"Wi Dead Serious"
Text by Reiko NAGASE SMITH
ジャマイカ放送委員会が、大流行のダガリンを規制すると発表してから、ミュージック・シーンの規制モードが止まらない。
ラジオからは、ディスクジョッキーの困惑ぶりが伝わってくる。
「ダガリン」を曲中で表現したチューンが、放送禁止になったことに端を発したこのコンフュージョン。What's ダガリン?
放送委員会によるとダガリンは、「ダンスホール文化のスラングで、ハードコアなセックスやドライなセックスを意味する隠語。または公共の場で性行為や体位を真似た表現」のこと。
上半身を前屈した女性の後ろに男性がくっついて立ち、エロティックなムーヴメントを見せるダンスを一般的にダガリンとよんでます。
たしかに、こんなに大っぴらすぎていいのかいな、と、カーテル&スパイスの「Rampin' Shop」リリースを機に、ダガリン・ダンスと対でヒート・アップしちゃった感があったんですけども、今や、過敏すぎる規制モード。極端ですね。
どのアーティストがこの規則尽くめのなかでサバイヴしていくか。どんなチューンがこの厳密な試験のような規制をスルーできるのか。Wi dead seriousな、ジャマイカ人の関心事。
「ダガリン」という言葉を使用したチューンが規制されたことにはじまって、そのうちセックスを露骨にあらわしたチューンがすべて放送禁止となった。
この規制がかかる前は、"ピー"という音で曲中のわいせつ部分を消してプレイしたのだけど、このピー音を面白可笑しく使ってどこでもピー、やたらにピー。その後すぐにピー音自体が禁止となった。
当然、ダンスホールばかり目の敵にする、という不満がもちあがる。
真昼間に公衆の面前でスキンピー極まりない格好でわいせつなダンスを披露するカーニヴァルはどうよ、という意見が溢れるようになった。ちょうど4月の本番パレードに向けて、カーニヴァル・チューンやイベントが熱くなってくる時期だもの。
その後すぐに、カーニヴァルのチューンでもわいせつなものは放送禁止、カーニヴァル・イヴェントではわいせつダンス禁止、と放送委員会が正式に発表。
じゃあヒップホップはいいのかよ。......ヒップホップもわいせつ入りは放送禁止。
じゃあガン・チューンは、ガンジャ・チューンは、ヴァイオレンスを示唆するようなチューンは、となってきて、やたら滅法排斥の方向にいき、次々に規制されはじめた。
この曲が禁止で、なんでこの曲がかかるんだ、などいじわる目線なつっこみに、ラジオのディスク・ジョッキーは過敏反応。
こうしてバッドなチューンは追放され、ミュージック・シーンが清浄され、わいせつチューンが蒸発させられるとしたら...。
さて残るは何か。
タクシーやバスなどがこれら、わいせつチューンをプレイしていたら罰金!ってな規則までできた。
Wi dead laugh。
スラックネスと反逆の歌詞は、ながいあいだダンスホールの真髄。生活にある、リアルなリフレクション。それはわいせつか、アートか。
例えば、曲中に使われる言葉で、「ハーブ」はよくても「ウィード」はだめとか。
例えば、breedという言葉。mi want breed da galなんてチューンにはいってたりする。パトワでは、女の子が妊娠することをいうのだけれど、英語では人間様が産むときには使わない言葉。
これは下品か、ユーモアか。Zeeen。
あるチューンはラジオでは流れず、ダンスの現場でしか聴けなくなる。現場はアダルトだけのスペースで、大人だけが突いて突かれるならばよしとするか。ダンスに年齢制限を設けるか。
「Follow di Arrow」(注;ボウンティ・キラー主催の例年のビッグ・イヴェント)でキラー番長が、おなじみのフレーズ、「ピープル・デッド!」を言わずに登場。Deadのようなヴァイオレンス的な言葉は自粛の傾向にあるのだ。
この突然の規制騒動、ダンスホールのもつポジティヴさを見失わずにUpfullに。
Wi dead serious...
おっと、DeadはLiveに変換しないと。
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