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MUNGA / BAD FROM Mi BORN
  
Text by Natsuki Toi / Photo by Tsutomu Tomii
 

“ギャングスタ・ラス”…この実にアンビバレントな異名こそが、この男そのものを、そして今の“ジャマイカ”を表象しているとさえ言える、時代の寵児ムンガ・オノレブル。待望のデビュー盤をドロップした彼の生声を交えつつ、全貌に迫ってみよう。
 
ジャマイカはセント・メアリー教区出身、生粋のカントリー・ボーイが音楽を志し、キングストンへ出てハスリング生活。今も昔もかわらない映画『ハーダー・ゼイ・カム』の世界を経て、97年「Red Label」というリカー・メイカー主催のタレント・コンテストで初めてステージに上がり、99年からはケイプルトンの取り巻きの一人として旗持ちなどをしつつ、DJのスキル、音楽ビジネスなどを学ぶ。しかし、師シャンゴから学んだ最も大切な事は、「謙虚さ、倫理、そして寛容さ」だという。
 
 05年、Don Corleonレーベルの“Sweat”リディムに乗って「セラーーシアーイ」と叫びタフな喉を鳴らしながら、畳み掛けるライムで、「バッドでキレキレ、ルードな俺様が一番!」とバッドマン・アンセムでボス。以降も勢いの止まらないダン製作のビッグ・リディム“High Altitude”“Foundation” “Heavenly” “Raging Bull” “Artillery”等で立て続けにヒットを生み出し、07年にはその人気も不動のものに。
 
そしてようやく届けられたファーストはハズシ曲なし、「自分を丸ごと表現するようなスゴイものを作れた」という言葉に自信がみなぎる作品となった。
 
 ところでこの男が、うごめく大群の中でなぜ光ったのか考えてみると、明らかに傑出していたのがその“スタイル”だろう。ラスタを公言しながら、ターバンではなくニューエラのキャップにパーカをさらりと羽織り、Diorのグラサンでいかにもヤーディに自分を演出。ラスタとしての敬虔な内面と、外見とのアンビバレントは彼のリリックにも顕著で、ハイレ・セラシエを崇めながら、銃をぶっ放すと脅し、セックスに強い自分をアピールする。
 
 “ギャングスタ・ラス”という異名に、生粋のラスタファリアン達がいい顔をするわけがもちろんなく、「誤表象、商業目的の迷惑な乱用」と非難の的にも。でもこの言葉ほど今のジャマイカ、ダンスホール世代を巧く現す言葉はないのではないだろうか?
 
 ボブ・マーリー世代を親に持つ彼らは、ゲットー・ライフの中で生まれた時からラスタファリアンの親族身内を身近に感じながら育つので、ある意味ではまだジャマイカの保守層からは怪訝な顔をされる存在であるラスタの思想を、固定観念無しにとても自然な形で受け入れている。そしてそんな彼らの憧れのアイドルはビーニではなくボウンティ・キラーだった。貧困の中でどうにか成長しても、まわりには銃が溢れ、ガン・ショットを聞くたびに緊張し、兄弟や友達は殺され、気づけば自分も銃を握っている…のかもしれない。
 
 傍目に見れば、それはギャングスタに違いない様相でありつつも、心根にはラスタファリアンとしての教えが深々と根付いているというような。ムンガ本人はどのように考えているのかというと…
 
 「革命や反逆、平和や信仰といった俺の中にあるものをただ口にしたのさ。俺のライフ・スタイルはラスタだし、俺の音楽はギャングスタのような強さ、タフさ、力がある。ゲットーで生まれて、もちろんハードコアでバッドな道も歩んできたけど、ラスタという生き方に出会って世界が開け、変われたんだ。その俺の感情やイメージや人間性を表すベストな言葉が“ギャングスタ・ラス”というわけだ」
 
 この彼のスタイルの打ち出し方に、多くのゲットー・ピープルが賛同したのは想像に難くない。ここまで注目、支持されたことについては、
「とても感謝している。ハイレ・セラシアイのご加護だな。全てのインスピレーションは神から授かるんだ」と謙虚だ。
 
 またあえて付け加えるなら、私たち日本人にとって馴染みのないギャングスタというのは、ジャマイカのゲットー・ピープル達にとってはただのヴァイオレンス集団という側面だけではなく、時に生活を支えてくれるビッグ・ドンであり、分け与えることのできるもっともチャリタブルな慈悲深いビッグ・マンとしてリスペクトされる存在でもあり、ムンガ自身もそういった側面を特に強調しているようだ。
 
 それから最近音楽業界を吹き荒れているヴォコーダー使いのオート・チューンを、ダンスホールで最初にボスさせたのはムンガだろう。それもT-Painの影響ではなく、インスピレーションは「ブーツィー・コリンズから受けた」と答えるところが渋い。2Pac、ビギー、Jay-Z、Nas、Lil Wayeらのヒップホップももちろん愛聴しているほか、ロックやヘヴィーメタル・ロックも好きだとか。
 
 トレンドの匂いをすばやく嗅ぎつけ、人々の求めているものを一番新しい形で提示してみせるのがムンガ・スタイルだ。
 
 一度は“ステージ上での乱闘”という失態を犯したものの、決してリリック上を超えた争いを好まず、各インタビューでも敵とされるDJの名前を口にするのを拒み、Alliance加入の誘いもやんわりと断り、ますますリリック戦争が盛り上がる「Sting」には2年連続出演を拒否している姿勢、そしてアルバム最終曲「Prayer」にこそムンガの本質を見るような気もする。
 
 「オノレブル(=Honorable)」という言葉は実に多様な意味があり、「正しい、正直な、高潔な、威厳のある、非凡、高貴、優秀な、傑出した、輝かしい、立派」などこの世の全ての褒め言葉をひとつの単語であわらしている。こんな名前をつけてしまう男っていくらなんでも、なかなかいない。今後のプランは?
 
 「基本的にはラスタ・ライフだ。音楽についていえばもっと音楽性を広げて、ナンバー・ワンになりたいね。次のアルバムもすぐ出したいし、どんどんレコーディングもするし、人生も音楽も追及したいよ」


 

"Bad From Mi Born"
Munga Honourable
[コヤシ / KHCD-015]

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