COJIE meets MURO
Text by Takanori Ishikawa / Photo by Megu Suko
数え切れないほどの現場で肌身に染み込ませたその感覚をCDというパッケージの中で如何に表現するか、ミックスCDにはセレクタ−やDJの熱い想いが詰まっている。CojieとMuroという真打ち2人が作り上げたTrojan音源の中からセレクトされたオフィシャル・ミックスCD『Dig On Summer』は、まさにこの時代に聴いてもらいたいミックスCDだ。
本誌読者には説明不要の両巨頭。Mighty CrownのCojieと"King Of Diggin'"Muroが手掛けたオフィシャル・ミックスCD『Dig On Summer』。奇をてらわない堂々たる"ジャマイカ"な選曲が素晴しい"Cojie盤"と、イントロからアドレナリンがドバっと出ること必至なファンキー・レゲエ全開の"Muro盤"からなる2枚組だ。使用された音源は、ヴィンテージの宝庫、イギリスのTrojanレーベルの音源が中心。で、このTrojanなんですが、何しろ古くから商売しているレーベルなんで色々な音がそれこそ山の様にあるわけです。それだけに的が絞り難いとも言えます。が、2人がフォーカスした部分はいたって明確。
「70年代前半のレゲエやロックステディ。まさにそれこそがTrojanのイメージです」(Cojie)
「レゲエに限らず"生音"をプレイ出来る現場が減ってしまったので、今作をきっかけに現場や場所を増やして、リスナーを一人でも増やせれば。ファンキー・レゲエやロックステディは良い"入口"になるはずなので」(Muro)
その言葉の通り、"Cojie盤"は、ロックステディ、アーリー・レゲエを中心に(要所でプレイされる)ヘヴィな70'sレゲエが絶妙にミックスされている。最後はスウィートなUK音源で締めるあたりも心憎い。タフなドラム&ベースがロックするジャマイカン・ヴィンテージの魅力を引き出しつつも、シックなムードも感じさせる選曲の妙。U-Roy、Dennis Alcapone、Derrick Morganらのジングルもカッコいい。
「例えばジングル等、色々な意味でレゲエらしさを意識しました。長い間、ゆっくり、じっくり聴いてもらいたいので、気持ち良く聴けるような曲順や並べ方は強く意識しました」(Cojie)
一方、"Muro盤"は、油っこいソウル・レゲエから、いわゆるスキンヘッド・レゲエとも呼ばれるタイプのヒップなインスト、ソウル・カヴァーをキレ良く、スリリングにミックス。古い音源をミックスしていても決して懐古的にはならず、同時代性を感じさせる選曲が素晴し過ぎます。
「自分のDJのベースにもなっているヒップホップのDJイングをレゲエのミックスに落とし込みたい、とうのがまずあって。あとはカヴァーもの含めての"流れ"の説得力は意識しました。普段、ジャンルを跨ぐブリッジ的にかけている曲も多いですし」(Muro)
そうなんです、"流れ"が良いんです。だから、聞き慣れたロックステディ、レゲエもMuroの手に掛かると新鮮に響くんですよね。耳タコなはずのDennis Brown & Big Youth「Ride On My Brother」、The Upsetters「Jungle Lion」が今までとはまた違ったヴィヴィッドな輝きを伴って耳を直撃。腕の立つDJならではの醍醐味です。これはもちろん"Cojie"盤にも当てはまる事で、慣れ親しんだ曲に「ハッ」とさせられる瞬間があるはずです。
今や巷には玉石混合、数多くの"ミックスCD"と呼ばれるものが海賊盤も含め流通していますが、これぞ"本物"です。自信を持ってお薦めできる作品なので、少しでも音楽を好きな方はぜひとも聴いてみて下さい。「ああ、これが本当のセレクター、DJの仕事なんだ」と実感できる事でしょう。
"Dig On Summer〜Relax & Cool 2009"
Mixed by Muro & Cojie
[Universal / UICZ-3105/6]