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316    COLUMN    UK REPORT

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
 
Greetings Friends,
 
●Lee 'Scratch' Perryのドキュメンタリー映画『The Upsetter: The Life And Music Of Lee Scratch Perry』がミニ・シアター系の映画館で上映中(この公開状況から推測するにおそらく間もなくDVD化されるだろう)だ。Adam Bhala LoughとEthan Higbeeによって監督されたこの作品は、David Katz著の伝記『People Funny Boy』をもとに(大幅にカットされてはいるが)制作されている。映画は彼のファンなら一度は目にした事がある映像と昔の音源、そしてPerryによるコメントによって構成されており、Perryの人物像は"彼は偉大だ"という偏った見解により描かれている。現在の彼がどんな活動をしているのか、また第三者からの証言等は一切ない。1時間半のこの作品、1回観れば十分だと思う。この映画を観て改めて言える事は、Perryが本当に"クレイジー"だという事だ。彼はこの"クレイジーさ"を利用してオーディエンスを操り、それに基づいて長いキャリアを構築してきたのだ。彼がここ数年間、なぜ目立った音楽活動をしていないかについても触れていない。僕は過去幾度となく彼のクレイジーさに付き合わされてきたので、金を払ってまでこの映画を観たいとは思わない。昔、Mad Professorのスタジオで彼のスイス国籍の夫人と交わした会話の方がよっぽど面白かった。

Lee 'Scratch' Perry
 
●レゲエ・ディストリビューター(実際のところプロデュースと音楽出版も手掛けていた)としてのJetstarは以前伝えた様に消滅してしまったが、そのブランドはまだ残っている。このJetstarに関連した最新ニュースは、「30万タイトルの同社の在庫アイテムが売りに出された」と報じる僕のアドレスに直接届いたeメールの他に、Phoenix Music InternationalがJetstarの出版権を含む全財産を獲得したという事だ。Phoenixは破産したレーベルの在庫をさらっていく事で有名な会社で、Jetstarの膨大な在庫により相当な利益を上げるだろう。同社ディレクターのJohn Carnellは「我々が獲得したエキサイティングな音源や楽曲を、アーティストや作詞・作曲者の皆様と共に最大限に活用したい」と発言している。このコメントがどの様に解釈をするかは立場によって違うだろう。かつてJetstarの実権はCarl Palmer一人によって握られていた。レゲエ業界の中でも同社のポジションは特別なものだった。この様なスタイルのビジネスは、Jetstarが会社としての機能を失ったと同時に消滅してしまったのだ。PhoenixはかつてのJetstarアーティストに最小限の報酬しか払わないだろうし、Jetstarのカタログ音源はコンビニやガソリン・スタンドの売店で売られる様なチープなものとして再利用されるだろう。僕のこの悲観的な予想が当たらないといいのだが。
 
●今年はIsland Recordsの創立50周年だけあって、それに関する様々な音楽界の動きがLondonでは起こっている。長い間画面で観る事のなかったGrace Jonesが、新譜の宣伝のためにありとあらゆるTVトーク番組に出演している事もその一つだ。それ以外で僕が最も驚いたのは、Aswadのコア・メンバーの再結成だ。Drummie Zeb、Tony Gad、そしてリード・ヴォーカル&ギタリストのBrinsley Fordeは90年に"友好的"にグループから離れたと今になってマスコミが報道しているが、僕の当時の記憶は全く正反対だ。DrummieとBrinsleyは犬猿の仲で、彼らは二度と一緒に組まないだろうと言われていたのだ。でも、これがショウビズ(芸能界)というものだろう。彼らが幾つかの名曲を産み出した事実は変わらないのだから。
 

Buju Banton
 
●Buju Bantonの新作『Reggae Got Soul』の大規模なリリース記念パーティがKingstonのWest Indies大学で開催された。Jamaica Gleaner紙の記事は、Bujuはそこで「Bob Marleyは最も偉大なレゲエ・ミュージシャンではない。未だにMarleyというイコンに頼っているレゲエ界の風潮が、レゲエ自体の成長を止めている。我々はBob Marleyがレゲエを象徴しているという概念をそろそろ捨てなければならない」と報じている。昨今のMarleyイメージの乱用や再発売ものの乱発等から判断するに、Bujuの意見にも一理あると思う。だが、物事はそんなに単純なものではない。Marleyは普遍的メッセージを彼独自のリズムとメロディで歌った。今のレゲエ界では(勿論、幾つかの例外はある)、リズムはリサイクルされたものばかり、リリックの内容は限定的であり、リスクを取るアーティストやプロデューサーは非常に少ない。彼らは、なぜMarleyがあれ程の成功を収めたのか、その本質を理解していないのだと思う。Islandレーベルの潤沢な資金がMarley人気に貢献しているのは事実だが、彼の死後、ジャマイカの音楽業界は方向性を見失ってしまった気がする。ジャマイカのレゲエは国際的な視点を失い、内向的に音楽を発信し続けている。プロデュースされる曲も中身がないものが多く、Marleyの亡き後、レゲエは負のスパイラルにはまってしまっている。
 
BujuのデビューはMarleyが活躍していた頃から10年程経っている。Buju自身もレゲエの成長と受け入れ具合の低さを痛感している一人だろう。デビュー当時の彼は、まだ若かった事もありマネージャーやプロデューサーのいいなりでしかなかったと思う。90年代の中頃のBujuのスタイルはどう考えても"やらされている"としか思えない。「Boom Bye Bye」で国際的なキャリアをスタートしたのも大きな過ちだった。所謂ポストMarleyとして、Marleyそっくりに歌った『Till Shiloh』もBujuが望んだものでは決してなかったはずだ。そして、彼は自分独自のスタイルを取り戻す事こそがファンの信頼を取り戻す事だと理解したのだと思う。プロデューサーがビジネスを支配しているこの業界において、一体どれ位のアーティストが誤った道を進んでしまったのだろうか? 果たしてアーティストのみに今のレゲエの惨状について批難を浴びせていいものだろうか? 確かに、若いアーティストの出現により業界はいくらか活性化したかもしれない。しかし、モダン・ルーツ・ミュージックと言われるものが生れ、かつてのレゲエの様に質を重視する音楽作りが復活してきたとはいえ、何人のアーティストを真に"オリジナル"(過去の音楽のリサイクルではない)と呼ぶ事ができるのだろうか? 音楽のプロデュースの仕方やその流通方法は過去5年間で劇的に変わった。レゲエはこの変化を受け入れるのに一番時間がかかった音楽ジャンルだろう。Marleyはキャリア絶頂期に死去した。死んでしまったヒーローを使って商売する事は、存命のヒーローを売る事よりも簡単だ。はたして土の中に眠るBobは現在の彼の音楽やイメージの扱われ方を嬉しく思っているのだろうか。僕はBujuの事が大好きであるが、彼は物事をそんな単純に考えてしまってはいけないと思う。
 
 Till Next Time, Take Care............
(訳/Masaaki Otsuka)

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