Di VIBES 2008 / DJ BANA
Text by Hajime Oishi / Photo by Hiroto SakaguchI
その年のビッグ・チューンをコンパイルしたお馴染み『Di Vibes』シリーズ。ジャパニーズ・ダンスホール・シーン1年の総決算とも言える今作、コンパイルを手掛けているのはこちらもお馴染みのDJ Banaだ。その内容および来年の展望について、彼に話を訊いた。
ジャパニーズ・ダンスホール・シーンにとって、2008年はどんな年だったのか。きっと読者の皆さんにも心に残るチューンやダンスがあったはずだし、色々と考えさせられたこともあったかもしれない。そんなこの1年を振り返るうえでチェックしておきたいのが、毎年恒例のコンピ・シリーズ『Di Vibes』だ(紙資料には“日本盤Reggae Gold”とあるが、その言葉に偽りはないと思う)。「日本人のレゲエを広く知ってもらい、ここからアーティストのアルバムなどへのひとつの懸け橋になるよう心掛けています」と話すのは、コンパイルを担当したDJ Bana。彼は今年のシーンの特色を「直球なものが増えたように思います。あとRebelな曲も増えたような感じがします」としたうえで、今回のセレクションについてこうも話す。
「色々な雰囲気の選曲をしました。現場、Ladies、Unity、友情、世の中、2008年のキーワード的なチューン……ここ最近の日本の現状が見える曲や、もろラガなものが以前よりも増したセレクションになってます」
machacoの「Precious」から幕を開けるDisc-1は、Bear ManやPushim、Micky Rich、笑連隊、H-Man、MoominやNanjaman & Boxer Kidらのミディアムを中心に構成。かたやDisc-2は「僕が一番得意な表現方法だし、原点でもある」というラジオ番組形式となっていて、こちらにはRyo the SkywalkerやVader & Arm Strongのジョグリンもたっぷり収録。アルバム・タイトルを丁寧に説明していくBanaのトークを挟み込みながら2008年のビッグ・チューンを次々と紹介していくこちらは、良質なミックスCDとして楽しめるはずだ。
注目したいのは、唯一の新録曲であるTak-Zの「空も飛べるはず」。スピッツによるお馴染みの名曲を今年大躍進を遂げたTak-Zがリメイクしたこの曲には超ファウンデーション・リディム“Far East”が使われているのだが、かのスティーリー&クリーヴィがTak-Zのキーに合わせて制作を行い、彼らがミックスダウンまで手掛けるという凝りよう。単なるJ-Popカヴァーとはひと味違う仕上がりとなっている。
「今年はいつもと違うことをしたい--そんな思いと、昔、僕がレゲエに食らったいくつかのことを一気にできるのは“Far East”リディムでのカヴァーだなと。昔からあるオケで、今までに何曲がこれに乗っかったか分からないぐらい沢山の曲があるのに飽きがこないという、レゲエの特徴のひとつを分かりやすく感じてもらいたかったんです」
長年シーンを見つめてきたBana。彼からのメッセージもやんわりと込められているのが今回の特徴でもあるわけだが(それが何なのかは、今作を実際に聴いて確かめてほしい)、そんな彼に“2009年の展望”も訊いておこう。
「2009年、これから出会えるチューンが楽しみで仕方ないです。そして、ニュー・チューンもそうだけど、昔のチューンとの新たな出会いが楽しみです。レゲエ・シーン的には、こだわりつつ、囚われないでほしい。日本人だけとか、昔のだけとか、ダンス・チューンだけとか。除外するのは簡単なこと。楽しめるものも楽しめなくなるんじゃないかなと。個人的経験から、そう思います」
"Di Vibes〜Japanese Reggae Selection 2008"
Selected & Mixed by DJ Bana
[Ki/oon / KSCL-1336-7]