I A MOMENT IN TIME / BERES HAMMOND
[VP / HARMONY HOUSE / VPCD1824 / 輸入盤]
日本の若者が歌手歴30年以上という歌手の曲を喜んで聴くだろうか? せいぜい永ちゃんか桑田ぐらいじゃないのかな。さてジャマイカで歌手歴30年を誇るベレスの新作は、隅々までグッド・チューンが詰まっていて、オヤジたちだけが喜ぶものとはかなりかけ離れたバチっとした内容。もしかしたら近作ではベストかもしれない。DVDには07年の「Sumfest」の模様が拝める。これがまた素晴しいライヴなのだ。(大場俊明)
INNA DE YARD VOL.2 / EARL "CHINNA" SMITH & IDRENS
[MAKASAOUND / INNA DE YARD / IDYCD010 / 輸入盤]
アコースティック・セッション・シリーズ最新作。チナ・スミスのマイ・ホームに集う仲間達と音を紡ぐ様子は変らない。流行とは無縁、ミュージシャン達が円となって生まれた木のレゲエ、やはり格別だ。源の擦れる音色に酔いしれ、ヴェテラン・シンガーの鍛えた喉に聴き惚れる。時が経つのを忘れてしまう森の中、今回で10作目。旅から帰ってきて寛げる我が家。マイティ・ダイアモンズ参加曲がしみたなあ。(磯野カツオ)
SONGS FROM THE HOLY MOUNTAIN / ALPHA & OMEGA feat. JONAH DAN, PAUL FOX & DAN I
[ALPHA & OMEGA / A&O2009 / 輸入盤]
約1年ぶりとなる新作は、初期作品を彷彿とさせるミックスが印象的で近年の作品とは一味違う。音を紡ぐ事で表現してきた彼らの独特の世界の源流は揺るぎなく、だからこそ進化し続けている。古くからのファンにとってはニシカのヴォーカルがFeat.されているのも嬉しいはず。ポール・フォックスの90年代初期ビッグ・チューン「Writing On The Wall」のリメイクも聴き所の一つ。ヴォーカル10曲に各ダブ・テイク収録。(楳原豊人)
PAST AND PRESENT / DANNY RED
[COUSINS / COUDCD478 / 輸入盤]
本誌読者には馴染みは薄いが、93年にコロンビアよりマナッサやマッド・プロフェッサー等のプロデュースで作品をリリースしているUKルーツ・ファンには人気の実力派シンガー。グラディエイターズ「Jah Works」オケのリメイクやリー・ペリーのプロデュースによる名曲「Open The Gate」のカヴァー等を収録。UKからはガッシーP、マナッサ、ジャマイカからスティクリ、マイキー・ベネット等がリディム制作で参加。(楳原豊人)
FROM ZION TO JAMDOWN / V.A.
[IRIE ITES / IICD06 / 輸入盤]
フランスのIrie Itesが2005〜08年にリリースしたシングルと未発表音源を含む全40曲収録。ダンスホールからルーツまで全てのレゲエ・ファンに良質な作品を届けようとする姿勢が伝わる。それが人気の所以だろう。勢いのあるステッパー“Border Line”オケを始め、B・スピア「Rocking Time」オケ等、リディムは自由自在。アーティストもルシアーノを筆頭とするJA勢と共に地元からも多数起用されていて個性豊か。(楳原豊人)
STRICTLY THE BEST VOL.39 / V.A.
[Pヴァイン / SHANACHIE / PCD-17242/5 / 輸入盤国内仕様]
冬の大定番“S.T.B”シリーズも本作で39作目となるのだが、ジャケットは見ての通り、Vol. 27〜30(01年&02年作品)を担当したMurasaki画伯を再び起用。最近はDJ編とシンガー編の2種類リリースしていたが、今回はより一層収録内容を厳選し1枚で完結してきた。その分、濃度アップで首をひねりたくなる曲は皆無。つまり本作収録曲が本年後半の王道だった訳で、チェックしない訳にはいかない作品という事です。(大場俊明)
センスラ/ドン・セガンド
[スカ・イン・ザ・ワールド / SIWI107 / 国内盤]
プエルトリコのスカ・バンドです。パンチの効いた女性ヴォーカルが魅力。切れ味鋭いサウンドにのせる艶歌は情熱の花。オールドタイプのスカを基調としているが、メロディ、言葉の響きも含め、その土地でしか出せない風情を感じる。カツオの脳裏にラテン・ダンスの光景。全体に漂う熱き血潮はストレート一本勝負で小細工なしだよ。触れると皆さんのスカ魂に火が点くと思うぜ。身体が踊れて胸が躍る推薦盤さ。(磯野カツオ)
ぼくにできること/今野英明
[ダイレクト・インパクト / DIR-1009 / 国内盤]
ウクレレ片手に日本全国音楽行脚といったスタイルもすっかり板についてきた今野英明の新作。だが本作はそんな旅の合間に出会った気の合ったミュージシャンたちを“自分のバンド”に引き入れレコーディングした作品。結果、彼のヌケが良いようでひと癖ある歌声と、軽やかだが粘っこいバンド演奏がばっちりフィットし、どの曲も一体感があって気持ち良い。このごった煮感こそが今の彼そのものなんだろう。(大場俊明)
クール・ヴァイブス〜マコト・カルカヤズ・カヴァー・セレクションズ/カルカヤマコト
[ジェネオン / GNCL-1182 / 国内盤]
ジャケットに家族写真を使っているが、それに対して“ほのぼの感”ではなく“血”を感じてしまうのは僕だけではないと思うのだが…。本作はタイトル通り彼女が愛して止まないレゲエでもお馴染みのチューンをカヴァーしたもの。ジャマイカ一丁目Riddimが奏でるストレートなルーツ・リディムにケチをつけるところはないから、あとは彼女特有のねっとりとした唱法とこの擦れ気味のロリ声が好きかどうかだろう。(大場俊明)
ワンダフル・スマイル/V.A.
[スカ・イン・ザ・ワールド / SIWI106 / 国内盤]
テーマは世界の現役選手で、しかも全て女性ヴォーカル、更にスカでございます。思わず自分の頬をつねってみた。あら、夢じゃなかったよ。銀盤にはジャズ、カリプソ、スウィング、アコースティック、ドゥーワップなど心弾む要素にスカときらめきがミックスされてまっせ。1960年代のガール・ポップス全盛期やミリー「マイ・ボーイ・ロリポップ」を彷彿とさせる微笑倍増で活気溢れるコンッピレーション登場や。(磯野カツオ)
ストリクトリー・ダンシング・ムード VOL.1〜フューチャー・ラガ・セッションズ〜/V.A.
[パート2スタイル / P2SCD-002 / 国内盤]
Rub-A-Dub Marketが提唱し続けている“異形レゲエ”を地でいくようなバンドやユニットがこぞって参加したアルバム。ジャマイカのレゲエ・シーンが微動だもしないほど野太いからこそこうした異形もどんどん増えるのであって、それは極めて健全。だから今までこうしたコンピが余りなかったのが不思議なくらいだ。土台と心意気さえガッチリしていれば、あとは自由。そのレゲエ的精神がどの曲からも伝わってくる。(大場俊明)
CO-TA-TUレゲエ〜ダンスホール・チル・アウト/V.A.
[ヴィレッジ・ミュージック / VRCL-5038 / 国内盤]
この時期、ぴったりの…と言っていいんでしょうね、大阪のカジノ891がセレクションしたタイトル通りのあったかくほんわかしたコンピレーション。ミンミ「アイの実」やムーミン「Found It」といった本作のテーマには必要不可欠だった既発の曲もあるが、ニュー・レコーディング曲も多数収録。こちらのディレクションも行き届いており、統一感は失われていない。全編ピースフルな空気が漂っています。(大場俊明)
イヤー・オブ・ザ・ジェントルマン/ニーヨ
[ユニバーサル/UICD-905 / 国内盤]
シーン待望の2作目。先行シングル「Closer」は四つ打ちをベースとした、いかにもトレンディな作風だったが、アルバムの方は、前作でココロを鷲_みにされたファンの期待を裏切らない、良いメロと歌声が詰まった大充実作となった。盟友スターゲイトらとの共同作業でも、決して真っ黒ではないながら、確実に時流を捉えた仕事ぶりを披露し、どこを切ってもニーヨ印な統一感を誇っている。これぞポップの真髄。(石澤伸行)
ニュー・マン/ジョー
[BMG/BVCP-21623/ 国内盤]
7作目の新作は、ジャイヴを移籍しキダーと組んでの新たな船出に。昨今のメロディ復権の機運は、彼にとってフォローと言える半面、気が付けば彼の周りには強力なライバルも多数。そんな中、彼はしなやかな歌声に大らかな表現力を加え、どっしりとした充実感を湛えた作品集を仕上げてきた。ロドニーを始めとするダークチャイルド一派やブライアン・M・コックスらの筆も、いつも以上に力がこもっているような。(石澤伸行)
ドール・ドミネーション/プッシーキャット・ドールズ
[ユニバーサル/UICS-9096 / 国内盤]
3年ぶりの2作目。ロドニー・ジャーキンス手掛けるリード曲「When I Grow Up」がヒット済みの彼女たちだが、アルバムの方も、ポロウ・ダ・ドン、ティンバランドらが参戦することで、ポップながらハイパーな勢いに溢れた強力盤に。ソロ・デビューが予定されているニコールを始め、お姉さん方の堂々たるパフォーミングにも更に磨きがかかり、ニーヨが提供するミッド曲では、豊かな表現力でじっくり聴かせる。(石澤伸行)
愛すること、生きること。/エリック・ベネイ
[ワーナー/WPCR-13105 / 国内盤]
3年ぶりの4作目は、デビュー以来の盟友ふたりとのタッグを組み直した原点回帰作と相成った。通底するのは70's的躍動感。重量感たっぷりのリズム隊に、ホーンが絡むといったライヴ感覚溢れるバッキングを従え、珠玉の旋律を伸びやかに歌う彼の姿には、思わずニンマリだ。80's的アプローチも効果的だし、バラード曲ではテリー・デクスターと再共演。キース・クラウチの参加曲もあったりで、もう大満足!(石澤伸行)
ソランジュ&ザ・ハドリー・ストリート・ドリームス/ソランジュ
[ユニバーサル/UICF-1107 / 国内盤]
ビヨンセの実妹によるセカンド作。テーマを“ソウル・ポップ”に据えたとの本人の言葉通り、全編に流れるのは60〜70年代のR&B的ヴィンテージ感。音と歌が躍動する様は、まさに当時のガール・グループが放っていたそれだ。ただし、そこにロックやエレクトロのテイストを注入していく際の巧みな手管が、本作の肝だろう。ネプチューンズやマーク・ロンソンらの掌の上で踊る彼女の姿が、ソー・キュート。(石澤伸行)
マイ・シークレット/ロン・パターソン
[トイズファクトリー/TFCK-87448 / 国内盤]
LA出身の男性シンガーによる新作。これは4年前のデビュー盤と2年前のセカンド作からの選り抜き曲で構成する日本独自の企画盤だ。29歳の彼は既に芸歴20年間近。そんなキャリアの積み重ねは、様々なタイプのトラックに器用に順応するフレキシビリティに感じられる。ストリートを意識したダーティ・ビートやトロみの利いたメロウ曲でみせる繊細ながら芯を感じさせるヴォーカルは、聴く者を飽きさせない。(石澤伸行)
ROOTS & WIRE / DEADBEAT
[WAGON REPAIR / WAG046CD / 輸入盤]
ベルリンのエレクトロ〜ダブ名門~Scapeからのリリースでも知られるカナダの異才。オープニングとエンディングにはTikimanとしても知られるレゲエ・シンガーPaul St Hilaireが参加。ナイヤビンギとブルーズが同居した、ダブステップの新たな可能性を示すオープニングから、メロディカとヴォーカルがポジティヴなメロディを聴かせるラストまでほぼノンストップで進行する、まるで壮大な映画のように物語性ある世界。(飯島直樹)
NOMAD / HEADHUNTER
[TEMPA / TEMPACD014 / 輸入盤]
ブリストルのダブステップ・クルーH.E.N.C.Hの若頭待望のアルバムが名門Tempaから。ラップトップを抱えタイトルさながら各地を放浪しながら制作された本作は、昨年終わり頃から彼は勿論シーンとしても進化を遂げているテッキーなダブ・サウンドが展開されている。ブリストルを出発点にベルリンとデトロイトを繋いてしまった、もはやダブステップというカテゴリーを必要としない、今後の指標となりうる傑作。(飯島直樹)
CONTINENTAL ADAPTOR / THE ZEN HUSSIES
[MUSIQUE DADA / ZHCD03 / 輸入盤]
ブリストルの7人組の3枚目。ジャズ〜ジャイヴを軸に、ブルーズそしてジプシーや2Toneの香りも強烈に感じさせる音にルックス。ヴォーカルの酔いどれ具合も最高だし、ホーン3菅のアンサンブルも素晴らしい。Gaz Mayallのイヴェントにも出演している……というのが最高に「ワカる!」音。日本では、エゴ・ラッピンがバンドで、クボタタケシがDJで表現している感覚を、あの街のバンドが発信しているのも驚嘆で共感。(飯島直樹)
BO MARLEY vs. DISRUPT / BO MARLEY vs. DISRUPT
[JAHTARI / JTRCD02 / 輸入盤]
ドイツのライプチヒを拠点に、80年代のコンピュータライズド革命をダブステップ以降の現代に継承するレーベルJahtari。本作はデンマークの4人組Bo Marley(何という…)とレーベル主宰の一人Disruptとのコラボ。メンバーのBenja(また!)によるレトロPC“アミガ”を駆使したトラックを、ヴォーカル、Disruptによるダブと合わせ収録。当然ながら単に回顧に終わらない、異形ダブの別の進化形を聴かせてくれる。(飯島直樹)
アフター・ジ・アント・ファイト/レイチェル・ダッド
[エンジェルズ・エッグ / AECD051D / 国内盤]
08年をほぼ丸ごと日本で生活しているブリストルの女性シンガー・ソングライター。本作はフェスの為に帰国した3ヶ月間で完成させたもの。ギター、バンジョー、ピアノの弾き語りに加え、現代音楽的な響きも持ったバンド・サウンドにも挑戦。“Lost in Trans-lation”を地で行った日本滞在での経験や想いも込められた、四季の様に彩り豊かに移ろう音世界で、文字通りの“来日記念盤”と言える。ライヴも必見。(飯島直樹)
BLUE LIGHT 〜南の島の唄〜 / KOYO
[ルーディメンツ / ワンブロウ / RMT-CD013 / 国内盤]
バンドZeroのリーダーとして、またTrial ProductionやBlast Headなど多くの作品/ライヴに参加しているサックス奏者Koyoのソロ・アルバム。奄美大島で生まれ現在は沖縄に暮らす彼のルーツとライフスタイルが、NYや東京での経験があったからこその説得力で“おとだま”となって響く。東京では感じることができない緩やかな時間の流れと、ロハス指向なだけでは生まれない鋭さが同居するナチュラル・ミュージック。(飯島直樹)