WELCOME TO THE DANGER ZONE
JR.DEE
Interview by Nobuhiko Mabuchi / Photo by Naoki Sugiura
サーフィンを通じてレゲエを知り、そのレベルな音楽性をウネる日本語で表現し、現場ではフリースタイルという言葉のマシンガンを連射してきた"濱のラバダブ・マスター"ことJr.Dee。彼の最新作は、そのスペシャリストたる所以が存分に楽しめる仕上がりだ。。
●実は今年で活動20周年になるんですね。
Jr.Dee(以下J):20周年ってよりも、20年目。20年やってきた事実があるだけで、別に意識してないね。まだまだ始まったばかりだし。
●ソロ名義のアルバムとしては4枚目となる今作。いつ頃から制作を?
J:一昨年の暮れくらいかな。アルバムを作ろうと思って曲を作ったんじゃなくて、曲がたまったからアルバムになった感じだよね。
●今回はファウンデーションのリメイク・トラックも目立ちますね。
J:そうだね。「危険地帯」「WAR」「ONEWAY」、あとは「うちこめ」とか。リメイクといっても、上モノとかベースラインは変えてる。そういったアプローチもレゲエの面白さだと思ってるから。だって俺が20年以上前に聴いてた"Sleng Teng"にしても、5年周期くらいでリメイクされてるでしょ。他の音楽にはない、レゲエの楽しいところだよね。
●トラックは実際どうように作っていったんですか?
J:俺がアイデアを出して、トラック・メイカーのところへ行ってマンツーマンで作るんだけど、だいたい1曲3時間くらいだよ。集中して作るからね。で、足りない部分を後から加えたり、逆に抜いたりして。どのトラック・メイカーと作るときも、そんな感じだね。
●アイデアはどのように降りてくるんですか?
J:基本的に歌のことを常に考えているから、いろんなアイデアが頭の中にまわってて、それをピックしていく感じ。いつも考えてるから、まだまだアイデアは尽きないね。
●今回はジャマイカでもミックス・ダウンしてきたんですよね?
J:アルバムの半分くらいはジャマイカだね。
●ジャマイカのミキシング・エンジニアでは、Shane Brown(@Big Yard Studio)が4曲、Colin"Bulby"York(@Mixing Lab)が2曲、Bobby"Digital"Dixon(@Digital-B Studio)が1曲参加しています。
J:最新のダンスホールはShane、90年代っぽいオケはBulbyっていうように、トラックによって振り分けた。Bobbyには(Home Grownの)Tanco、Yukky、Mama-Rに参加してもらった「ONEWAY」をやってもらったんだけど、やっぱミディアムで生ドラムが入ってるオケをやらせるとピカイチだよ。みんなバッチリだったね。あいつらは毎日作業してるから、何の迷いもないしスムーズで早い。プロフェッショナルなうえに柔軟性があるから、俺たちが思いつかないような音を作るんだよ。あとジャマイカのミックスで一番驚くのは、凄ぇデカい音をならすことだね。8畳くらいの部屋で46cmウーハーを全開でならすからさ。あれはクラうよ。
●ちなみに「ONEWAY」を打ち込みではなく生音で構成したのは、そのリリックの内容からですか?
J:そうだね。生音にして優しく、尚且つ力強くしたかったから。人生の選択に迷いが出るときってあるじゃん? そういうときに、自分に向けて書いた曲だね。迷っててもしょうがないんだから、行くしかないってことを歌ってる。俺のアルバムには絶対に入るメッセージだね。レゲエやってる人は、みんな前向きじゃん。それが、俺がレゲエで教わったことだから、ポジティヴなメッセージを込めた曲は毎回いろんな視線から歌ってる。今回はそれを道に例えて作った感じだね。
●この独特な日本語のライミング・センスやフロウって、どう確立されていったものなんですか?
J:ディージェイをはじめて少ししてから、早口だけの一本調子じゃなくて、メロディにのせる歌い方を取り入れたんだよね。その頃は、まだ珍しいスタイルだったから。日本語をレゲエのリズムにのせるときは、パトワをのせているような言葉のウネリを意識してる。そこは今もこだわってるところだね。
●オープニングに続く「危険地帯」はタフなハードコア・チューンで、これもまたJr.Deeスタイルのひとつですよね。
J:俺たちの"遊び場"を"危険地帯"と呼んで歌にした曲で、要はダンスホールのことをさしてるんだけどね。「ヤバいところへようこそ」って感じで。ダンスホールにはレゲエのメッセージが溢れてるから、そこで自分の生きる道を見つけてくれって俺の想いを込めた曲だね。
●ダンスホールの楽しみ方を歌ったパーティ・チューン「PARTY PARTY PARTY」にはアルバム・タイトルの『ラバダブマスター式』ってリリックも出てきますが、アルバム全体を通して現場感っていうのもポイントになってますよね。
J:そうだね。現場感のある曲がけっこうたまってたし、アルバムを作ってる途中からタイトルは『ラバダブマスター式』でいこうって決めてた。
●昨年のインタヴューでは「パート2スタイルとかラバダブの面白さを伝えられるようなライヴをしていく」なんて発言もありましたが、そういった考えも少なからず影響してそうですね。
J:こんな長いスパンでアルバムを作るのは初めてなんだけど、その間ずっと頭のどこかに想いとしてあったのは確か。だから結果として現場感のある曲が多くなったわけだし。今回のアルバムは前作とか前々作とくらべて明らかに違うと思うんだよ。もう一度タフなレゲエを俺がやるべきだって、強い想いがある。それが俺の音楽だと思う。
●20年のキャリアの上に立つ、スキルとアイデアとメッセージが込められた作品ですよね。
J:そうじゃないと自分のCDを毎回買ってくれる人も飽きちゃうし、進歩がないとつまらないからさ。使う言葉ひとつにしても、すべての面で年々ステップ・アップしていかなきゃいけない。だから去年より今年、昨日より今日、今日より明日なんだと思うよ。そこは普段の生活から意識してるかな。
●改めて今作を振り返ってみて、どんな作品に仕上がったと実感していますか?
J:レゲエの古里であるリアルな現場を伝えられると思う。まあ、俺の好きなレゲエが詰まってるベスト盤みたいなアルバムだね。
●7/10にはH-ManとNanjamanとの3名で合同リリース・パーティが開催されると聞きましたが。
J:楽しみだね。この3人だからできるステージングになるよ。15年くらい現場を共にしてるし、昔は毎週一緒にマイクをまわしてたメンバーだからさ。それがまたリリース・パーティって形で一緒にやれるのは、凄ぇ楽しみだね。いろいろ構成とか考えてる最中なんだけど、とにかく他じゃ観れないショウになるよ。
●去年の『拳POWA』リリース・パーティ(@川崎チッタ)で実現した3人によるフリースタイルも、その掛け合いのスリリングさがヤバかったです!
J:やっぱり決められていないことをやる緊張感って、パフォーマンスにも出るんだろうね。予定調和のライヴじゃ、その緊張感は出せない。生モノなんだよ、ライヴって。だから面白い。失敗しても、それがライヴ。まぁ、失敗してる風には見せないけどね。20年レゲエやってるとさ、俺のフリースタイルが見たいって言ってくれる人も多いんだよ。だから絶対にライヴの中にはフリースタイルを入れてる。当然、まったく同じ内容のライヴなんて過去1度もしたことはない。たぶん、この先ずっと俺はそうやっていくだろうね。
"ラバダブマスター式"
Jr.Dee
[Nobrand / XQHE-1001]
Release Party of 3Albums
『Triple Cross』
2009.7.10(fri) @原宿ASTORO HALL
前売り¥2,500
OPEN 19:00 / START 20:00
[ローソンチケット / Lコード: 70898] 0570-084-003 http://l-tike.com
6.1(mon)チケット発売開始!
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