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BITTY McLEAN
 
Text by Takanori Ishikawa / Interview by Midori Aida / Photo by Masataka Ishida
 

3/3〜8、丸の内のコットンクラブと横浜のモーションブルーにてスライ&ロビー率いるタクシー・ギャングと共に素晴しいパフォーマンスを見せてくれたビティ・マクリーン。そこで披露された曲は殆どがあの傑作『On Bond Street』からのチューンだったが、既に今回共演しているスラロビと制作した新作も完成済み。リハーサル前の彼にインタビュー。
 
いまだに売れ続けている傑作アルバム『On Bond Street』から早5年。ついにBitty McLeanの新作『Movin' On』が発売された。今回は最強リズム・セクション、Sly & Robbieがプロデュース。より力強く、開放的。ヴィヴィッドな輝きを放つ楽曲がズラリ! シングル盤で既に相性の良さは感じていたけれど、本作でBittyとSly & Robbieのコンビネーションは想像以上にオリジナルな音楽をクリエイト。ケミストリーって奴ですかね。聞けばわかります。
 
その主役となったのは勿論、Bitty。音楽的な基盤、バックボーンは完全にジャマイカ音楽であるBittyですが、イギリスで生まれ育ったシンガーならではの絶妙なバランス感覚がある。ジャマイカ人シンガーとは一味違った独自色がありますよね。時に行間を読ませるかの如くゆったりと歌い(これはタイプは違えど、往年のGregory Isaacsの得意技だが)、時にシャープに弾けてみせる。芸は幅広いが、決して奇をてらわないオーソドックスな歌唱。で、その印象は、常に何をやってもモダン。そんなスマートでいて実はオリジナルなスタイルが身上。本作ではそれに更に磨きがかかっている。
 
「イギリス在住である事は、僕にはアドヴァンテージになっていると思うよ。でも、どんなにプロモーションをしたって聞く人がちゃんと聞いて感じてくれないとヒットしないよね。それと今現在のレゲエ・シーンにおいてダンスホールはとても人気があるけど、ヴォーカリストの数は僕も含めてそんなに沢山はいないって現状があると思う。レゲエにはダブやルーツや自分がやっているような音楽..."ジャマイカン・ソウル"って僕は呼んでいるんだけど...と色々なジャンルがあるからね」
 
「Sly & Robbieと初めて共演したのは確か94年だったかな。ラジオ番組でライヴをした時にSly & Robbieがハウスバンドをやっていて、そこで一緒にやったんだ。実際一緒に仕事をしたのは95年にOtis Reddingのトリビュート・アルバムをレコーディングした時だね。その後が、06年に"Movin' On"を作った時になるんだけど。でも、その間にもロンドンのジャズ・カフェとかに来ていたからそこに挨拶に行ったり、まあ、ずっと交流はあったんだ」
 
さて、今回の新作。大きな特色としてSly & Robbieの往年の名作リズムが多数使用されている事が挙げられる。使われたトラックはDennis Brown"Hold On What You Got"、Ini Kamoze"Trouble You A Trouble Me"、Black Uhuru"Ghess Whos Coming Dinner"、Junior Delgado"Merry Go Round"...スゴイでしょ。どれもタフな事、この上ないセレクション。特にRocky Music"Struggle"のトラックを使った「Daddy's Home」はナイス&クールな絶品。これは世界中でBittyにしか醸し出せないメロウネスも湛えた一曲だ。
 
「前作『On Bond Street』は60、70年代のロックステディで、今回はそこからの進化、80年代のクラッシックっていうのがテーマ。だから、Sly & Robbieの様な当時の素晴しいミュージシャンとやりたかったんだ。トラックを選ぶポイントはね、自分の歌声をそのトラックに乗せる事が想像できるものであるかどうかって事だね。良いトラックは沢山あるけど、自分の歌を乗せる事が想像できるのと、そうでないのがあるからね。やっぱり、自分の歌が乗っているのが想像出来るものでないと良いものは出来ないよね。そこがポイント」
 
勿論、リメイクばかりでなくオリジナルのトラックを使った楽曲も良曲が目白押し。その中ではRobbieのベースが絶好調にドライヴしまくる「Got Let To Go」が素晴しい。この曲ではBitty自らがオルガン演奏を披露。ソリッドなSly & Robbieの演奏に華やかさとスウィング感を加る役割を担っている。他の曲では、Pablo、いや、Peter Toshを彷彿とさせるメロディカまで演奏するなど、ヴォーカル以外でも八面六臂の大活躍。
 
「"So In Love"、"Real Thing"でもオルガンは演奏しているよ。オルガン、メロディカを自ら演奏するっていうのは自分のアイディアだよ。まあ、ちょっと演奏できるって程度で(謙遜していますね。実際は相当の腕前です)、プレイヤーではないよ。演奏し始めたのはちょうどプログラミングとか音楽の勉強をしていた時期だから、88年頃からだね。曲のヴォーカル部分やフックを作る時にドラム、ベース、ピアノ、ギターなんかを使ったりするんだけれど、曲のムードやヴォーカルライン、ヴォーカルフレーズを膨らませる時にはメロディカやオルガンを使って作るんだ」
 
そして、デビュー時からそのセンスには定評のあるカヴァー曲は今回もバッチリ。Leroy Hutsonをスウィートに、Otis Reddingをジェントルに、Stevie Wonderをクールに、更にBobby Womackの名作「You're Welcome, Stop On By」を熱〜くカヴァー。どれもそれぞれにスタイルが違うカヴァー・ヴァージョンなれど、共通するのは今までにないアーバンなサウンドである事。その辺のお手軽カヴァーものとは段違いのレベルですよ。どの曲も良く練られた演奏とアレンジメント。中でも、Leroy Hutson 「So In Love」のカヴァーが良い。サウンドも70年代のあの雰囲気を取り入れていて、中々に"粋"。選ぶ曲が何時も渋いよな(例外もそりゃあ、ありますが)。
 
「いつも色々な曲を買っているし聞いているからね。僕はオールドスクールな曲も捜しているけど、実際にレコード・ショップに行ってチャートやラジオ、テレビはあまり気にせずインディペントなアーティストの曲とか、まだ発掘されていない才能を捜しているんだよ。まあ、実際にカヴァーする曲は50〜70年代の曲が多いけど。でもみんなと一緒で(カヴァーする曲を選ぶポイントは)曲のムードとか、自分に合っているかどうか、そして上手くカヴァー出来そうか、どうかって事だよね」
 
思うに、これほど本当に肩の力が抜けたしなやかなアーティストって珍しいですね。それにオーセンティックってだけじゃない。独特の滑らかさがある。
 
「9才、10才の時から歌っているから僕のスタイルっていうのは自然に発展してきたものなんだ。それからエンジニアとして他のシンガーと仕事していく中で常に色々な事を学んだ事も大きいね。歌手として一番大事にしている事はその曲のムードを捉える事。細かい部分でパーフェクトではないところも出てくるかもしれないけど、自分がちゃんとムードを捉えていれば良い曲ができるんじゃないかな」
 
確かにディテールに拘っていては、オリジナルな音楽をクリエイトする事は難しいかも知れません。更に言うと、直感的にそれを知っていて、かつ並みはずれてバランス感覚が鋭いからBittyの音楽はオリジナルなんですよ。しなやかさとクレヴァーさが絶妙にブレンドされた超クールな楽曲をみなさんに繰り返し楽しんでほしいですね。そして、これからの活躍を更に期待しています。
 
「7月にヨーロッパでフェスに出演するよ。あとは主に今作のプロモーションだね。音楽に関しては自然体を保って今までと変わらない感じでインスピレーションで作っていくよ」
 

"Movin' On"
Bitty McLean
[Victor / VICP-64670]

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