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HIBIKILLA
　
Interview by Norie Okabe / Photo by Yoshimitsu Umekawa
　

　強烈なパンチライン続出。一筋縄ではいかないHibikillaの毒＝魅力が濃縮されたサード・アルバム『Be Free』が到着した。エモーショナルな歌い回しが胸を打つ自由への闘歌「Be Free」を皮切りに、格闘家石井慧選手の入場曲「Ever Ever」、Tak-Z、ハイジ、Corn Head、King-K、心Gとのコンビ曲など独特の名演が光る。
　
●大人の鑑賞に堪えるアダルトな内容を目指していたとか。
Hibikilla（以下H）： それもポイントのひとつですが、ここ最近の日本語レゲエはおもしろくない曲が非常に多い、そこをドーンっと言っておきたかったんですね。おもしろくない理由を考えたんですけど、例えばポジティヴ・チューンというものはユートピアを歌うことだと思っちゃっている。その誤解。だからそれは違うぞって意味でデストピアの中の希望を歌いたいと思ったわけです、ワタクシは。それで単純に頑張れって歌う曲は入れてないんですね。
　
●Hibikillaさんには掴みどころのない"脅威"を感じるんですよ。
H：絡みにくい、いじりにくい、噛みつかれそう。スレッドですよ、まさに。
　
●そんな中、今回はどこか肩の力が抜けている印象があって。
H：例えば"韻を踏まなきゃDJじゃない"とか、そういう肩肘の張り方がダサく思えてきてまして。制作中、昔の曲をよく聞いてたんですけど、DJ初のヒット曲といわれるU-Royの「Wear You To The Ball」もParagonsが歌う甘いロックステディに味付けとしてトースティングを乗せているわけで。メッセージを歌う人だけど、同時に"イェイ！"だけで成立させちゃう凄さもある。そういう意味で今回はラヴ・ソングを入れてノリを良くしたり、"イェイ！"でいいじゃんというような適当さを取りこんでみたというか。片面でリリックに対するこだわりを保ちつつ。そのバランス感覚は今までにない境地かな、と。Tak-Zとの曲なんて、それこそトークオーヴァー。そういう相手の活かし方をできた気がするし。
　
●なるほど。今回のコンビネーション曲はどれも相手が立ってる感じがしていたんです。
H：相手を輝かせようという書き方が多くなったかな。人間性という意味では絡み辛いといわれるワタクシですが、コンビネーション曲に関しては逆に相手が光ってませんか？フォー！という感じですかね。
　
●「Be Free」からの冒頭3曲は特に新鮮で。今までにないタイプの"聞かせる"曲というか。
H：今回は得意ゾーンをあえて避けたんですね。得意というのはボーナス・トラックの3曲（「おまえはもう死んでいる」など）とかライヴで必ず盛り上がるような曲。そこで勝負しない作品にしよう、と。
　
●ファルセットを使ってみたり、声の七変化具合もレヴェル・アップしてますね。
H：「Slow Wine」とかかなり気持ち悪いですからね。
　
●R＆Bシンガーかと思いましたよ（笑）。
H：ギリギリ感を楽しみたいところはありますね。そういう遊びで聞かせる曲もあり、リリックで聞かせる曲もあり。今の政治がだめだってことを筆頭に言いたいことは山ほどあったけど説教臭いのはよくないんで、そこは平衡感覚で頑張りましたってところですね。変につっぱったり、かっこつける気もさらさらなかったし。
　
●前に本誌311号で語っていた "革命"については？
H：革命運動は......（考えて）非常に難しい。一気にひっくり返すのは無理ってことになったので徐々に同志を増やしていこうという感じですかね。でもそれは内部に取り込まれてるという意味ではないですよ。自分のポジション作りです。柔道でいうと奥襟をつかむ状態、相撲でいうと前褌をとる状態。投げ技じゃなく、いい組み手になるのを意識して頑張ってる次第です、はい。