AILIE / ROOTS
Text by Eiko / Photo by Kazushige Nagaya Graphic by Brakichi
"ヤラれてないか、オマエ、ヤラれてないか、オレ...?"レゲエで指差し確認! 前作「風の歌」より約1年、Ailie渾身のミニ・アルバム『Roots』。この時代、世代の代弁者が綴る等身大のリアルなメッセージと7 Heroesの確かなサウンドからなる納得の一枚。
実際、混沌、殺伐。未曾有の金融危機、格差社会、鬱、殺人...。向こうの方じゃ飢餓に内紛、戦争だっつーの...。やってらんない、こんな時代。
「ロスト・ジェネレーションとかって言われて、ド真ん中なんですよね。今、何が起るか分からない位の世の中で。浮かれた事を言っているよりドロップすべき曲があるんじゃないかって。世に投げて行くんなら、ちゃんともう一回向き直さないと意味ないだろって思って。」
前作、メジャー第一段ではかなり極端(!?)なアプローチを見せたが、約一年後に完成させた本作はまさに"Roots"。メッセージは勿論、7 Heroesの生み出すタイトなサウンド、これがまた紛れもなく"Roots"なのだ。
「7 Heroesは、ねらった、というよりは、ねらったかのように揃ったって感じですね。大阪のsound-channelのオーナーでもあるTAIYO君の所で制作をはじめて...色々な人と出会って、とりあえずレコーデ
ィングしようってHAVさんのスタジオに行って、そこでまた色んな人と出会って」
関西ダブ・シーンのパイオニアHAV(エンジニア/Soul Fire)をはじめ、bAttA(Guitar/Green Green)、Bun Bun the MC(MC/1★狂)ら豪華浪花レゲエの名手等によって構成される7 Heroes。よくある原点回帰アルバムかと思わせるタイトルから疑心暗鬼になりつつ、予想を超えたバンド・メンバー達が生み出すサウンドの粋な裏切りに大いに驚き...何はともあれ、ルーツ・レゲエが心地好い。
「このアルバムの起点になった曲で。Bun Bun さんの名曲。制作してゆく過程で、方向性や色々考え込んでいた時に聴いて、すごくフィットしたというか。何かに突き当たっている人に届く良い曲だと思って。純粋に凄く惚れた、シビれた曲。より多くの人に聴いてほしい」
奇才の名曲「100点満点」のアコースティックからはじまり、意思表明を兼ねたという「歩き続ける」(コーラス Ran & Big Mama /BAGDAD CAFE THE trench town、ナイスです)、Don't Worry! 実に、らしい、「心配ない」、I Continually時代から歌う「Sky High」はビンギととTAIYO REMIXの2ヴァージョンを収録。ライヴ感満点一発取りの「Master Blaster」、「歩き続ける(HAV DUB MIX)」の燻し銀な技に一本。
「今の思いを隠したり変化させたりせずにどこまで向き合えるか。自分等にとってアツい思いを込めて作ったんで、そこに共感してもらったり、何かを感じたり思ったりしてもらえたらいいですね」
宣材写真のツルッとしたオデコを見ていたら...卵、が思い浮かんだ。卵と壁、エルサレム賞授賞式での村上春樹氏のあのメッセージを思い出す。卵額を前に再確認。そう、レゲエは卵の音楽だってコト。『Roots』を聴きながら思ったコト。
"Roots"
Ailie
[Geneon Universal / GNCL-1201]