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THE MAZE

PHOTOGRAPHIC CREATIVITY
仁礼 博
　
Interview by Toshiaki Ohba
　

本誌でもお馴染みのカメラマン、仁礼博が東京スカパラダイスオーケストラの21世紀におけるライヴの現場をとらえた写真集『スカパラ--21世紀』を、そして石田昌隆が86年から04年までの間に世界中の聴き継がれるべきアーティスト達を撮影したポートレイトとそのキャプションからなる写真集『オルタナティヴ・ミュージック』を完成させた。各氏の強烈な個性と並々ならぬ想いが存分に表現されたこの2冊、本誌読者ならば共に必携です。
　　
●東京スカパラダイスオーケストラ（以下スカパラ）との関係は、確かまず始めにクリーンヘッド・ギムラさん（95年逝去）との出会いがあったからなんですよね？
仁礼博（以下N）：そうですね。もう80年代の半ばも過ぎた頃ですね。レゲエが好きで、既にオーバーヒートのECさんにマイティ・ダイヤモンズやミュート・ビートを撮らせて欲しいって頼んで撮ったりしていたから。だからギムラと知り合って暫くしてから「レゲエ撮ってるなら俺もバンド作ったから撮りにおいでよ」って言われてライヴを撮りに行ったんですよ。確かインクスティック芝浦（ファクトリー）だったと思います。その時はまだメンバーも流動的で、三上博史の兄ちゃんもメンバーにいたりして...。
　
●結局、それから20年以上撮り続けてしまったという。
N：こういうのってやっぱり縁だと思うんですよ。もちろんメンバーや事務所の協力が大きかったとは思いますけど、何と言っても色々なことが起こりつつもスカパラがずっと魅力的で、そして走り続けて来たからこそでしょうね。
　
●そうした彼らの歴史を綴る写真集ではなく、"21世紀"と括った訳は何でしょう？
N：今回は歴史的なことより、ライヴやそこから生まれるエネルギーを表現したくて作ったんですね。もちろんギムラのいた頃がスカパラの「第一期黄金時代」だとは思うんですけど、21世紀になってからのスカパラを俺は「第二期黄金時代」って言ってるんです。ちょうどその頃からヨーロッパやアメリカできっちりとツアーをやり始めてて。で、どこ行ってもみんな踊り狂っているんです。俺はそのエネルギーの交換の現場をずっと見てきた訳だし、しかもそれを撮影してきましたから。
　
●確かに"スカパラの写真集"ではなくて、スカパラを媒介とした"仁礼博によるライヴ写真集"といった趣きも感じられます。
N：もちろんこのバンドでなければこんな凄いことにはならないんだけど、さっきも言ったようにその先にあるライヴの場で発せられるエネルギーの交換を写真で見せたかったんです。撮影している場所的にも客席とステージの間にいることが多いから、俺の立ち位置ってある意味客側でもあるし、演者側でもあるわけじゃないですか？　だからどっちの視点にもなれるってことですよね。それが写真に出ているとは思いますけど。
　
●とにかく今回はライヴの場における一瞬にこだわったということですね。
N：ライヴ写真ってスタジオで作り込んだ写真と比べると結構軽く見られがちなんですよ。でも俺は、ミュージシャンはライヴをやっている時が一番かっこいいと思っているんですよ。だからライヴ写真を認めてもらいたいって想いが強いんだと思います。あと、とにかくこのバンドのライヴを一度観て欲しいという気持ちも強いですね。
　
●内容もアツいですけど、ページ数も随分とアツいですね。
N：いま50歳だから500ページにしたんですけど、それを一枚一枚じっくり見たら疲れちゃうだろうから、リズムで見て欲しいんですね。これをまとめてくれたデザイナーに渡したメモは「ライヴ、ライヴ、食う、呑む／ライヴ、ライヴ、呑む、呑む／ライヴ、ライヴ、時々笑い」みたいな（笑）。つまりスカのリズムでページがめくれるようにお願いしました。でも結局、こうして出来上がった本を手にして正直な気持ちとしては、20年以上も写真を撮らせてくれたスカパラに一番喜んで欲しいし、感謝を捧げたいです。
　

"スカパラ --21世紀--"
写真／仁礼 博
[Blues Interactions]