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THE MAZE

(U KNOW)What the deal is
　
オハイオはクリーヴランドにあるロックの殿堂入りが、今年もまた盛大に行われた。とっくに殿堂入りしていたと思っていたランDMCが、その栄誉に今年輝いたのだが、DMCのその授与スピーチが良かった。オールドスクールへの敬意から、リック・ルービンにまつわるエピソードなどを交え、最後には孤児である自分がここまでこれたという事によって、世界中の孤児達が勇気づけられれば良いと締めた。片やビジネス的なプロトコルで終始したランとの不仲も、DMCが「25年後にもソロ・ラッパーとして、みんなを楽しませているよ」と言い切ったので、明らかになった？
　
●今月のトリビュート＋
本誌の読者にも馴染み深いと思われるNYのレーベル・オーナー、亡くなったばかりのブラッド・オズボーンへのトリビュートがハーレムで行われた。クロックタワー、グランド・グルーヴなどのレーベルを立ち上げていったオズボーン氏だが、ブロンクスにもレコード店を所有するなど、ローカルのシーンにこだわり、NYで確実にレゲエ、初期のヒップホップを根付かせる事に貢献した一人である。彼に縁のあるDJチャック・シティや、グランド・グルーヴからリリースしていたTスキー・ヴァリーなどが出演し、故人の功績や逸話を披露していた。同じく4／3は、ブレイクダンスのスーパー・スター、フロスティ・フリーズの一回忌で、フロスティの生家である、アップタウンで、静かにわずかな身内だけで行われた？
　
●今月のドキュメンタリー
3／26から3日間に渡り、「クイーンズブリッジ・ムーヴィ・シリーズ」なる企画がハーレムはメイスレス・シネマで行われた。クイーンズブリッジにまつわるドキュメンタリー作品2本が上映され、ゲスト・スピーカーに、ロクサーヌ・シャンテ、ハヴォック、そして上映作品の『ジ・アザーサイド QB』の監督セリーナ・ブレイクなどが出演した。もう一本は、トラジディ・カダフィを中心にクイーンズブリッジのプロジェクトの現実に迫るという趣向の『Tragedy: The Story Of Queensbridge』という2005年の作品も上映された。今年に入ってからもクイーンズブリッジのラッパー達のドキュメンタリーも制作されていて、ヒップホップの聖地の一つとしての貫禄もそうだが、現実としていまも貧困や犯罪がはびこる地域であり、これらの作品がそういった現実と取り組むきっかけとなることを望む？
　
●今月のキャンペーン
全世界的に4／14は、スーダンはダルファーの虐殺に抗議するグローバル・デイとなっているらしいのだが、ヒップホップ勢でもこの日にギグを行い、一般の意識に訴える動きがある。ラッパー、イモータル・テクニック、アキア、DJスタティックなどがBBキングで、スーダンでの虐殺（中国が政府軍に武器で支援している）、児童の強制労働などに終止符をうつべくして、基金、抗議運動支援の募金をつのる。日本でもスーダン大使館や、アメリカ大使館につめかけてみては？
　
●今月のリーク
リック・ロスのニュー・アルバムからの一曲「マフイア・ミュージック」のリミックスなるものが、一部でリークされているが、これにザ・ゲーム、ジャー・ルール、ファット・ジョーという50セントの敵が全員集合している。
　
●今月のドキュメンタリー 2
一部では、その韻を駆使した喋りなどでラップにも影響をあたえたとされるボクサー、モハメド・アリと宿敵ジョー・フレイジャーを再解析するドキュメンタリー、イギリスのTV4とアメリカのHBOが制作した『Thriller In Manila』が4／11にプレミア放映された。実際は、アリの言動であまり真実を伝えられる事がなかったフレイジャー側の話が多く、なんと元大統領夫人のイメルダ・マルコスから、フィリピン側の関係者も多く証言している。マイク・タイソンのドキュメンタリー映画もリリースされる昨今、スター不在のボクシング界、どうなる？

　
沼田 充司
DJ／プロデューサー。 レーベル＜ブダフェスト＞主宰。 雑誌『ブラスト』でも執筆中。 ニューヨーク在住。 [Photo by Tiger]