Macka Pee
Text by Nobuhiko Mabuchi / Photo by Ben
3年前に余命3日と宣告され、今も闘病を続けるDeeJay、Macka Pee。不屈の精神力でシーンに返り咲いた彼が、ミニ・アルバム『エデン』をリリースした。プロデュースを手掛けたHunter ChanceのYashiroのコメントを交え、今作の聴きどころを紹介する。
若干23歳で悪性骨膜肉腫という癌に犯され、余命3日を告げられたMacka Pee。絶望的な状況の中で、彼は本気で命のやりとりをしてきた。そして3年後、不死鳥のごとくシーンに舞い戻る。
「あきらめそうになったとかじゃなく、何度もあきらめました。明日の事すら想像できないほどの苦しみを味わいましたからね。でも、行動しようと決めた。自分にはレゲエしかない。行動を起こすことで、チャンスは次々に訪れました。仲間との繋がりを含め、ガイダンスでしたね」(Macka Pee)
まさにレゲエに生かされる男。そんな彼に制作の話をもちかけたのが、レゲエ・サウンド兼プロデューサーのHunter ChanceのYashiroだ。
「死に直面しているMacka Peeのリアルなメッセージを届けたかった。今の彼にしか歌えない歌があるはずだと思って」と、まずは自身のレーベル、あばれ馬Recordsからリリースしたワンウェイ・アルバム『Crocodile』で今作にも収録されている「Phenixxx」を制作。そこから2年の歳月をかけ、治療の合間をぬって制作に専念するMacka Peeと共に今作『エデン』を完成させる。タイトル曲は男と女=SEXをテーマに、神話を引き合いに巧みなリリックで聴かせる楽曲だ。
「自分が経験してきたとかそういうことじゃなくって、性についての禁断の話とか想像の世界の話も織り交ぜて、辿りついたのが"アダムとイブ"。今までのMacka Peeにはない、男と女の性の世界を歌にしました。"楽園"とは何かと」(Macka Pee)
また、現場のラバダブで積極的にマイクを握ってきた彼のスタイルを象徴するコンビネイション「'A' Class Rub-A-Dub」も収録。Arare、ヌマニエル、Skywordといった盟友を迎え、現場感たっぷりのマイクリレーを披露した。
「とにかく楽しみながら作りました。僕は現場で育ってきたDeeJayだから、マイク一本からどんなストーリーが見せられるのかっていうラバダブの醍醐味が見せたくて」(Macka Pee)
さらに、Alps Bandの正村和也がリディムを制作した「サバイバー」では、抗ガン剤治療がはじまってから病院にMTRを持ち込み、説得力あるメッセージを楽曲に託した。そして、涙なくして聴けないチューンが「Mother」(feat. Tony The Weed)だ。どうしても書きたかったとう母親に向けた1曲で、Tony The Weedのハーモニカと共に響く魂の叫びがリスナーの胸を強く打つ。
「正直言えば、聴いてて重い気持ちになる曲もある。でも、作品すべてがMacka Peeのリアルな現実だし、この現実から目をそらさないことがレゲエだと思う。だから、彼のメッセージをひとりでも多くの人に聴いて欲しい」(Yashiro)
制作中、Macka Peeは「我慢」「負けない」「食いしばれ!」と、常に自分に言い聞かせてきたという。生きるためにレゲエを続ける男が、命をかけて完成させた今作。絶対に聴いて欲しい!
"エデン"
Macka Pee
[あばれ馬 / AUCD-002]