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THE MAZE

VP Rrecords / Reggae from Roots to the Future
　
Text & Interview by Selector A
　

今、店頭やWEBでジャマイカン・ミュージックの新譜をチェックすれば、その殆どはVP Recordsからの作品だ。それはVP Recordsがジャマイカのアーティストやプロデューサーに最も信頼されているレコード会社だということを証明しているとも言えるだろう。ここで来年30周年を迎えるというVP Recordsの歴史をおさらいしてみよう。
　
今年、08年はVP Recordsの前身であるRandy's Recordsが創設50周年。そして来年にはVP Recordsが30周年を迎える。この50年、30年という年月はつまりジャマイカ、そしてアメリカでのレゲエ・ミュージックの殆ど全てとも言えるが、異文化であるこの音楽をアメリカ、そして世界に伝えていく困難さは想像に難くない。
　
Vincent Chin
　
「そうね、レゲエという音楽を分かってもらうのが一番難しかったことでしょうね。まだその頃はジャマイカのコミュニティが今ほど少なかったから。それに常に人が求めている音楽を探し続けるのも大変でした。新しいリディム、新しいアーティスト、更に今、ストリートで何が起こっているのかを探索し続けるのは本当に大変なことです。今でも私はお店に出向いてお客さんと話し、皆さんが何を求めているのか探し続けていますよ」（ミス・パット）
　
58年、ジャマイカのキングストンでジュークボックスの修理を手がけていたヴィンセント・チンと彼の妻パトリシア・チン（ミス・パット）はRandy'sという小さなレコード店をオープン。61年、ロード・クリエイターの楽曲を初録音。68年にはStudio 17が完成（このスタジオでボブ・マーリー＆ザ・ウェイラーズの『Catch A Fire』も録音された）。更にこの頃、Impact!やRandy'sといったレーベルを立ち上げるなど、順調に成長させていった。ところが79年、ジャマイカの悪政や景気の悪さを懸念した２人は、3人の子供（クリス、ランディ、アンジェラ）と共にアメリカに渡る。しかしこの頃は、ジャマイカ国外に持ち出せる現金はたったの＄50と定められていたため、彼らは所持金を全てレコードに変え、ニューヨークのクイーンズ地区にレコード店VP Recordsをオープン。因みにVP Recordsの名前の由来は、夫のヴィンセント（Vincent）とミス・パットの本名パトリシア「Patricia」の頭文字から。
　
(L→R) VP Family：Daughter, Angela Chin - Son, Chris Chin - Patricia Chin - Son, Randy Chin.
　
その後は、小売店業から卸売り業へと事業を拡大。その成功もあって88年にはシャバ・ランクスと契約。93年にはお馴染みの『Reggae Gold』シリーズをスタート。02年には世界中で800万枚を売り上げたショーン・ポールのアルバム『Dutty Rock』を発表するなど、時代毎に後世に残る重要な仕事に携わってきた。03年2月にヴィンセント・チンが他界するも、その逆境をバネにその後も業績を伸ばし続け、今年1月、長年に渡り良きライバルでもあったUKのレゲエ・レーベルGreensleevesを吸収合併し、誰もが認める世界一のレゲエ・エンタープライズとなった。
　
そんな順調な音楽ビジネスに加え04年にはアパレル・ライン、Riddim Drivenをスタート。07年にNYマンハッタンにショールームをオープン。更に今年に入って東京・渋谷にもショップがオープンしたのは記憶に新しいところだろう。このアパレル部門もミス・パットが取り仕切る。
　
「ファッションを通じてジャマイカの文化を広げて行き、もっとジャマイカの音楽や文化に興味を持ってもらい、分かち合えたらと思っています。今後もVP Recordsが皆さんにもっともっと身近に感じてもらえるよう、そして愛されるように努力していきます」（ミス・パット）
　
つまりレゲエ・ミュージックをもっと好きになってもらいたいからこそのRiddim Drivenというわけだ。そして彼女はレゲエ・ミュージックを深く愛し続けてくれる日本人にも多大な感謝をしている。最後にこんなメッセージを残してくれた。
　
「まず、沢山の日本人のお友達の方に感謝をします。レゲエを好きになってくれて本当に感謝しています。今後もVP Recordsをサポートして下さい。そして『Riddim』が25周年記念ということで多大な感謝と祝福の言葉を贈ります」
　

　
VP Recordsがプロデュースしてるアパレル・ライン、“Riddim Driven”。2003年にTシャツからスタートし、2006年にはフルラインへと規模を拡大。ブランドのコンセプトは、"Reggae Inspired Life Style Brand"。