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Marshall Mathersが自叙伝『How I Am』を出版した際、自身の薬物依存について彼があまり言及していないという批評があった。およそ10年前のメジャー・デビュー以来、ドラッグやマジック・マッシュルーム、マリファナといった言葉は彼の楽曲に頻繁に登場していて、5年前にアルバムがリリースされてから現在まで、彼が薬物中毒だという噂がまことしなやかに流れたものだ。また過去5年間、このDetroit出身MCの音楽活動が殆どなかったにも関わらず、『VIBE』読者は彼のスキルを評価し「現在最高のラッパー」に選出している。
『VIBE』2回目の"Real Rap Issue"で、Eminemはドラッグに関して初めて自らの言葉で語った。「オレが薬物問題を抱えていたことはみんな知っていたと思う。ただ、ファンはそれがどのくらい深刻だったかを知らなかっただろう」。果たして、どれくらい悪かったのだろうか? 最悪の場合、Eminemは彼自身がどれくらい薬を飲んだかわからなかったようだ。「オレはValium(抗不安剤)、Ambien(睡眠薬)、そしてVicodin(麻酔性鎮痛剤)を飲んでいた。1日に最高10から20錠のVicodinを飲んでいたよ。クスリの量は最終的に何錠飲んだのか数えられなくなってしまった。それほど大量に飲んでいたんだ。『Anger Management 3』ツアーをなんとか終えることができたが、それさえも危なかった。ドラッグ・リハビリ専門医がいつも一緒にいて、適度な睡眠がとれるギリギリの薬の量を処方してくれていたのさ」
ツアーの後に彼はリハビリ施設に入所したが、有名人だということで居辛くなり短期間で出所してしまった。その後3週間、彼は全く薬に触れることはなかった。しかし、2007年のクリスマス頃中毒が再発した。ちなみに彼がまもなくリリースするアルバム・タイトルも『Relapse』(再発)だ。彼は友人からもらったドラッグを、何の薬なのか知らずに飲み自宅のバスルームで倒れた。彼は直ちに病院に搬送され、ヘロイン中毒者のための治療薬Methadoneの多量摂取と診断された。「医者は、オレが病院に搬送されるのがあと2時間程遅れていたら、間違いなく手遅れになっていただろうと言っていたよ」
これで彼がドラッグと決別できたかというと、そううまくはいかない。Eminemは膝を怪我して手術をした。医者は彼の病歴から痛み止めの薬を処方できなかったのだ。彼は家中を探し回り、なんとか薬を探しだしたのだった。そして彼は2度目の再発を経験する。ちなみに、彼は今年中にもう1枚『Relapse 2』というアルバムをリリースする予定だ。
「そこでオレは思ったんだ。オレは本当にドラッグ中毒者になってしまった、と。自分を中毒者であると認めることは辛い。ヒップホップ・コミュニティでドラッグ中毒者は"弱いヤツだ"とみられてしまう。もう、たくさんだと思った。医者やセラピスト、そして金銭的に援助してくれた人々のおかげでオレは完治することができた。今ではこの状態を保つためにリハビリ・ミーティングに参加するなど様々なことをしているよ」
人生からドラッグを完全に追放した彼は爆発的なクリエイティビティを発揮した。Dr.Dreとの作品はデビュー間もないEminemの音楽のような勢いがある。「Dreと一緒の音楽作りはクレイジーだ。もの凄い勢いで作業に没頭していた。彼がこんなに働いているのを見たのは、『The Chronic』を制作している時以来だよ。オレとDreとのコンビネーションは『The Marshall Mathers LP』の時ぐらいに合っている。『The Relapse』はSlim Shadyへの回帰でもあるんだ。アルバムにどんな評価が下されるのかを心配するのを止めて、オレはラップだけに専念したのさ」
他のMCがそうであったようにEminemにとってかつてラップこそが究極のドラッグだった。「ラップはオレをハイにしてくれたが、そのうちそれが止まってしまった」と、彼は『VIBE』のインタビューに答えた。「そしてドラッグにその役割と同時に感覚を麻痺させることも求めてしまった。でもラップはオレをまたハイにしてくれているよ」。それはオレ達にとってもいいニュースだ。
TEXT BY ROB KENNER
アメリカの『VIBe』マガジン、VIBE MEDIA GROUPのエディター・アット・ラージとしてREGGAEコラムを執筆中。HIP HOP/REGGAEに深い愛情を持つ。
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