RDX
Interview by Natsuki Toi / Photo by Kentaro Kambe / Transrated by Maki Sekine
世界のどこを見渡しても、こんなに“朝”の陽射しが似合うダンス・ミュージックは他にないだろう、ジャメイカン・ダンス・ミュージック。ダンサーをも巻き込み「最先端のムーヴメントを作っているのは俺たちだ!」と自信みなぎるデビュー盤をドロップしたRDX、二人に話を聞いた。
DJパートRenegade(レネゲード。写真左)とシンガー・パートDelomar(デロマー。写真右)の2人から成るRDX。まだ学生の頃から制服姿でスタジオに通い、既にトラックを作り始めていたRenegadeとクワイヤーで歌っていたDelomarが出会ったのが今から14年前。
●そんな学生が出入りして曲作りできるようなスタジオはジャマイカには沢山あるの?
Renegade(以下R):いや、普通じゃないと思う。俺の場合は、その頃地元Water Houseのコミュニティのビート・クラッシュで優勝したから、ちょっとした有名人だったんだ。それでスタジオの人が「コードとか基礎を勉強するように」って本を一冊貸してくれてさ、それから曲作りをさせてもらえるようになった。その頃ハード・コアなエッジが効いた完璧なビートが好きで、Hip Hopのいろんな要素をDancehallに持ち込んだね。
Renegadeがこれまでに手がけたRiddim Trackは大ヒットした“Chrome”、“Jump Off”、“Summer Bounce”他、Tanya Stephens、Bounty Killerらにリリックを提供する等、実は多彩な才能の持ち主だ。
●RDXのレーベル“Apt.19”について教えて。
Delomar(以下D): Renegadeはいつも他のアーティストに曲を提供していたけど、腰をすえて自分達のためにクリエイティヴな事を始めよう、と決意して作ったんだ。そう、彼のApt=アパートメント、19=ルーム・ナンバーって意味だよ(笑)。
●タイトルが示すように、このデビュー作もまさにジャマイカの“ダンス”をフォーカスした作品になっていますが、RDXにとって、またジャマイカ人にとって“ダンス”とはどんな意味があるの?
R:ジャマイカが誇る、世界に通用するトレード・マークであり、俺たちにとっては音楽の中核、いつも自分たちを突き動かし助けてくれるもの、それがダンス。なぜダンス・ミュージックをやるのかについては、肌の色、国籍、好きな音楽のジャンルを問わず、人々を躍らせて、ユナイトさせる力があるだろう? だからみんなを躍らせて、一緒に楽しめる、そんな作品がRDXのアルバムだ。
D:“一緒に”楽しめる、というところが重要だ。
R:サウンド的にはクラブ・フレイバー、R&Bやバラード系、Hip Hop、ワン・ドロップと、いろんな要素が入っている。でも基本的には自分たちのルーツ、俺たちの音楽=レゲエとダンスホールをプロモートしたい、という思いが一番。だからジャマイカのスラングやパトワも広めたいし、メッセージもこめているから、ぜひ日本語訳の歌詞も読んでもらいたいね。
●ジャマイカのダンスといえば、男女が激しく下半身をぶつけ合い、最近では男性が女性に飛び乗ったり、振り回したりと非常にアクロバティックなダンス“Daggaring”が流行っていますが、こういったジャマイカ独特のダンスというのは、どうやって生まれるの?
R:“Daggaring”に関しては、一時ダンスの現場で男と女が別れて踊っている時があって、それをまた元に戻して一緒に踊らせようと、仕掛けたんだ。ジャマイカのダンス・スタイルの話をすれば、元々は大昔のクミナ・ダンス(※アフリカ系宗教のひとつ。ダンス中に憑依するものが出る)まで遡るね。クミナがDaggaringのグランマだ。Daggaringは危険に見えるけど、プロフェッショナルな人間が踊っているから、ちゃんと女性に危害が及ばないように配慮されているよ。
●最近はダンスの現場にプロ・ダンサーが増えましたね。
R:現場のDVDが世界中のプロモーターの目に留まって仕事につながるから、ダンサーはいつも現場に出ているし、RDXや他のアーティストもお抱えのダンサーが沢山いる。というのも彼らに付いているファンは、いつも最新の動向に注目しているから新曲とリンクしてニュー・ダンスが出ればより注目されるという仕組みにもなってるからね。
●アルバムに参加しているプロデューサーで注目しているのは?
R:Alif Cooper(Fresh Ear)だね。彼は音楽的な師匠で、Xytment(2人が以前参加していた6人組のグループ。'98結成。)の時代からずっとお世話になっているんだ。彼はここ2年くらいで有名になったけれど、父親がThird WorldのIbo Cooperだから、生まれた瞬間から音楽漬けで確かな耳をもっている。今や誰もが認めるトップ・プロデューサーだけど、RDXにとっては「何をすべきで、何をすべきではないか」を教えてくれたり、(親密な)叔父のような、とても大きい存在なんだよ。
"Everybody Dance"
RDX
[Universal / UPCH-20105]