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Review by TAKASHI FUTATSUGI
 
 
MIX CD
 
1. Gipper / Gip'Mixxx!! Fillmore (KSR)
年間150本以上の営業や、10枚近いオフィシャル・ミックス盤を制作してきたウェッサイ・シーンを代表するミックスマスター=DJ Fillmoreが、1人のラッパーをテーマにした初のミックスCD。そして、その内容はKings Of Bay-Funk=Nora筆頭格ことGipperの客演を含めたソロ・キャリアを総括したベスト盤的なモノ。彼持ち前のトラックの持つグルーヴを最大限に引き出すライミング&ファンキー・フロウが、Fillmoreの芸術的なミックスで、より光っているのは言わずもがな、かと。JPウェッサイ聴かず嫌いの入門編としても是非!
 
ALBUM 
 
2. Grandmaster Flash / The Bridge: Concept Of A Culture (Strut)
世界共通の文化=ヒップホップ。その架け橋を自認する大物DJ=GMFの実に10年ぶりの新作。Q-Tip、KRS One、Busta Rhymes、Snoop Doggら新旧豪華客演陣が参加した楽曲はヴァラエティに富み、その意味でもタイトル通りで過去の焼き直しなどではない。日本代表=Macchoら世界中から選抜された4MCによる「We Speak Hip Hop」について、GMFはこう語る。「Macchoのフロウと声のトーンに惹かれたんだ。俺は他にも沢山のMCの楽曲を聴いたけど、初めて彼のラップを聴いた時、俺は凍り付いてしまった。もし彼がスーパースターでないのなら、そうなるべきだよ」。同感だ。
 
3. Bow Wow / New Jack City II (Columbia)
オマリオンとのコラボ・アルバムを挟んでのソロ6枚目。ヤング・アーバン代表と呼ばれる彼(21歳)も、自分より若いラッパーとコラボする様に。そのSoulja Boy Tell 'Emとの「Marco Polo」やJohnta Austinを招いての「You Can Get It All」(TLC「Baby-Baby-Baby」ネタ)等が早くもウケてる本作は、Jermaine Dupriとの久々の黄金タッグがポイントとなる内容(故に例の映画から取ったタイトルに!)。T.I.、T-Pain、Trey Songs、Ron Browz、Nellyらゲストとの掛け合いも効いているが、何よりも彼自身の成長ぶりが大きくモノを言っている。
 
4. B-Real / Smoke and Mirrors (Duck Down)
西のレジェンズCypress Hillのフロント=Buddah MasterことB-RealがDuck Downと契約し初のオフィシャル・アルバムをドロップ!「俺がどんな風に日常を捉えているかを綴った作品。リスナーを旅に連れて行くイメージ」という本作には、同レーベルの看板的存在のBuckshotやDamian Marley(Nasとアルバムを制作中)の他、Too $hort、Snoop Dogg、Kurupt、Xzibitらとの貴重なセッション目白押しで、グループとはまた一味違うトーンの作品(Sen Dogも参加)。主役は例のカン高い声の活きたフリーキー・フロウだけでなく、トラックも披露している。
 
5. Joe Budden / Padded Room (Amalgam Digital)
Def Jamから鳴り物入りでデビューしつつも決別。紆余曲折の末、デジタル・ビジネスで有名なAmalgam Digitalとサインした喧嘩っ早いハードライマーの正式な(?)2nd。その間のミックステープ・シリーズでも組んでいたBlaster Beatsらがバックアップし、和解したThe Gameも参加した本作は、どこまでもこの毒々MCの独壇場となる強度の高さが並じゃない内容。「誰だって精神異常者的な部分を持ち合わせているっていうのがコンセプト。自分が受け入れようとそうでなかろうと、人には誰しもそういった側面があるってことを掘り下げてみた。それに、俺にとって"Padded Room"という言葉はRECブースを象徴する言葉でもあるからな」。なるほど。
 
6. Taro Soul / Soul Spiral (Ki/oon)
ラップと歌の2刀流、いや"歌う様にラップし、ラップする様に歌う"スタイルに磨きをかけるヒップホップ・ソウル・ブラザーTaro Soulのメジャー初アルバム。シングル 「Everytime」「Soul Dreamer」に、サイプレス上野、Dabo、Simon、マボロシ、西野カナとのコラボ、DJ Watarai、DJ Jin、D.O.I.、Mr. Beats、Ali-Kick、Bach Logic、 Buzzer Beatsら豪華制作陣らが用意した様々なトラックに"ソウルを込めて"乗りこなしキックする様は、Son Of Bazerkよりもクロい。しかし、多くの人に届けようという意識・姿勢は彼を1回り、2回り程大きくした様だ。
 
7. Juswanna / Black Box (Libra)
精鋭軍団Libraが誇る2MC+1DJグループと言えば、東京最南端大田区をRepするこのJuswanna。粋でいなせなフロウを繰り出すタフな2MC=Mega-G The Chef、Mess a.k.a. メシアTheフライそれぞれの個性は、この待望の1stフル・アルバムで炸裂している。D.Lが長年寝かせていた強力トラックを「東京頭脳戦争」に提供した、という事実からもシーンからの彼らへの期待値の高さは計れるだろう。他にもL-Vokal、Dag Force、Bes、仙人掌、山仁、Side Ride、少佐といったサークル/精神的に近い連中が駆けつけた本作は、ジャケット以上の衝撃を与えてくれるはず。王道にして最先端。言葉のマシンガン乱射しつつ無駄撃ちはナシ!
 
8. Dosmoccos / Champ Road (File)
前作に続き"国際色豊かな楽曲(×2)"を収録しつつ、メンバー(プラグ3?)のDJ Mo-Rikiを始め、GP、Evisbeats、DJ Taiki、Southpaw Chop、DJ Markら多彩なトラックメイカーが参加した、ファンキー3人衆の3rd。「モッコス魂」=Funkyとでも言いたげな、ファンキー・エイジアンの本人たちがパブロフの犬状態になるサウンドは、とにかく振り切った楽しさで一杯! Coma-Chiとのお馴染みのドスモッコス・アンセム「Friday Night」を、人気ファンク・バンド、マウンテン・モカ・キリマンジャロがバンドアレンジしているのも(驚)。自他共に認める"変態"だからこそ成しえた快作。
 
9. Rice a.k.a. AB-Nice / 今日の扉 (River City)
元El Dorado Crew、Primer〜Fusion Coreで、ソロ・アルバムも出しているRiceの2nd。人間味のあるリリックスを格好をつけ過ぎる事なくストレートに放つ彼の"新たな扉"の先には、彼自身のルーツとなる様々な世界があった...。中でも心酔してやまないザ・ブルーハーツの名曲「君のため」をサンプリングしたVolta Masters制作のリード・トラックは話題沸騰。フックに"あの歌"が入るヒップホップ・トラックとは?(聴けば判る)。他の参加プロデューサーは、DJ Watarai、Mr.Beats a.k.a. DJ Celory、I-DeA等、彼の持ち味を熟知した面子で主役も水を得た魚のよう。
 
10. 神 from 妄走族 / Master Of The Punch (Kix)
三茶が生んだ言葉と頭のハードパンチャー=神の3rdアルバム。妄走族、流星會でもパンチの効いた台詞を飛ばしていた彼は、"ストリートの噺家(もしくはアジテイター)"として独自のカラーを確立しているが、Rankin TaxiやChappa Ranksとのコンビネーション(後者とはその馴れ初めのスキットもアリ)も用意された本作はその真骨頂と呼べるものとなっている。般若、Zappy Soulを迎えた「大日本平和党」を始めとする彼流のプロテスト・ソングもピリリと効き耐久度も相当だ。Lucha、Diori、Fly-T、Camel、Zipsies、I-Makら制作陣の仕事ぶりも強力!
  
11. SAL the soul / Stay Here (Studio Cosmic Notes)
かつてMinmiやBach Logicと同じクルー=Keep On Steppin'のリーダーを務めた、現Improveのメンバーの彼の2ndソロ。夢と現実の間で揺れる"偽りない自分"を曝け出した本作は、"ソウルフルな声、滑らかなフロウ、ディープなリリックス"という武器をフル回転させたワン・マイク作。自虐の美学を貫くこの等身大の哲学者は、"自分にしか歌えない歌"を聴かせる。全曲を手がけたSota Furugenのトラックもまた素晴らしい!
   
12. V.A. / Gift : 玲瓏 Presents Afro☆Spot & Friends (Queendom)
ダイダラボッチの紅一点として活躍後ソロ活動を展開、'04年自主レーベルQueendom Recordsを設立し、1stソロ・アルバムも発表しているラッパーが、「難病の人達にかわって世界にメッセージを届けたい。20代〜40代の女性、頑張っている女性にこそ届けたい」という想いを込めて贈るチャリティ・コンピ。シンガー、ビートボクサーを含む玲瓏Bandや仲間のラッパー達をフィーチュアし、"愛の伝道師"の名に相応しい仕切りぶりを見せている。

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