"First Lady ina Dancehall"
Text by Reiko NAGASE SMITH
男社会のダンスホール界で、女性アーティストは歌のうまさで直球勝負するほかは、お飾りだったり男性DJの裏返しだったり汚れ役だったりしたものだけど、このごろ、ファースト・レディに値するセレブな女性アーティストがエンタメ界をリードする傾向にある。
ファースト・レディとよばれる女性アーティストはDエンジェル、ダセカ・レーベルのレイン・シヴィル、ビッグシップ・レーベルのシーマ・マクレガー、ヴァイブス・カーテルのポートモア・エンパイアからリサ・ハイプ、スプラガ・ベンツ率いるレッド・スクエアの新人バンビなど。ファースト・レディとは、各分野で第一線に立つ代表的な女性のことで、ダンスホール界ではレーベルやグループの顔となって活躍し、レーベルの新戦略となっている。
ダンスホールの女王を長く君臨するのがレディ・ソウ。ほんとうはえっちなことなんか言わないんだけれど、ステージの上ではスラックネス全開。セシールも、あのリリックスとご本人のキャラとのちがいは明らか。ファースト・レディーたちはプライベートな部分を効果的にだして自分のイメージをつくりあげている。
DエンジェルはどのチューンもFM局でヘヴィ・プレイ中、キャリア、私生活ともにセレブの貫禄十分。結婚・出産・離婚、どのライフ・イヴェントも華々しく、話題に欠かず、そのたびに洗練されてきて、セレブ・ブランドも難なく着こなしている。息子のマルコ・ディーンとともにその私生活も露出、共感する女性のファン層もつかんでいて、聖子ちゃんばりのスーパー・ウーマンぶり。
ダセカ・レーベルのレイン・シビル。彼女ももう肩書きはファースト・レディ。ダセカにふさわしいR&Bテイストとヴォイスで、「Really Over」「Through With Love」「By My Side」といった新作が期待大。プロデューサーでシングジェイのセラーニに見出され、これからが楽しみなシンガーだ。
リサ・ハイプは去年ポートモア・エアンパイアのメンバーとなり、いちはやくファースト・レディに。ヴァイブス・カーテルとコンビネーションでセクシャル・チューンをリリースして話題。カーテルのレベルをキープするのがファースト・レディの役目、という。
ジャマイカン・ミュージックがいかに男性にリードされてきたかが見えるのが、さきごろ発表された「ジャマイカン・ミュージック・トップ100」。キングストンの西インド大学で行われた、ジャマイカ音楽に関するシンポジウムで選ばれ発表されたもの。選考基準は1957年から2007年の50年間にリリースされたジャマイカ音楽であること。ミュージシャン、ラジオのディスクジョッキー、サウンド・システムのセレクターが選出者となり、そのセールス、放送、音楽トレンドへの影響を考慮した上で選出したものとされる。発表されたトップ100のうち、トップ10がこちら。
「ジャマイカン・ミュージック・トップ10(1957年〜2007年)」
1位 ワン・ラヴ/ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ
2位 オー・キャロライナ/フォークス・ブラザーズ
3位 54-45/メイタルズ
4位 ゴット・トゥ・ゴー・バック・ホーム/ボブ・アンディ
5位 マイ・ボーイ・ロリポップ/ミリー・スモール
6位 メニー・リヴァース・トゥ・クロス/ジミー・クリフ
7位 サタマサガーナ/アビシニアンズ
8位 イズエライツ/デズモンド・デッカー&ザ・エイシズ
9位 シマー・ダウン/ウェイラーズ
10位 キャリー・ゴー・ブリング・カム/ジャスティン・ハインズ&ドミノス
どうですか? "「ワン・ラヴ」以外は知らない"とか、"「オー・キャロライナ」はシャギーじゃないんだ"とか、ジェネレーションを感じますよね。ジャマイカでもこの発表にはシンポジウムの参加者や西インド大学の学生たちから即行文句がでた。そりゃあ文句でますよ。2000年代はおろか、1990年代のチューンがほとんど入っておらず、古典全集だもの。もちろんいいチューンばかりなのだけど、選考者の年齢の幅が狭いようで、偏りありすぎ。トップ100をもっと広い視野で、どの年齢層ももう少し納得できるものを選考し、発表してほしいと声があがっている。
キングストンでは、ジャマイカ音楽博物館の創設が計画されているそう。
★ricoのジャマイカArt Life → www.ricoart.com
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