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THE MAZE

"Drop Some Money Pon It"
Text by Reiko NAGASE SMITH
　
Money、モニモニモニー。結局世の中、金のないヤツは負け、なのさ。
If mi nuh rich this year, next year naw pass cause mi born as a hustler♪ もし、今年リッチになれなければ、来年なんてこないと思え、オレはハスラーとして生まれたんだから。
　
こんなハスラー宣言なチューンをはじめ、ダンスホール・アーティストによる最近のモニー・チューンの殺到はジャマイカ社会を物語っていて、否定し得ないものがある。
　
ダンスホールのひとつのカルチャーともいえるリプレイ。セレクターがかけたチューンを一度止めてもう一度プレイし、現場をさらに盛り上げるスキルのこと、Wheel 'n' come again。これが、現金取引されている、という。題して、Money Pull Up（モニー・プルアップ）。これも、今に始まったことでもないし、大げさなことではないのかも。セレクターへのチップ、といえるかもしれない。なんせその場で盛り上がらない様なチューンにはお金は使われないだろうし。
　　Money Pull Upは密室でおこなわれることでもなく、いたってオープン。プレイする、金見せる、Pull Upする、金おとす、Pull Upする。セレクターはそのお金を影でポケットに入れるなんて邪推なことはせずに（いや、する人もいるだろうが）、お金を披露しちゃう。まわりにおごっちゃう。女の子たちにドリンク買っちゃう。Money Pull Upは戦略でもあるし、エンターテイメントのひとつでもあり、あっけらかん。かえってとっても健康的。
　
金額的にはナニー（500ドル札）から、USドルだったりイギリスポンドだったり、上限なし。Money Pull Upはホットなモニー・チューンにこそ使われる。

　
モニー・チューンと言えばのDJフリッパ・マフィア、マイアミでのステージでボウンティをリリックでディス。内容は、ボウンティが長年かけて建設中で、いまだ未完成な家のことで、「奴の母ちゃんはいまもウォーターハウス（キングストンのゲットー地区地名）から離れられない」などと言ってボウンティの怒りを買い、しばらく静寂モードだったアライアンスとポートモア・エンパイアに、不穏な空気が流れ始めている。

　
モニー・チューンの陰で、かたやゴスペル・ブームというのがまた面白い。引退どころか「I Am Blessed」のウルトラ・大ボスヒットのヴェガス。'09年、ササ・ステップでジャマイカ島揺れる。
　
コンシャス・チューンも健在。人気沸騰Konshensのコンシャス・チューン、「This Means Money」のように、手のひらにかゆみをおぼえて掻いてると、グランマ（おばあちゃん）が「それってお金が入るってことよ」、これ、ジャマイカのポピュラーな言い伝え。信憑性は、どうでしょう。そんな棚からぼた餅を期待して、仕事を辞めて、ロトにお金つぎ込んで、お金が降ってくることを期待したけれどもお金が入るどころかかゆみが止まらない。お医者に行ったらかゆみ止めの薬を処方されて、薬代がかかった、というオチ。
　
このチューンには、「Hard work is the key to success」（働くことが成功の鍵）というメッセージがしっかり刻み込まれているが、同コンシェンスの代表チューン、「Winner」は、I'm in a money making mood♪（俺は今、お金をつくる気分さ）とハングリさを露わににし、さらに「Straight Forward」、タイトルは「直進前進」、コンシャスな雰囲気だけど内容は......Tonite I wanna make you my baby madda (wooooh). Tonite mi just wah dagga♪（今夜こそ君をボクのベイビーマザーにしちゃうよー。ダガるよー）。

　
それがリアリティ、レゲエの真髄。矛盾した社会を映し出す鏡。きれいどころばかりじゃなく、きたないどころばかりじゃない、それがヒューマン・ビーングじゃないの、だからジャーを崇めるのさ。ラスタファーライ。
　
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