SUNSHINE LOVE STEEL ORCHESTRA
Text by コンピューマ / Photo by Kazumi Takagi
日本を代表するスティールパンの名手3人による日本人ならではの新たなパンの音楽物語の記念碑的作品がここに誕生。南国の太陽のきらめきだけでない、巡る季節の中で、心の情景に写り込む光の倍音ハーモニーのクールネスと愛情とエキゾチズムを感じろ!
カリブ海最南端の南の島国トリニダード・トバゴ共和国で、もともとはドラムの使用を禁止された黒人達が、身近にあった廃棄するドラム缶をもとに音を鳴らしはじめたことが誕生するきっかけとなったスティールパン(スティールドラム)。その音色は打楽器ながら、他ではけっして体験出来ない、まるで宇宙や天国(!?)と共鳴しているかのような独特の倍音の響きが美しく優しい素敵な音色で、その魅力にとりつかれた音楽家もヴァン・ダイク・パークスにはじまり、ここ日本でも細野晴臣、ヤン富田がソロ作で、アストロエイジ・スティール・オーケストラ(以降A.S.L.)でその魅力を余すところなく伝え、その可能性をおし広げた。そして、その後はリトル・テンポの活躍もあり、さらなる広がりを見せて現在では市民権を得る程の人気ぶりとなり、教室からワークショップと、いたるところでスティールパンを取り入れた多彩な音楽を耳にすることができるようになってきている。
現地のカーニバルでの大人数のオーケストラによる、パートごとにわかれたパノラマ的な激しいパーカッション的ハーモニーのお祭り音楽としてのパンも圧巻で最高なのだが、各地に広がっていったパンが、それぞれの国や生活環境、背景で多様に変化し進化し続けるのも当然である。そんな中、ここ日本でのスティールパンの音楽の新たなターニングポイントになりそうな注目の作品が登場したのだ。
ドラム缶界の若頭であるリトル・テンポのリーダー土生"Tico"剛、上記A.S.L.のメンバー、バッファロー・ドーターのメンバーで、ベース&ムーグ奏者としても有名な大野由美子と、やはりA.S.L&リトル・テンポのメンバーで、日本を代表する名セッション・ギタリスト田村玄一という、おなじみの日本を代表する強者スティールパンの名手3人がサンシャイン・ラヴ・スティール・オーケストラを結成し、このたびデビュー・アルバム『Sunrise』を完成させた。
雪の光、水の光、太陽の光、いろいろな国で出会う光、小さな光、そんな光の源である夜明けの光からとられたという『Sunrise』というアルバム・タイトル。巡る季節の中で、自然(宇宙)と一体化したスティールパンの光の響きの倍音ハーモニーと余韻が、聞き手の心の情景に広がり、お散歩にピクニック、お料理タイムなど家族のBGMから、はたまた室内楽ミニマルでアンビエントな空間、ボサノヴァでジャズでサマー・オブ・ラブ、そしてアフリカ・キリマンジャロ山までを探検させてくれる、エレガントでエキゾチックで桃源郷にも通じるかのようなパンのオリジナリティあふれる新たな音楽物語を作り出してくれているのだ。そしてなにより、ジャケットでの手作りによる切り絵の素朴な美しさ可愛らしさや、アルバムの音の良さから伝わる、人肌の暖かさと愛に満ちた作品だということにも気づかされるはずだ。彼らの次の物語はもう始まっているのだ。
"Sunrise"
Sunshine Love Steel Orchestra
[Geneon Universal / GNCL-1189]
【Live Infomation】
「Sunshine Love Steel Orchestra
1st Album "Sunrise" 発売記念コンサート」
●日時:7/11(土)
[Open]19:00[Start]20:00
●会場:東京 六本木 Super Deluxe
http://www.super-deluxe.com/2009/7/11/sunrise-release/
03-5412-0515