Randy's 50th Anniversary
CLIVE CHIN
Interview & Photo by Shizuo "EC" Ishii / Translated by Maki Sekine
世界最大のレゲエ・レコード会社へと成長したVP Records。その前身にしてジャマイカの音楽史を語る上で欠かす事のできないレーベル、Randy'sでプロデューサーとして活躍、自身でもImpact!レーベルを立ち上げ、数え切れないほどの名曲の誕生に携わってきたClive Chin。その彼がRandy's 50周年を祝したRock-A-Shacka主宰のパーティに参加するため来日。ジャマイカン・ミュージックに対する熱い想いを語ってくれた。
●まずあなたの生い立ちについて教えて下さい。
Clive Chin(以下C):1954年、キングストン生まれのキングストン育ち。58年頃に母親とアメリカのマサチューセッツに渡ったんだ。当時、初代ケネディが大統領選挙のキャンペーン真っ最中だったのを覚えてるよ。翌年、またジャマイカに戻って親父(ヴィンセント・チン)が始めたダウンタウンのレコード・ショップにずっと入り浸ってた。
●お父さんが始めたRandy's Recordsについて教えて下さい。
C:当時のジャマイカでは皆、マイアミやニューオリンズから発信されるラジオを聴いていたんだけど、ナッシュビルのラジオ局の、あるスポンサーがRandy's Recordsっていって、親父はその名前が気に入って自分の店も同じ名前にしたんだよ。店を始めた当初、レコードをプレイするのはジュークボックスだったね。70年代初めにサウンド・システムが完成してからはプレ・リリースの曲をかけていたよ。レゲエだけでなくテンプテーションズなんかのソウル・ミュージックもプレイしたさ。
●僕がジャマイカに初めて行ったのは1984年だったのですが、その時Randy's Recordsで7インチ・レコードをたくさん買いましたよ。
C:ジャマイカで初めてディストリビューションを始めたのはRandy'sだからね。だからカリブ中の人がRandy'sにレコードを買いに来てたんだ。
●ところで最近のセレクターは7インチ・レコードでまわさなくなってきているけど、それについてどう考えているの?
C:確かにテクノロジーの進化は素晴らしいと思う。でも俺自身はヴァイナルが消えていくとは思わないし、思えない。ヴァイナルは音のファンデーションだからね。確かにDJプレイする度にヴァイナルを運ぶのは重くて大変さ。でも皆にヴァイナルによってクリエイティヴに音楽をプレイすることがどんなに大切かを分かってもらいたい。こうして海外に行くのはただ単にセレクターとしてではなく、音楽とはいかなるものかということを教えるためでもあるんだ。特に今回はRandy'sの50周年記念でもあるし、自分でもプロモートしないとね。ちょうど記念盤の『Randy's 50th Anniversary』を持ってきたんだけど、これを聴いてもらえば、Randy's RecordsとVP Recordsの繋がりをもっと分かってもらえると思うよ。
●DJプレイする時に一番気にしていることって何ですか?
C:音楽から飛び出す楽しさを皆に届けることかな。ただ曲をセレクトするのではなく、その曲がどんなメッセージを届けているのかを気にすること。歴史的部分やそのアーティストが一体どんな人だったのかを分かってもらえるよう少しイントロダクションのミックスもやったりするんだ。そうすれば自然とリリックの意味も理解してくれると思うんだ。
●Randy'sからリリースされた「Java」を大ヒットさせたオーガスタス・パブロとは確か高校の同級生ですよね? パブロからあなたに直接レコーディングのことを相談されたたことはありましたか?
C:高校は一緒だったけど、特に相談されたことはないよ。彼の才能は既に広まっていたし、アクエリアス・レーベルで(ハーマン・)チン・ロイとやっていたからね。どうやって奴がRandy'sにやって来たかは覚えていないなぁ。恐らくアップセッターのセッションに来た時だと思うよ。でも、実際のところパブロが「Java」を作ったわけじゃないんだ。俺が作ったんだよ。俺がパブロに演奏して欲しいって頼んだんだ。あれはもともとラヴ・ソングでね、それ用に書かれたリリックもあるんだ。高校の他の同級生に歌ってもらうよう頼んだんだ。この曲は初めインプレッションズが歌った「East of Java」を使おうと思ったんだけどリリックがトラックに合わなくてね、改めてインストゥルメンタルの曲としてパブロに作り直してもらって、更に俺のフレーヴァーも加えて出来上がったのさ。「Java」は俺の最初のヒット曲だけど、最初のレコーディング曲はソウル・シティの「Young Love」って曲だよ。
●30年以上前にあなたがプロデュースした作品を今現在の若者達がこうして聴いて踊っていることについてどう思いますか?
C:素晴らしいと思うよ。親父が始めたことを俺たちがデカくして、世界中の人達がそれを受け入れてくれるんだからね、それは光栄なことだよ。60年代、70年代の音楽はきちんとプロデュースされているからタイムレスなんだよ。皆もそこから真のジャマイカン・カルチャーを感じ取ってくれているのだと思うよ。実際、俺が作った曲には色んな要素が入っている。スカからキューバン、ブルースやジャズなんかをミックスしてある。一度作ったサウンドはもう二度と作ることはなく、次の作品はまた違った要素を入れ、もっとヘヴィに、そしてもっと皆に受け入れられる曲にしていくんだ。前の曲より弱くなることは決してないさ。カヴァー曲だって、オリジナルよりもベターに仕上げたんだ。そんな曲を今の若者達が聴いて楽しんでいる姿を見るのは本当に嬉しいよ。皆にリスペクトだね。
"Randy's 50th Anniversary"
V.A.
[[VP / VP4100]]