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TO THE WILDERNESS OF FREEDOM
犬式 a.k.a. DOGGGYSTYLE
  
Text by Norie Okabe / Photo by Yusuke Sadamatsu
 

 ビート文学への飽くなき探究心を投影したリリックと、パンク、レゲエ、ハウス、アフロ......多彩なジャンルを咀嚼したサウンド。多くの人の音楽人生に刺激を与えてきた犬式a.k.a. Dogggystyleが"活動停止"を表明。ヴォーカル&ギターを務める三宅洋平に、これまでのこと、未来のこと、その胸の内を明かしてもらった。
 
 4月4日。東京・代々木公園。犬式は『Spring Love〜春風〜』のトリとしてステージに現れた。約3ヶ月前の活動停止宣言とともに「ラスト10回」と告げられたライヴも、これが終わればいよいよ最後の1回を残すのみだ。だが、この日の犬式の音は、むしろこれからバンドの歴史が始まるのではないかと思わせるようなフレッシュな輝きを放っていた。メンバー各々がすでに前へ歩み始めている----そんな"未来"を感じる音に、なんだかひどく興奮した。
  
 「活動停止を決めてからのライヴのほうが圧倒的にいいんですよ(笑)。活動停止というより"細胞分裂"だね。それぞれの細胞が大きくなって、また集まるときが来ればそれはそれだし。そういう意味では俺は犬式をずっと続けてるんだと思う」
 
 活動停止の理由は三宅洋平のブログで語られた。それを語弊なくここで伝えきるのは難しいのだが、彼は本取材時に、その1つとして2008年8月発表のサード・アルバム『意識の新大陸FLRESH』(以下『FLRESH』)がもたらした影響を語っている。
 
 「これ以上自分の理想とする音をこのメンバーで追うのは無理かもしれないって心境に陥りつつ、まだどこかで出し切れてない感も残りつつ制作に入ったんだけど、結果的にやっと"犬式といったらコレ"って言える作品ができた。それで停めれたんですよ。このアルバムは、わざと腹八分目に仕上げてみたの。そしたら、その詰めきらなかった2割に聞くたびに違う解釈を与える"無限のカオス"が生まれて。こういうものを自分は求めてたんだな、出し切ったなって納得できたんですよね」
 
 確かに同作は、音自体の"しなやかさ"や音の隙間の"緩さ"が気持ちいいアルバムだった。けれど同時に「自分で聴くと3曲でお腹いっぱいになっちゃう(笑)」と語るような"『FLRESH』以前"の楽曲も犬式の大きな魅力であるわけで......。字で表すなら、そちらは"硬"とか"固"、"急"といったところだろうか。言葉と音とがスリリングかつアグレッシブに渦巻く、そんなヒリヒリした感触はとりわけ初期音源に見られるが、先頃発表されたベスト・アルバム『犬式紀 2002-2008』では、そうした犬式音楽史の"硬軟"とか"緩急"の面白さを堪能することができる。
 
 「やり始めた頃はディストーションをギャーンと入れて爆音でドーン!ってのが一番だと思ってて。全部音で埋まってるみたいな(笑)。でも徐々にそれが一番じゃないって思うようになってきた。何も起こらないバースがあってサビの直前に何かが起こる、その落差がパワーなんだなって。100キロで走ってた高速から突然一般道に入ると50キロも超遅く感じるでしょ? そういう感覚。で、それをベスト盤にも取り入れたくて詰め詰めの曲とスコーンと抜ける曲と両方入れてる。俺流にDJしてみた感じかな」
 
 犬式の音に歴史あれば、人にも歴史あり。以前に比べると、だいぶ顔つきが穏やかになった印象を受けるのだが。
 
 「そうかもしれない、俺も30歳だし。20代の頃は、それはもうオラオラで(笑)。世の中が俺を認めてくれないことに対する苛立ちとか、自分は嫌われ者じゃないか?って思い込みがあって、めちゃくちゃ虚勢を張ってた。それが苦悩の原因となったわけだけど、それはそれで音楽に叩き付けて表現してこれたし。何も悔いはない。俺の20代100点満点って言い切れるから。だけど最近は、まず自分が幸せで何かに満足できてないと、そのスタンスで吠え続けられなくなってきた。昔、別れた女に『あなたには喜怒哀楽の"楽"がない』って言われたんだけど、それが事実なら大いなる欠陥でしょ(笑)。だから"楽"ってものは俺にとってずっと憧れだったんですよ。で、よくよく考えると、その"楽"の感覚の始まりはレゲエだったの。1番クラったのは映画『Rockers』のホース・マウスの歩き方。そのリズムとかタイム感は何なんだ!っていう(笑)。緩やかさや調和があるのに多分にパワフル。そこは愛すべきブルースマンKeisonや俺の最もリスペクトするDJ、光くんにも通じるところなんだけど......。言うなれば20代の俺は"北風と太陽"の北風であり、ド真ん中剛速球を投げ続けた桑田(真澄)投手であり。で、これからは太陽でありたいし、20年で200勝目指す松坂(大輔)投手でありたい。もっと柔和で太い表現をしていきたいと思ってるわけです」
 
 今後、犬式のメンバーはそれぞれ新しい道を歩み出す。三宅洋平は、すでに様々なプレイヤーたちとフリースタイル・ライヴを展開し「メンバー探しの旅」を始めているそうだ。ふと口にした「満月の夜限定で犬式ライヴやろうかな」とは冗談なのか本気なのか読めないところだが、確かに言えるのは犬式が遺した音はちゃんと"未来"へつながっているということ。
 
 「犬式が音楽人生に介在したら、ほぼすべてのかっこいい音楽への道が拓かれるはず。というのは、俺らは無節操なまでにいろんな音楽を取りこんできたから。犬式が日本人にとってのルーツ・ミュージックになってほしい......けど、そうなるもならないもみんな次第。よく"孫の代まで宜しく"ってMCで言ってるけど、仕組まれたムーヴメントじゃなく自然発生した人々の想いやアクションが自然に継承されて進化していったらいいなあ、と。今、その手応えを少しずつ感じてるけど、もっと市井のパワーを高めたいんだよね。ただ俺の目の黒いうちには"見たい世界"は見れないだろうな。まあ、Jリーグのように100年構想で......そげん想いで音楽やっとるとですよ(笑)」

 

"犬式"
[Colla Disc / CLA-30005]
1st Maxi Single

 
 

"飛魚"
[Colla Disc / CLA-30007]
2nd Maxi Single

 
 

"レゲミドリ"
[Victor / VCL-61139]
1st Mini Album

 
 
"月桃ディスコ"
[Provincia / PRVC-1001]
3rd Maxi Single

 
 

"Life Is Beatfull"
[Provincia / PRVCD-001S]
1st Album

 
 

"Diego Express"
Provincia / XQFD-91001]
2nd Album

 
 

"意識の新大陸FLRESH"
[Provincia / XQFD-1003]
3rd Album 
 

"犬式紀 2002-2008"
[Victor / VICL-63295-6]
Best Album

 

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