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あらかじめ決められた恋人たちへ
 
Text by Takeshi Miyauchi / Photo by Yukitaka Amemiya
 

 圧倒的なライヴ・パフォーマンスで、ジャンルを超えた注目を集めているダブ・ユニット、あらかじめ決められた恋人たちへ。彼らが、通常のライヴ盤とはまったく違う発想による、フェイクメンタリー・ライヴ・アルバム『ラッシュ』を完成させた。
 
 都会の雑踏/駅のホームに響くアナウンス/行き交う人々が抱える様々な思いと様々な生活/坂をのぼる/階段を降りる/うっすらと足下から響いて来る重低音/吸い殻とこぼした酒のすえた匂い/重たいドアを開ける......。
 
 あらかじめ決められた恋人たちへ、という長い名前を名乗る彼らは、もともとは池永正二(メロディオン、トラックメイキング)の打ち込みソロ・ユニットとして始動した。
 
 「その前は、オルタナとかジャンクとかノイジーなものが好きだったんで、そういうバンドをやってたんです。で、メンバー辞めちゃってしばらくして打ち込みでやるようになって」(池永)
  
「その頃も観に行ったら、真っ暗で傘持ってて、ずっとノイズが鳴ってて。池永さんがウガーッ!て叫んでて。でノイズの合間にレゲエっぽい空気が流れたり......ライヴ30分持ち時間なのに、5分ぐらいで終わっちゃって」(キム)
 
 メロディオンを演奏する池永が作ったトラックに加え、ドラムスのキム、ベースの劔、テルミンやジャンベ、メロディオンを演奏するクリテツ、さらにダブ・エンジニアの石本を加えた布陣でのライヴ活動が、昨年あたりから定着。ジャンルを超えた対バンで圧倒的な存在感を示してきた。
 
 「トラックから飛ばすダブ・サウンドをギターアンプから出したり。それが結果的に凄くいい音が鳴るんですよ。ギターウルフやスタジオ・ワンみたいな(笑)。トラックもウチ、クリック出さないんですよ。クリックなしでモニターでトラックの音を聴きながらリズムも合わせていく」(池永)
 
 「テルミンとか、アルバムで使ってない曲でも、ライヴではあれこれ入れてて。ライヴの時は、アルバムをなぞったようなアプローチとは違いますね」(クリテツ)
 
 独自のアプローチで世界観を作ってきた彼らが先日リリースしたのが、フェイクメンタリー・ライヴ・アルバムと名付けられた『ラッシュ』という作品だ。今年2月に渋谷Lushでライヴ・レコーディングされた音源を、池永の編集によって再構築されたこのアルバムは、カットアップされたライヴ音源の合間に街の雑踏や生活音がインサートされながら、ひとつの物語性を帯びた作品となっている。
 
 「ライヴ=リヴ(生活)じゃないですか? 僕らがライヴやる時には、生活とか熱情を注ぎ込んでる。そういうものはCDで聴くよりも、ホントは現場に行ったほうが絶対いいんですよ。じゃあ、ライヴ盤としてライブ感以外で成立させるベクトルは無いか?って考えた時に、僕らのライブには生活を注ぎ込んでるから、生活音を入れちゃえって思ったんですよ。雑踏とか街の音とか......ライヴというドキュメンタリーを、虚構として組み立てていく。そういう意味でもフェイクメンタリーかなって」
 
 様々な日々の暮らしを送る人たちが、ひとつのところに集って、ライヴを共有する。そこに響くのは、ディレイの残響音だけじゃなく、その向こうにある何かと共鳴する想いだ。あらかじめ決められた恋人たちへの『ラッシュ』は、CD上でその"何か"を響かすことに成功している。
 「リヴァーブだけが、ダブじゃないですからね」(池永)


 

"ラッシュ"
あらかじめ決められた恋人たちへ
[mao / maocd-27]

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