BYRON LEE
R.I.P.
Text by Yoshihiro "Gucci" Yamaguchi / Photo by VP Records
Jamaica's No.1 Band“Byron Lee & The Dragonaires”のバン・マス、そしてジャマイカン・ミュージックに於ける多大なる功労者、バイロン・リー氏逝く。
まぁ、時勢と言ってしまえばそれまでだが、アルトン・エリス氏然り、最近、ジャマイカン・ミュージックの黎明期に活躍したアーティスト達が逝去している。そして11/4、アーティストしてばかりでなく、多方面でジャマイカン・ミュージックの発展に貢献したバイロン・リー氏が癌により他界した。期しくも米VPレコーズのカレンダー、11月の写真をザ・ドラゴネアーズ結成50周年を迎えたバイロン・リー氏が満面の笑みで飾っているのが、何だか運命的にも思えてしまうのだが…。
バイロン・リー氏と言えばベーシスト、彼がバンド・マスターとして率いるビッグ・バンド、バイロン・リー&ザ・ドラゴネアーズ、そしてジャマイカに於ける二大レコード・ディストリビューターのひとつ、スタジオ、レーベルでもある “Dynamic Sounds”の創業者、毎年、ジャマイカで行われるフェスティバルの主催者と様々な活動を通し、ジャマイカン・ミュージックの発展への貢献度が高い人物である。
バイロン・リー&ザ・ドラゴネアーズは1957年にバイロン・リー 氏がカール・ブラディ氏と結成したビッグ・バンド、その活動は“Jamaica's No.1 Band”の称号が示す様に当時のスカやロック・ステディのみならずジャマイカン・ミュージックを基調としたムード音楽やラテン、R&B、ポップスなど、あらゆるジャンルの楽曲を演奏し、ホテル付きの箱バンの様であった。余談だが1961年の映画『007』シリーズ第1作目 『Dr. No』ではジャマイカ・ヒルトン・ホテル(現ペガサス・ホテル)のレストランでのシーンにドラゴネアーズがほんのちょっとだけだが登場している。また、ドラゴネアーズはジャマイカ国外での演奏も数多く行い、世界にジャマイカン・ミュージックを広める役割も果たし、アメリカのアーティストとの共演、バック・バンドも務めている。当時のジャマイカに於けるトップ・バンドであるスカタライツがドメスティックでハード・コアなバンドであれば、ドラゴネアーズはインターナショナルで活躍したポップ・バンドと言える。近年では彼等はカリプソとソウル・ミュージックを融合させたソカを奏でるバンドとして活動し、ジャマイカやトリニダード・トバゴと言ったカリブ海諸島に於けるフェスティバルで好演していた。
そして ダイナミック・サウンズの運営もバイロン・リー氏の大きな活動のひとつである。ダイナミック・サウンズはレコード・ディストリビューターとしてソニック・サウンズと共に全世界へレゲエ・ミュージックを配給し続けていて、また由緒あるスタジオでは数多くの歴史的セッションが行われ、かのローリング・ストーンズ他、レゲエ以外の有名アーティストもここでレコーディングを行った。
この様に「レゲエ・ミュージックの父」と言っても良い程の存在であったバイロン・リー氏の逝去はレゲエ界に於いて大きな損失だと思う。しかし何と言っても楽しくてゴキゲンなバイロン・リー&ザ・ドラゴネアーズの演奏が好きな自分にとっても、とても寂しい限りである。R.I.P.