COOL WISE MAN
Text by Jose Saito / Photo by Radi
COOL WISE "MAN"ってミスプリ?? 数年前からRicoやTan Tanなどから呼ばれていた名にオリジナルメンバーが2人抜けたこの変革期に紛れて変名したそうだが、そんな小さな(?)決意表明の下、彼等のサウンドは一体どのように進化したのだろうか?
「今までは"塩味"っていう感じだったんだけど、今回はBAKUちゃんやicchieさんが入ったことが良いスパイスになって、煮詰めるっていう作業が苦痛じゃなくなったっていうか。...個人的には、元々トランペッターだったicchieさんが隣で1音1音を全て聴いてるからプレッシャーは凄くて(苦笑)。でも、そういうことがあったからこそ自分のプレイも、みんなのプレイも少しずつ変わってきて」(浜田/トランペット)
「ベースはどうあるべきか、ギター、ドラムはどうあるべきか...。それこそicchieさんの家で(録った音の)波形を見て、そのブレ具合まで直そうっていうくらいアレンジを考えてみたり、突き詰めて1人1人の縦軸の揃え方を考えましたね」(篠田/ベース)
当初は単なるサポートとして参加したicchie(元Determinations)も、活動する中でしばらく眠っていたスカへの情熱にスイッチが入り、「スカを演ってると言いたいことが沢山出てくるけど、そこを俺は吐き出していいのか?」と、真正面から向き合う覚悟でDeterminationsで培った経験やPrince Busterなどジャマイカの偉人達から直接受け継いだ心意気など全てを惜しげもなく投入。本作でも数多く作曲を手がけるなど、バンドが革新した原動力の中心を担っている。また、同じく新たに加わったBaku(Bamboo Swing/ギター)は、スカを本格的に演奏するのは初めてで、当時の試行錯誤をこう回想してくれた。
「シンプルだからこそ、言葉に出しにくいところがあって。"でも、そのニュアンスじゃないんだよ"っていうところがやっぱりあって」(Baku)
「単純なようで、スカのギターって凄く奥が深いから。最初はそのニュアンスをつかんでもらうために、もの凄くキツい言いかたをしたり、ライヴ中に怒ったりとか」(篠田)
「...そういう時は(お互いに)さらけ出してっていう"ぶつかり稽古"でしたね(笑)」(Baku)
新たに迎えた2人との全身でのぶつかり合いが、全ての楽器が鳴った時のバランス感の良さの絶妙な、熟成されたサウンドを形成しているようだ。そんな今作は、既にライヴでもお馴染みのアッパーなダンス・チューン「Chase The Feel」で幕を上げ、10代の頃一緒にスカ・バンドを組んでいたというLikkle Maiとの共作「Melody Life」のポジティヴなメッセージとキュートな歌声にグッときて、西内徹の哀愁のフルートと内田直之のダブミックスが心地よいロックステディ「Sharing A Mood」でまどろんでみたり...。ジャケットに描かれた虹のように、まさしく七色に輝く極彩色な内容に仕上がっている。
「ジャマイカ人は飽きっぽいから2、3年で終わっちゃったスカだけど、世界中で愛されてて俺らも飽きないで演ってるってことは、今でも通用する"何か"があって、それを研究していけばまだまだ良い曲が作れるんじゃないかなって。15年続けてきても謙虚にスカに向き合えてるのがウチらの強みだと思うし、40歳になっても挑戦的にスカを演っていきたいですね」(篠田)
常に前を向き駆け抜ける彼等から、一瞬たりとも目が離せそうにない。
"Rundown"
Cool Wise Man
[Galactic / GLCD-0025]