(U KNOW)What the deal is
なんとも奇跡的な11月だが、初の黒人大統領がアメリカに誕生した。古くはジェシー・ジャクソンからトライがはじまった訳だが、その例に漏れずヒップホップが長い期間に渡って貢献したのは言うまでもない。ただ、長年アメリカの片隅に住み、すっかりシニカルになってしまった私見では、上手いヤツを民主党も見つけたものだというものも正直言っておく。しかしながら、普段投票しない層が連帯したり、すっかりイラク戦争や不況で疲労しているアメリカや世界に希望を与えたのは過言ではない?
●今月の釈明
この原稿を書いている今日に40歳の誕生日を迎えているはずのオールド・ダ−ティの遺族が、沈黙を破った。2004年に処方箋の痛み止めとコケインによるオーヴァー・ドーズの結果、心不全で他界した彼の母親と祖母が、これまでの一切の悪い噂を全否定した。その内容は、ダーティ死亡時に結婚していたアイスリーン・ジョーンズが、ダーティが他にもうけた子供に遺産を分配していないなどという悪質なものだが、全くの根拠がない噂と全面的に否定するステートメントを正式に発表した。なぜこのタイミングかと言うと、ジェイミー・ロウなるジャーナリストによる非公式のダーティの伝記、『ディギン・ダーティ』が近々出版される運びとなっており、こういった中傷的な内容も含まれているらしい。双方は、ファンにこの伝記の不買運動も呼びかけており、残された遺族と子供達の立場を考えて欲しいともコメントしている。更にアイスリーンによって差し止めされていたとされるロッカフェラでレコーディングしていたダーティの遺作も、コッチ・レコードによって発売されると発表された?
●今月のアニヴァーサリー
一昔は、ヒップホップの聖地であったNYの要とも言える存在だったズールー・ネイションの35周年のイヴェントが各地で行われた。11/6のブレイキング、DJバトルを皮切りに、ブロンクスのボーラーズでは、キース・マリー、ビズ・マーキー、リン・キュー、K7(!)、フリーダム・ウィリアムス(!!)などによるライヴ・パフォーマンス、翌日は総長、バンバータによるDJ、チャックD、ジャジー・ジェイ、DMC、ソウル・ソニック・フォース、EPMD、DJスクラッチ、フィアレス4、トニー・トーン、シオドロなどのライヴがブッシュウィックは、ブルックリンで行われた。尚、セレブレーションは、パリ、ロンドンにも及び、ヒップホップの世界的な影響力を誇示した?
●今月のショウ
11/6、大阪はFANJ-twiceで、京都代表のアナーキーのソロ・ライヴ・ツアーの千秋楽が行われた。主に新作、『ドリーム&ドラマ』からの曲と、旧作のメドレーで構成されたストイックなショウで、ゲストにティナ、ラフ・ネック、Ryuzoが登場し、地元さながらの盛り上げを見せた。この模様は、いずれDVD化される予定となっており、この伝説となるツアーを見逃してしまったあなたも、この新しい才能を確認できる?
●今月のレジェンド
そのアナーキーも2度出演を果たしているダウンタウンの長寿企画、「End Of Weak」に大物が10/26に集結した。最近では殆どTVドラマの刑事などでお茶の間でもおなじみのアイスT、さらにソロに精力的な活動を見せているDMC、そして沈黙していたスムース・ダ・ハスラーなどがゲスト出演し、若手MC達を啓蒙した?
●今月のショウ2
しばらくの沈黙を破ったナイスとすすむじゃなくて、スムースが、クローズ目前のニッティング・ファクトリーで久々のソロ・ライヴを行った。ジャジー・ジェイがDJを務め、ダウンタウンにアップタウンがやってきたという80年代を彷佛とさせるヴァイブだった。同じ日にこちらは、ライヴ・サーキットで着実に活動を続け、ヒスパニック・シーンでは絶大なる人気を誇るサイプレス・ヒルがノキア・シアターでショウを敢行。移り気なヒップホップ・シーンから見ると羨ましいばかりの忠誠心を持ったファンが中心で、彼等がこれからも何年にも渡ってサポートを続けるというのがありありと分かるライヴだった?
●今月の写真
京都ウーピーズにて、般若「ドクタートーキョーツアー」の楽屋の1コマ。ラボーノ、筆者、Young Berry(Photo by Pex Yamada)
沼田 充司
DJ/プロデューサー。 レーベル<ブダフェスト>主宰。 雑誌『ブラスト』でも執筆中。 ニューヨーク在住。 [Photo by Tiger]