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PHOTOGRAPHIC CREATIVITY
石田昌隆
 
Interview by Hiroshi Egaitsu
 

本誌でもお馴染みのカメラマン、仁礼博が東京スカパラダイスオーケストラの21世紀におけるライヴの現場をとらえた写真集『スカパラ--21世紀』を、そして石田昌隆が86年から04年までの間に世界中の聴き継がれるべきアーティスト達を撮影したポートレイトとそのキャプションからなる写真集『オルタナティヴ・ミュージック』を完成させた。各氏の強烈な個性と並々ならぬ想いが存分に表現されたこの2冊、本誌読者ならば共に必携です。
  
 写真家であり、音楽についての文章を書く石田昌隆氏の新しい写真集『オルタナティヴ・ミュージック』は"キャプション"という単語の下、各々の写真について膨大な文章がついており、それらを読むと、"音楽ライター"なる肩書きを持っている人間は(僕も含めて)自己の音楽へのパッション、行動力、もしくは観察力の欠如に思い至る。目的、特徴、美学的基準も何もかも異なるが、文章を必要としているイメージという点で、ふとリチャード・ミズラックの写真集『ブラヴォー20』を思い出したりして。石田氏には迷惑かも知れないが。つまり、音楽ファンには久しぶりに出た日本語による(他の言語の本はきちんとチェックなし!)手にとる価値のある本。
 
「30年経ってレゲエとパンク以降の見取り図みたいなものを作るのがちょうど今、頃合いかな」と石田氏は語り始め「(アメリカの音楽雑誌)『SPIN』も使っている"オルタナティヴ・ミュージック"っていう言葉自体が覚え易い割には統一感のされてない言葉で、全体を表す言葉ではこれしか思いつかなかったんだけど」と付け加える。120人(グループ)を1,000回以上の撮影セッションから選び抜いたのが本書。「超激戦で......好きな人全員入れられるかっていうと、全然そんなことなくて」と言う石田氏は音楽のことを「高校までは、音楽っていうのは女にもてるためのアクセサリーだと思ってた」と回想して断言したのには僕も驚いた 。そんな人、初めて会った(爆笑)。そのうえ、「ボブ・ディランのコンサートの初来日は行ったんだけど、今ひとつぱっとしなくて、ボブ・マーリーとジミー・クリフの来日コンサートでこれだ!と思った」というエピソードが続く。「当時は、レゲエ、リンガラ、ブルーズとかがかっこいい、と思ってたから、黒人がかっこいい音楽をやる人で、白人はだめなんだな、と思い込んじゃってたわけ」という石田氏が仕事で予備知識まったくなしで撮影に行ったエコー&ザ・バニーメンでロックにも目覚めるというのも腑におちるし、彼らの文章はこの本の中でも印象に残るひとつ。「好きなミュージシャンを撮らせてもらうための業界での雑巾がけだと思って行ったんだけど」とその経験をこれまた荒く断定、ぎゃははは、ひどいな〜。けど、正直で面白いです。しかもボブ・ディランとは違って「ずしんとくるものがあった」氏は、本書で"音楽の細分化"という言葉に異を唱える。そうではなく、世界中の様々な音楽がシナプスのように繋がっている、それが「パンクとレゲエ以降どんどん露になってきた」という氏のアイデアは経験に裏付けされた説得力がある。そして、本書を手にとってもらおうと、 嘉手苅林昌とチャック・ブラウンが何気なく重なって見える。
 
「本物のテクノはデトロイトで、YMOのテクノはほとんどの人はインチキだと90年代半ばには思ってたわけ。なんでそうなっていたかと思うと、(渋谷に)NYLON 100%っていうお店があったじゃない? 知ってる? あれが諸悪の根源だった気がするわけ」......諸悪の根源かどうかは各々意見があるだろうが、メディアからの操作的言質、への抵抗、という主張ならば理解出来ます、はい。
 
と、この記事を今書いていても思うのは、現地でしか体験出来ない音楽体験を得るために旅をし、録音ミュージックならば何回も何回もスピーカーの前で聞き返す石田氏の当たり前ながら、誠実な行動。ちょっとした理論まがいの思いつきは誰にでも書ける。石田氏は違う。写真を「撮る」。音楽を「聴く」。そして「書く」。僕も音楽ライター廃業だ、こりゃ。
 

"オルタナティヴ・ミュージック
〜Musicians In The Same Era"

写真・文/石田昌隆
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