maccafat
Text by Hajime Oishi / Photo by Tsuyoshi Otsuru
アオ(Dry & Heavy)とDAIHACHI(moss)のニュー・プロジェクト、maccafatのデビュー作『Maccafat』が到着。十代からの付き合いになる2人が紡ぎ出すのは、アオの歌心とDAIHACHIのギター/トラックが絡み合う温かなダブ・サウンドだ。早速、彼ら2人に取材を試みた。
2007年2月の結成以降、全国で精力的なライヴ活動を繰り広げてきたmaccafat。2人という最小人数編成からなるこのバンドは、アオいわく「プレイヤーとしては彼が一番付き合いが長いんです」というDAIHACHIに声をかけたところから結成された。
「僕も30代に入って、レゲエとの付き合い方も考えるようになって。その時、限りなくゼロに近い状態から何かやりたいなと思って、そうしたらDAIHACHI君とやるしかないな、と。レゲエをしっかりとリプリゼントしながら、2人でしか出来ないことをやりたいと思った」(アオ)
アオのトースティング、DAIHACHIのギターとトラック。彼らのサウンドを構成する要素は実にシンプルなものだが、そこには長年彼らが聴き親しんできた様々なジャマイカ音楽のエッセンスが凝縮されている。
「最初、レコードを聴きまくったんですね。ウチのスタジオでデカイ音で」(DAIHACHI)
「トレジャー・アイルの音源でファズ・ギターが入ってるヤツとか、あとはリン・テイトも聴いたよね」(アオ)
「あと、(ハーマン・チン・ロイがプロデュースした作品集)『Aquarius Rock』」(DAIHACHI)
「そうそう。それとルーツ・ラディクスのワンドロップものとか......」(アオ)
そうやって、まるで少年のように熱っぽく語り合う2人(言わずもがな、maccafatというバンド名はジャッキー・ミトゥーの名盤『Macka Fat』から付けられている)。だが、彼らのデビュー作『maccafat』が素晴らしいのは、レゲエを神棚に祀るのではなく、自身の側にグッと引き寄せ、純粋にその音楽的魅力に迫ろうとしているところにこそある。
「今まで言われてきたようなダブの音響的な側面だけじゃなくて、音楽的な面白さのほうを確認していった感じですね。楽器の音色や演奏の面白さみたいなところを」(アオ)
「トビ音とかリヴァーヴに頼らなくても曲として成立するような、メロや詞がしっかりしたものを作ろうっていうのはありました。それと、プレイヤーって自分の好きな音色とかエフェクトがあるじゃないですか。それをやっちゃうとどうしても閉ざされた感じになっちゃうから、音色とかフレーズを決めたらまずはアオに相談するんです。『上級者向けだな』って言われたら考え直して」(DAIHACHI)
ひとつひとつ土台から築き上げられたmaccafatのサウンドは、しっかりとした骨格を持つ骨太のものとなった。これまで以上に日本語の響きを重視したアオのトースティング、ジェイコブ・ミラー「Baby I Love You So」など有名曲に対するユニークなアプローチ。彼らも今作の制作を通して自身のレゲエ観が大きく広がったことを話していたが、今作ではジャマイカ音楽が持つふくらみがさりげなく表現されている。
「今はレゲエの良さを継承して、日本人としてオリジナルなものを作っていきたいとより強く思うようになってる。それが今、彼とのコンビで出来るのが嬉しいんです」(アオ)
「今までの音楽活動のなかでも最も自然に事が運んでる気がする」と話すアオ。その表情は実に晴れやかなものだった。なお、彼らは引き続き全国を精力的に行脚中。そちらのほうも是非チェックしてみてほしい。
"maccafat"
maccafat
[P-Vine / PCD-25093]