽しい事さ。このアルバムでは音楽的にあらゆる可能性があるからな」
  
TEXT BY ROB KENNER
アメリカの『VIBe』マガジン、VIBE MEDIA GROUPのエディター・アット・ラージとしてREGGAEコラムを執筆中。HIP HOP/REGGAEに深い愛情を持つ。
Website → www.boomshots.com

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