Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
Mike Brooks
Greetings Friends,
●僕はAlton Ellisの訃報を10月にかかってきたMike Brooksからの電話で知った。Mikeはその電話でいくつかのコンピレーション・アルバムをリリースする計画も伝えてくれた。その中にはBlacka MorwellやJah Lloydの他に彼自身の作品もあり、それらは全てAltonの7インチ「Got A Letter」をカットしたMikeのTeamsレーベルからリリース予定だそうだ。
●Beres Hammondが最新作『A Moment In Time』のプロモーションを兼ねたUKツアーを開始した。僕のお気に入りのヴォーカリストをステージで観ることができるのはうれしいのだが、Beresの最近のアルバムの出来にはあまり感心できない。彼は『Love Has No Boundaries』をはじめ、彼の実力が100%発揮されているとは到底思えないアルバムばかりを発表し、ファンを裏切り続けているのだ。『A Moment In Time』には“酷い”曲は入っていない一方、素晴らしいと思える曲もない。今のBeresは気が緩んでしまい、ソング・ライティングを単なるルーティーンにしてしまった結果、彼独自の良さを忘れてしまったかのように思える。『In Control』『Lifetime Guarantee』『Love From A Distance』など、彼がかつて生み出した傑作はエキサイティングで、新鮮味に溢れ、パワーが漲っていたものだ。それらは聴いていて鳥肌が立つくらいに情熱的なものばかりだった。Beresは最近のショーでヴォーカリストとしての実力は証明しているが、アーティストとしての価値は、それ以下でもそれ以上でもない。新たなプロダクション・チームによって彼の眠っている才能を再度目覚めさせる時が来たのかもしれない。
●Soul Jazzは『Dynamite!』シリーズや 質の高いStudio Oneのコンピレーションで知られているレーベルであり、雑誌などで紹介されることが多いのも前述のシリーズのものがほとんどだ。2008年にThe Ragga Twins のアルバムが同レーベルからリリースされたが、ほとんど話題にならなかったのもわかる気がする。The Ragga TwinsはFlinty BadmanとDemon RockersによるユニットでEast LondonのUnity Soundでマイクを握っていた。そして1980年代後半に同サウンドのレーベルからデビューし、Shut Up And Danceのプロダクション・クルーと短い期間活動を共にした。そのクルーの影響もあり、彼らは初期UKデジタル・レゲエの領域から抜け出して、ダンスホール、ヒップホップ、そしてアシッド・ハウスがブレンドした独自のスタイルを確立した。残念なことに、時代が彼らの感性についていけなかったのだろうか、彼らがヒットに恵まれることはなかった。しかし、今回Soul Jazzからリリースされた『Step Out』には彼らの栄光の日々がしっかりと記録されている。彼らの情熱が詰まった1枚、聴いてみてほしい。
Beres Hammond
●ジャマイカ製の7インチの流通量が減っていることはレゲエ業界では周知の事実だ。しかし、今でもアナログ・レコードの伝統(Mafia & Fluxyなどのインディーズ・レーベルを除く)を頑なに守っているレーベルがフランスにある。パリにあるPatate Recordsだ。同社はTena Stelin、Jah Walton(aka Joseph Cotton)や、Jah Masonのシリーズを開始したばかりだし、EstelleやUsherのレゲエ・ミックスもリリースしている。PatateがリリースするタイトルはLP・CDともそれほど多くはないが、どれも聴く価値のあるものばかりだ。Rod Taylorのセカンド・コンピレーション『Garden Of Eden』も例外ではない。www.patate-records.com又はmyspace. com/pataterecords で是非チェックしてもらいたい。
●ヴェテランStudio Oneヴォーカリスト、Horace Andyの新作といえばクオリティの高いものを期待してしまう。彼は1980年代中期から後期にかけての安っぽい打ち込みリズムや、低俗なダンスホールのリリックから随分と前に離脱しており、ライヴではいつも素晴らしいパフォーマンスをみせてくれる。また、Massive Attackの作品にフィーチャーされたことにより、彼の名はレゲエを聴かなかったリスナーにも広まった。その上、最近リリースしたSly & Robbieとのアルバムは、ルーツ・アーティストとしての地位を確固たるものにもしている。では、なぜこのタイミングで最新作『On Tour』がTrojanから発表されたのだろうか? 『On Tour』は既にリリースされた曲を集めたコンピレーションでもなく、タイトルから連想されるようなライヴ・アルバムでもない。実はこのアルバム、Horaceが一部のボンゴやギターを除いた全ての楽器を彼自身が弾き、ジャマイカで録音したセルフ・プロデュース作なのだ。ミュージシャン同士のかけひきによりエキサイティングになるというものが音楽というものだ。それに、曲作りではアーティスト以外のプロデューサーが加わることで音楽を客観的に判断することも重要ではないだろうか。Wackiesのようなヘヴィなサウンドを再現したところなど、本作の全てが悪いわけではない。しかし、全曲があまりにもコンピューターに依存していることが明白であり、そのように聴こえないように努力したこともわかってしまうところも辛い。彼が80年代にJammysからリリースしたものと比較して、『On Tour』は何が収録されているかわからいデザインのジャケットを差し引いても、Horaceの“最”駄作ではないだろう。彼が『On Tour』で披露したどんな楽器でも弾きこなす器用さは評価に値すると思うが、彼の長いキャリアの指標となるようなアルバムではない。もう少し制作費に余裕があり外部のプロデューサーが参加していたならば、もっといいアルバムになったことだろう。
Till Next Time, Take Care..........
(訳/Masaaki Otsuka)