AKANE
Text by Norie Okabe / Photo by Mari Morita
昨年は初のアルバムを発表し、自身の原点であるダンスホールの現場はもとより、各地のフェスティバルにも出演するなど、多くの人々に歌声を届けてきたシンガーAkane。前作発売後2度の渡ジャマイカを経て完成した2作目『Straighter』は、骨太なスピリットが投影された"これぞ!"なダンスホール仕様に仕上がった。
「去年はなぜかライヴ見てびっくりしたって言われることが多かったんですよ。ジャケット写真の印象なのかな? あの白いブラウスは私的には Stereo MarsのRub-A-Dub DVDの様に正装したつもりだったんですけど、やわらかい歌モノしか歌わない大人しいヒトと思われてたみたいで(笑)。だからゴリゴリのオケで歌ったりMCで話すのを聞いてビックリした人もいたみたいで(笑)。私としては逆にこんなAkaneなんです、すみませんって感じで(苦笑)」
やわらかいものと攻撃的なもの、両面を表現できるのがAkaneの魅力であり、昨年のファースト・アルバム『Expression』はそこが絶妙に表現された作品だった。ただし、今作はどちらかと言えば後者寄り。ハードコア路線に振り切った様がなんとも痛快である。「そっちに寄っちゃいましたね(笑)。自分の中にはもちろん繊細な部分もあるけど、今どっちを表現したかったかっていうと攻撃的な音のほうが強かったのかも。『Expression』は何年も前に作った曲が多かったんで、今までの足跡をひとつ形にできたなという感じでしたけど、今回はゼロからのスタート。だから早く今の自分を見せたいっていう感じで。歌いたいオケのイメージも最初からあったし、1曲1曲自分のやりたいことがはっきりしてましたね」
Collin "Bulby" York制作の"So So"リディムを使用したリード曲「Dancehall Head」、「聞いた瞬間、めちゃくちゃテンションあがった」というDaddy Dragonによるウエッサイ調トラックでの「M.O.V.E」(本作のハイライトかもと思うほどカッコイイ!)など黒光りするチューンがズラリ。Stephen "Di Genius" McGregorとジャマイカでオケを共作したRudebwoy Faceとのスリリングな「A1 Driver」、Masamatixxx制作の艶っぽいリディムにMicky Richとエロく絡む(笑)「Come In...」、Home Grownのアルバムに収録されている女性ラッパーComa-Chiとの「Beautiful Survivor」などコンビ曲もそれぞれ強力だ。それにしても耳を刺激するのは、前作に増してタフかつダイナミックになった主役の唱法。特に前半の"攻め"に徹したDJスタイルは際立ったものがある。
「『これ、DJのアルバムじゃん』って言う人もいたんですけど(笑)。私の中では今回の曲全部"歌い上げてる"って思っていて。DJの人があまりやらないハモもや自身のコーラスも入れてるし、やっぱり自分はシンガーなんだって言っていきたいんですよね。Mavadoも自分のことシンガーって言うじゃないですか。だから私みたいなシンガーもいていいんじゃないかなって」
「やりたかったことにひとつ近づけた」と本人も言うとおり、"迷い"が見当たらない作品。よけいなモノを装備せず、ひたすらまっすぐ。『Straighter』......正にタイトルどおりの仕上がりだ。
「今回リリックでもストレートに色んなことについて話していますが。特にブラック・ミュージックは綺麗ごとだけじゃない感情や出来事、様々なことを音に乗せて歌う音楽だと私は思うんです。自分はそこが好きでやってきたわけだから、"Straighter"という言葉がすごくハマったというか。よりまっすぐに、まっすぐに貫く人......私は今後もそうありたいです」
"Straighter"
Akane
[Riddim Zone / RZCD-46306]