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Review by TAKASHI FUTATSUGI
 
 
MIX CD
 
1. Eminem / Relapse (Interscope / Universal)
シェイディ・ファミリー集結盤『Eminem Presents : The Re-Up』('06)以来?"ラップする白い悪魔"が還ってきた。Dr.ドレー、50セントとの「Crack A Bottle」、十八番のパロディ調PVも話題の「We Made You」を含む、この約4年半ぶりとなる新作は、「再発/逆戻り」というタイトル通り、様々な錠剤で作られたモザイク・ジャケそのもののキケンな(?)内容。プロデュースは本人の1曲以外の全てをドレー(&誰か)が担当、という並々ならぬ意欲作(『Detox』も遂に今年中に公開されるとか)。シニカルな毒毒ワールドは健在で、"アッシャー・ロス? 誰それ?"というくらいの気概も嬉しい限り。
 
ALBUM 
 
2. Rick Ross / Deeper Than Rap (Def Jam)
マイアミでの銃の不法所持、違法薬物所持での逮捕、フロリダ刑務所の看守だった事実のリーク、暴行事件の被害者からの訴訟...と最近はトラブル続きだった彼のゴールド・ディスク獲得の前2作に続く自身の城=マイバッハ・ミュージック・グループからの新作。生への感謝を表した本作は、極上のサンプリング・メソッドを持つJ.U.S.T.I.C.Eリーグを中心にインクレディブルズ、ランナーズらが脇を固めたドラマティクなサウンドを基調とするもので、ジョン・レジェンド、Ne-Yo、ザ・ドリーム、T・ペイン、カニエ、リル・ウェイン、Nas、恋人フォクシー・ブラウンらとの絡みも活きた傑作。
 
3. UGK / UGK 4 Life (Jive / BMG)
" It's still UGK for life...Long live Pimp C"というバン・Bのコメントも胸に突き刺さるテキサスのアンダーグラウンド・キングスの正真正銘のラスト作。その17年に渡る濃厚な歴史を締めくくりに相応しい内容の本作には、スヌープ、トゥー・ショート、E-40、8ボール&MJG、エイコン、ロン・アイズレーら大物も多数参加しているが、追悼作的な湿っぽさではなく「生きている声」を大切に、そのピンプ・Cの現役感、バン・Bとのスペシャルなタッグワークを基調とする"まっとうな"新作に仕上げられており、全てに愛を感じる。これは前作と並ぶ傑作かも? 日本盤ボーナスに用意されたDJ Princes Cutリミックスに漂う元版とは方向性の少し異なる哀愁感も堪らない。
 
4. DJ Quik & Kurupt / BlaQKout (Ultra-Vybe)
ドクトクのハイなファンキー・フロウと緻密なサウンド・プロダクションで知られる西の重要人物=DJクイックと、ドッグ・パウンドの片割れで華のあるスキルフルなラップが武器のコラプトの新ユニット=BlaQKoutの初アルバムが、クイックのレーベル=マッド・サイエンスより登場。これが女傑YoYoをフィーチュアした「Whatcha Wan Do」や、こちらも懐かしい名前=パフ・ジョンソンとの「Fuck Yall」の他、エレクトロに、ルーツ・レゲエに、と旬の音の追求と実験性が見え隠れする抜群の出来栄え! この2人なら悪い訳ない...という想像すら完全に凌駕するウェストコースト・ファンク"だけじゃない"彼らの新展開に乗っかっておく必要大アリ、かと。
 
5. Scratch / Loss 4 Wordz (Gold Dust / Ultra-Vybe)
ザ・ルーツに在籍した事もあるビートボクサー、口スクラッチャーの実に6年ぶりの2nd。全てのトラックを本人が制作(ビートは全てオーラル)した本作には、カニエ、コンシークエンス、ミュージック・ソウルチャイルド、タリブ・クウェリ、M.O.P.、エステル、テリー・ウォーカー、ダニエル・ベディングフィールド、デイモン・アルバーンに、ドイツのジェントルマン他、リードを取る歌い手の面子も豪華で、オーガニックなフィリー・サウンドのみならず、アーサー・ベイカーとのエレクトロ・ダンス・チューンや今風R&B、ブーンバップまでヴァラエティ豊か。完全に芸術の域にある口芸の溶け込み具合も凄い。
 
6. Agassi from 土俵Orizin / Agassi (土俵 / Ultra-Vybe)
『Grain Of Image』等で、全国規模で有名な関西のアンダーグラウンド・シーンを代表する共同体であり、多くの信者を有する土俵オリジンから、DJ/プロデューサーの一人であるAgassiのリーダー作が到着。D3Rのメンバーでもある彼の、サンプリングを基調としたドープなヒップホップながら、常に何かからはみ出す確かな音像を作り出す世界はこのアルバムでも貫かれており、2曲でマイクを握る土俵オリジンのカリスマにして盟友の Indenとのコンビネーションも言うまでもなく素晴らしい。そのクリエイションありきの精神性や社会とのストラグルなどが渦巻く本作にあるリリシズムは、もはやサントラの域にある。まずは1曲目を聴いて欲しい。
 
7. 瘋癲 Fu-Ten / Free (Travel Music)
約3年の本作は、タイトル通り"自由に取り組んだ"会心作!! ジャジー、ヒップホップ・バンド云々といった過去のイメージとの闘いから、"やりたい事やったらええやん!"と開き直った結果、自分達の世界を広げる事が出来たのがこの作品。ブラジリアン・テイストのタイトル曲から、付き合いの濃さが現れた10-Feet、Takumaを迎えた「What Morals?」、同様のガッチリ感のあるMellow YellowのK.I.NとRip SlymeのPesとの「Steppin' Out」等、振り幅もあり楽しい。第4のメンバーGuroのアレンジ、ギターも効いていて、4人の今の心技体のコンディションの良さが手に取る様に伝わってくる。オススメ!!
 
8. Seeda / Seeda (KSR)
MoNDoH、ham-R、Shizoo、Oki、Norikiyo、Besとのマイクリレー曲公開から待つこと僅かで届けられた新作。最高の相性を見せるBach Logicとのセッションを中心にOhld 、Hammer The Hustler、Rattpakk 、D.Focis、Sky Beatz、 Dovuaskiという国内外の俊英のビートを散りばめた本作は、随所にアッパーな要素を配しつつトータルでリリカルに聴かせる「スキル(という武器)を信じる」彼の表現の賜物。その才能は実際"際限ない"。先のリレーの面子以外にも4WD、サイプレス上野、Essencial、Sticky、TYC 、JAY'EDといったゲストが参加。
 
9. KGE The Shadowmen / Newgigante (Bang Staystoned)
Cheeba(千葉)のA.Gこと、スピットで影が巨大化するラップ魔人、ミックステープ・ヒーローことKGEの1stアルバム。これ迄にもその姿は44 BloxやMuro、Daboの作品で確認する事が出来ただけに、本作を待ち望んでいた人も多いはず。実際、直球勝負の彼のライヴはしっかり心に残るものだが、その良さが本作にはストレートに投影されている。Hassy The Wanted、XXXLことMuro、S.U.I、Jashwon他、トラックメイカー達の"KGE用のビート"の強度もさることながら、アルバムの構成/コンセプトも面白く、ソロとして理想の展開をモノにしている。
 
10. Stock / Underground (Theotokos)
「UMB」準優勝のY.A.Sを擁するZion Soldierのブレインとして知られる伊豆の鬼才Stockのデビュー作。行間を読み取る様なサンプリング・センスが溢れるエモーショナルなトラック群、そしてカオスの度を増していく現代社会や一部の宗教等の抱える欺瞞をシニカルにグサリと刺すリリック。その世界観はどこまでもプログレッシヴ。何者にも媚びず己を磨く地下創造の精神そのもの。それについては多くは語るまい。本誌読者こそ入手して頂きたい逸品。
 
11. まむしMC'S / まむしが通る (Mack Daddy / File)
熊本初のHip Hop Crew=Buddy出身のまむしMC's久々の新作。河原町Hi Fly to Music LABを拠点に、Daddy K、125 the HiFLyn'、MC Reigeの個性の異なるプラグ×3のマイクスリンガーと、『Kyusyu Block Buster』でも知られる(オリジナル)DJ Georgeとの黄金の編成で、タッチワーク、合体技も冴えたメンタル・スタミナの強さが見えるマイクリレーと、核となる音楽センスが光るファンキーかつドープなトラックとの相性も言うまでもなく"堅い"。名曲「Super Star」、G.K.Maryan、405、草冠とのジョイント他、熱い曲ばかり!
   
12. stillichimiya / 天照一宮 (Mary Joy)
甲斐の国の桃の里=山梨県は一宮町を代表するstill-ichimiya(田我流を含む4人組)の5曲入新作。"見渡すStreetは畑/空気が澄んでて伸びない鼻毛"というパンチラインからも明らかな牧歌的風景をバックに、甲州弁を交えて巨大な神輿を担ぐ彼らのイチミヤ音頭(40%哀愁)。「祭の前夜祭から祭が終って湯につかるまで」の流れを表現したこの5曲は"えれえ"密度!! プロデューサーのYoung-GとBig Benによる和の音も変わりゆく風景に異を唱え「残していきたいね」と訴える郷土愛に胸を打たれる。

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