Review by TAKASHI FUTATSUGI
1. V.A. / EX "R" To The Next "R" Mixed By DJ Hazime (R-Rated)
京の都の覇狼集団R-Ratedの音源を日本語ラップ・プレイにも定評のあるDJ Hazimeがミックスしたオフィシャル盤が登場! Anarchyの新曲 「Fate」やRyuzoのエクスクルーシヴ「Riot」(Golby $ound制作)、La Bono、Naughty、Young Bery、JC、そして新たに加わった京都シーン期待の新星シンガーHirom Jr.の既発曲、新曲を巧みに折り混ぜた構成は、USのミックステープ並みの強度を誇っている。これを聴けば、R-Ratedがタレントの宝庫であることが良く解るので、ビギナーのヒトも是非。
2. Anarchy / Dream and Drama (R-Rated)
自叙伝『痛みの作文』でも話題を呼んだ“前代未聞の男”Anarchyの2nd。タイトルが示す通り“夢と現実”が交差する、並び重視のアルバムらしいアルバムという印象で、荒削りな部分が魅力の一つだった前作よりもかなり練られたシュア・ショット。ゲストはシンガー(Tina、Hiromu Jr.)のみ、プロデューサーも盟友Bugzy以外、B-Money、Sebb、Blast Off Productionと“彼の才能に惚れ込んだ”海外組と、これまた予想外の展開に。その聴き手の感情を昂ぶらせるエモーショナルなラップは更に鋭くなり、説得力も増した。この男一体どこまで伸びるのか。
3. Norikiyo / Outlet Blues (Exit Tunes)
1st『Exit』で名を上げた、Rep相模原の“ギャングスタじゃなくジャンクスタ”のNorikiyo。この2ndでは、その前作でも尽力したジニアスBach Logicの全曲プロデュースで、斬新なシンセ・フレーズが飛び交う“(高度な)未来派トラック”に、主役のグッとくるリリックを“よりグッとこさせる”メリハリのあるフロウで縦横無尽に運ぶ…という“ありえないレベル”のモノとなっている。アルバム・タイトルは同じ地元の作家の作品を想わせるが、実際ここで歌われているのは、彼の足下にある街が舞台となるものだ。ゲストは般若、韻踏合組合の遊戯、Hidaddy。
4. DJ Munari Of Gekokujo NYC / The Album (Gekokujo-NYC )
下克上!といえば、この無也。単身NYへと渡り、早6年の彼はスクラッチ用のレコード2枚だけの「何もない=無」の状態から、確かなストリート・コネクションを築き上げるに至った訳で、そのタフなトラックは日本のアーティストのアルバムでも披露されている。この満を持しての初アルバムも、般若、漢、D.O.、Seeda、Simon、剣桃太郎、Den、Ashra The Ghostといった東京のストリート・フェイマスから、Kool G Rap、Styles-PといったNYのレジェンド、ストリートスターまで、流石の面子が並び、ドラマティックな風景の見えるビートが炸裂! 必聴です。
5. 初代 流星會 / 第一部 愚連隊編 (Kix)
流星會とは…下馬の暴れ馬こと鯉心銀次(剣桃太郎)と三茶一のドラ、流星龍(神)という五分の兄弟分である二人を中心に、自ら与太者を名乗る日本各地の破“Thug”烈モノたちが集まって組織されたヒップホップ集団(資料より)。つまりこれは“昭和の残侠”を自認する連中=義兄弟達が、生温い平成日本の世相をラップで叩っ斬る、という“流星會電撃作戦”である。などと書くと、特殊な作品なのかと思われそうだが、やっている事は極めてストリートライクなストリートのヒップホップ、その江戸版。その昔言葉のボキャブラリーを含め、かなり面白い!!
6. Grappluz / Public Enemy No.1 (TNTC)
Brash Ball Crewを率いる“和製M.O.P”の呼び声高き、血管ブチ切れラップ・デュオ=Grappluzが7年ぶりのフル・アルバムをドロップ。メンバーのJayerに、前作でも活躍したDJ Jinにコバ、Azzuro、新たにBuzzer Beats、Zipsiesらも参加したこの2ndは、“メッセージこそが1番”のラップがしっかり立ちまくった、彼らならではの剛速球(時にビーンボール)が冴えまくった内容に。ライヴの勢いからハーコーな印象を持たれがちだが(?)、そのユーモアはかなり…。愛国心をヒップホップで表現する、そんな正攻法を、ひねりを効かせて放つ、問題提起満載の社会派アルバム。
7. 時雨 With Azumayacht School / No Hiphop No Life (G-Crew)
Taro Soul、坂The上、エムラスタ、STC、はなび、サイプレス上野、ドタマ、Ken-1-Raw、ポチョムキン、Ill Da Assult、Shiga-Shit、将絢、tkzmgcl、祥、Kent The 390、Ali-Kick、Kotobuki、Gocciを交えてリレーした彼ら一流のオールドスクール・タッチのタイトル曲(クラシック・ライムも次から次へ)が話題の“栃木の星”時雨&東ヨットスクールのフル。そのオールドでニューな“Funky解釈”は、ベースラインにムムっと身を乗り出してしまう「狂気乱舞」や、DJ Jin制作のメッセージ・ソング「HipHop Is Not Dead」など、突出した魅力のある楽曲が並び、MC陣の底力が窺える。この“あったかさ”は貴重。
8. Kochitola Haguretic Emcee's / Hagulife (KSR)
歌心あるフリースタイラー鎮座 Dopenessに、Sabo、Katomairaの3人が集まれば、コチトラ!それぞれが東京23区外の府中、東村山、立川出身ということもあり“はぐれもの”らしく…しかしながら、その関係性はこの初アルバムを聴く限り、凄くタイトなような。櫻井響を交えた「Freestyle風」みたいな遊びの延長、なんだけど誰も真似できそうにない曲(?)とかを含めて。ある意味オーソドックスな日本語ラップを見直させてくれる、ナンセンス云々を超越したB-Boy文学。オリジナルな歪み方。しかも、トラックがかなりダンサブルに振れてて、適度にモンドで超Fresh! これはクセになる。
9. Moss.Key / Off The Chain (Riva Runz)
前号紹介のDix-Tのアルバムにも参加していた、トラックメイク、ラップ、ボーカルの3役をこなすウェッサイ・シーンでも話題の“ワンフィンガ ファンタジスタ”こと Moss.Keyの2nd。レーベル・メイトのDirty R.A.Y、Jammyや埼玉のDix-T、 Sound HolicsのKimi-E、フィメールシンガーEyesらをFeat.し、ほぼ全曲をセルフ制作した本作も、カン高い声質を生かしたドクトクのフロウ(Addictive Oriental Rap)が耳にこびりついて離れないオリジナルな仕上り。ブラック・ミュージックとしてのファンクを感じさせるトラックも良い。かなりのニュータイプ。
10. Mihara / Drama (RL66)
今はなきUKの名門“グランド・セントラル”からの1stや、Ari1010の「破壊せよEP」のプロデュース、その他数々のリミックスでも知られるサウンド・クリエイター=Miharaが、RL66”より2ndを発表。Deviantもリミックスした1stシングル「Quiet Rain」を始め、彩色豊かで筆致がしっかりしたデッサンの様なヴィジュアライズな“インストである事に意味がある” 個性的な楽曲群。それは、何れもタイプが微妙に異なるモノ。力強くも儚い美しさで一杯。その表現力たるや! 最早これは前作を上回る驚愕のクオリティ・ミュージック、である。
11. V.A. / Far East Project -Common Remix (Rambling)
SNS時代に相応しく、“ヤバい音は国境を越える”“世界中にばら撒きたい日本産のビート”という願いを込めてスタートした日本人トラックメーカー達による“名曲解体・再構築計画”。その第1弾の“お題”は、インサイト版も評判だった“みんな大好き”シカゴのリリシスト=コモン。DJ Watarai、DJ Hazime、DJ Deckstream、318、Grooveman Spot、DJ A-Kay、Mercedes Boy(A.Y.B Forth)、Physical Sound Sport、Low Jack Three、Ajap、Firewaltz、と通ウケ抜群の、考えられた“幅広い人選”で「あのクラシックが全く違った印象に」という好リミックスが続出!
12. Zeebra / The Anthology (Pony Canyon)
キングギドラの前身となるPositive Vibe時代から足掛け20周年、正に時代を駆け抜けてきたシーンのトップランナー=Zeebraの3枚組となるベスト盤。その歴史を総括する“ワンマン武道館”(11月)の前にリリースされるこのアンソロジーは、ソロ代表曲から、ギドラ、その他のコラボ(「証言」含む)まで、全49曲のフル・ボリュームなものに。新曲「Jackin'4 Beats」は、何と「病む街」「人間発電所」等の日本語ラップ・クラシックのビートが矢継ぎ早に飛び出す、ノーフック・ノージョークの大作! 公式Zeebra本『Stand Up! Magazine !!』付きのデラックス・エディションがおススメ。