VOICE OF OKINAWA
U-DOU & PLATY / TURNER
Text by Thunder Killa / Photo by Hiroshi Manaka
沖縄のレゲエ・シーンをリプレゼントし続けるDJユニット、U-Dou & Platyが完成させた4thアルバム『Rise Up』は、いままでに増して"シーンに打って出た"印象の強い作品だ。まだまだ馴れないという東京滞在中の彼らに電話インタビュー。
●今回の収録曲は以前と比べ、ウチナーグチ(沖縄言葉)使わずに構成されている割合が増えています。これはシーンを意識してのことですか?
Platy(以下P):今まではデージ(すごく)前面に沖縄ヴァイブスを押し出してきたつもりで。でもやっぱりDJっていうのは日本でボスさせないとあがっていけないっていうのもわかったんで、これ迄できてないことをやろうかなって思ってこういう仕上がりに。でも軸はぶれてないと思うよ。
●Home Grownとの「One Big Family〜わったぁしんか〜」をはじめ、元Mute Beatの朝本浩文など、今までにないサウンド・プロデューサーの参加が印象的でした。
U-Dou(以下U):あの曲は元々、去年のフェス終わりぐらいからTancoさんにミディアムの曲をお願いしててさ、作ってる内にフェスのオフィシャル・ソングにしてしまおうって話になって。沖縄らしい曲になったでしょ?
P:朝本さんは、前に大山百合香さんっていうシンガーさんの曲に参加させてもらったことがあって、その時のサウンド・プロデューサーだったわけ。で、今回のアルバムを作るのにいろんな人のアプローチを聞かせてもらってる中で、気に入ってさ。
●今回は以前までトータル・プロデューサーとして参加してきたB.P.との楽曲が少ないですね。
P:そうだね。今回入ってるのも、元々は前のアルバムを作ってる時に作った曲だったんだよね。「お前らはもう大丈夫だよ」って言われて。今は一緒に曲作りはしてない。でも、たまに遊んだりするよ。まぁお友達ですね(笑)。
●Jr. Dee やRudebwoy Faceの参加はどういった流れで?
U:Jr.さんは沖縄によく来るんだよね。去年なんかは一番来たアーティストかも知れない。「一緒にチューン作ろうぜ」って誘ってもらって。Rudebwoy君は、Ward 21のSukuに作ってもらったオケが超カッコ良くて、これはもうRudebwoyでしょってなって。前から一緒にやりたいなって言ってたんだよね。実はこれ、ジャマイカでもう同じトラックのチューンが出だしてるわけ。CobraとかBeenie Manとかが歌っててさ。オケ買い取ったつもりだったんだけどさ(笑)。なんかレゲエらしくておもしろいよね。
●かりゆし58との「For di Future」は前回のミニ・アルバムにも収録されてましたが、反応などはいかがでしたか?
P:俺らと同世代の人にはすごく感じ入ってもらえたんじゃないかな。俺らがB.P.さんから習ったのは、レゲエを聞いてる人だけじゃなくて、もっと万人に届く歌を作らないといけない、血が通った歌を伝えないといけないっていうことだったんで。この曲とかは正にそういう曲になったんじゃないかな。
自分たちのことを、自分たちの言葉で、自分たちの音楽に乗せて、自分たちに向けて表現する、というのはレゲエの本質の一つだと思う。その意味で、彼らが親しんできた沖縄の音楽をふんだんに取り入れ、ディープなウチナーグチで表現してきた今までの作品は、彼らにとってストレートなレゲエだったのだろう。ただ、このことは彼らと違う"島"に住むリスナーにとって、ある種の"壁"となっていたことも事実だろうし、彼らについてよく言われた"沖縄音楽とレゲエの融合"という言葉は、どこか彼らを"変わり種"扱いすることにも繋がってきたように思う。そこでこのアルバムである。
彼らは自分たちの色を"変えて"しまうのではなく、もちろんいい意味で"薄めて"しまうことで、より多くの人々に届けることを選んだのではないだろうか。ちょうどジャマイカのアーティストがインターナショナルなマーケットを目指す時にするように。そしてその試みは確実に功を奏し、レゲエDJとしての彼らのスキルの高さ、オリジナリティの豊かさは、今このアルバムで十分に浮き彫りになった。さぁ、南の島のDJのすばらしさ、こっちの"島"が気付くのもそろそろじゃないか?
"Rise Up"
U-Dou&Platy
[Riddim Zone / RZCD-46152/B]
TURNER
Text by Norie Okabe
U-Dou&Platyがホームベースとする沖縄レゲエ・シーンの創生者といえばTurnerとSaluteからなるKing Ryukyu Sound。ここでは、そのTurnerが選曲&ミックスを担当した「ジャパン・レゲエ・フェスタ・イン・沖縄」のオフィシャル・ミックスCD『Ragga-N-Chu 2』の内容を彼の言葉と共に紹介していこう。。
沖縄で聞くレゲエは格別だ。歌が音が、まるで沖縄という土地の持つエネルギーを吸収して輝きを増しているような感じ。この『Ragga-N-Chu 2』は、まさにそんな沖縄"ならでは"の空気感を感じさせる作品だ。「ジャパン・レゲエ・フェスタ・イン・沖縄2009」のテーマソングとなるHome Grown×U-Dou&Platyの新録「One Big Family〜わったぁしんか〜」を筆頭に、同フェスに縁の深いアーティストたちの楽曲が収録されているのだが、本作の醍醐味はやはり沖縄が誇る老舗サウンド(今年で活動18周年!)King RyukyuのTurnerが選曲&ミックスを手がけていることにある。
「"青い空""近い海"というシチュエーションでカーステで聴く! そんな"沖縄で聴くイメージ"を考えました」とは、まさしく! 焦げるような強い陽射しに似合う"アツイ"曲、広大な海のように心を満たされる"あったかい"曲......"ウチナーンチュ視点"らしい沖縄の情景を連想させる楽曲揃いなのだ。「どの曲にも彼ららしさ、あたたかさがある」と氏がリスペクトを捧げるU-Dou&Platyの歌声から幕を開ける全22曲。Fire Ball「Bad Japanese」などゴリゴリ路線、スウィートなJing Teng「Waving」、泣きのミディアムRyo the Skywalker「Seize The Day」といった具合に緩急/硬軟織り交ぜ、聞き手の高揚感をあおりながら、「後半の選曲(のイメージ)はサンセット」と言うようにPushim「波が...〈GreenTings Version〉」など黄昏を演出する曲へなだれこみ、ラストはH-Man feat. Moomin「上を向いて歩こう」で締める。
「最後は明日もがんばろーって気持ちにしてリピートに続く。2回目あたりで"ダンスにいちゅんど〜(行こうぜ)"ってなってほしいですね。(このCDは)どこから聞いても流れがあって、一度聞いたらリピートしたくなるのが魅力だと思う。誰が聞いても聞きやすいだろうし、元気も出るし、パワーももらえる、懐かしくもある、アイリーな気分にもなれる、しっとりな気分にもなれるし、優しくもなれるんですよね。そのあたりに俺等らしさ沖縄らしさを感じてもらえれば最高&成功ってところでしょうね」
「このCDのチャンスを与えていただいたこと、そして協力してくれた皆さんに心から感謝します」、そう最後にメッセージを残したTurner。ジャケット写真の"Love&Peace"の文字も彼自身が書いたものらしいが、この『Ragga-N-Chu 2』には、そんなふうにたくさんの"あったかい気持ち"が詰まっているような気がする。
"Ragga-N-Chu 2 Mix by King Ryukyu Sound"
V.A.
[Pony Canyon / PCCA-02877]