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305    COLUMN    UK REPORT

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND

Jimmy Cliff
 
Greetings Friends,
 
●夏の初めは晴れた日が多かったのだが、残念なことにヨーロッパでは、雨の降る日が続いている。The Glastonbury Festivalは悪天候のために毎年観客が泥まみれになることで有名だ。しかし、今年は天気が安定していたために例年と比べ快適だったかもしれない。主にインディーズで活躍しているラディカルなアーティストが出演することを売りにスタートした同フェスが、徐々に商業主義に走ってしまっているのが気になる。観客にパンチを喰らわせたAmy Winehouseと大ベテランのNeil Diamondが同じ日にステージに上がるなど、今年の出演者の顔ぶれとその組み合わせも奇妙なものだった。Jimmy Cliffのパフォーマンスはテレビで生中継され、それがノーカットだったのは良かったのだが、僕は彼がこれほど音程を外して歌うのを初めて聴いた。やはり年齢という魔物がついに彼を捕らえてしまったのだろうか? 残念なことに、彼はインターナショナル・レゲエ・アーティストとしての唯一の出演者だったのだ。主催者はベテランに加えて、現在第一線で活躍している若いレゲエ・シンガーも選ぶべきだったかもしれない。これがショウ・ビジネスというものなのか!!
 
●反同性愛を唱えるジャマイカのアーティストと、世界中の同性愛者擁護団体との確執はまだ続いている。このような構図は、英国教会系教会が同性愛者の聖職者および同性愛者同士の結婚を認める法令発布をした同教会内での対立にも見ることができる。最近、この確執をさらに悪化させるような発言がジャマイカの首相、Bruce Goldingの口から飛び出した。彼が現在の政府に「同性愛者は参加して欲しくない」と明言したことが問題になっているのだ。彼は5月に、ジャマイカの英国に対する借金の軽減を求めるためにUKに赴き、英国首相Gordon Brownと会談を行っている。彼は滞在中、BBCが世界中に放送している『Hard Talk』という番組に出演した。番組では「何故ジャマイカが世界で一番同性愛者に対して強硬な姿勢をとっている国なのか?」という質問が彼に向けられた。Brownは「全てのジャマイカ国民のプライバシーや人権は法律で守られている」と強調したあとで、「ジャマイカ政府は国際的な同性愛者擁護団体の圧力には屈せず、同性愛者の権利を認めることはない」とはっきり言ってしまったのだ。その上、彼は以前発言したように、同性愛者の政府への参加は認めないことを改めて表明した。ジャマイカ国内でも同性愛者の権利擁護を訴える動きがあるが、彼の内閣では「そのようなことは絶対にありえない」とつけ加えている。この首相の発言に対するジャマイカ国民の反応は、予想通り暴力的なものだった。1990年代始めに、Shabba RanksやBuju Bantonが“同性愛者嫌悪キャンペーン”を反同性愛者リリックやUKのTV出演により始めたかもしれない。しかし、ジャマイカの首相が公の場で同性愛者に対する個人的な感情を露にすることは、同国の精神衛生や経済に悪影響を与えることになるだろう。ジャマイカは財政や人道面において既に深い傷を負っている。富める人々とそうでない人々の格差は広がるばかりなのだ。片付けなくてはいけない問題が山積みだというのに…。
 
●レゲエのベストセラーを最も多く出しているレコード会社はまぎれもなくVPだ。Greensleeves Recordsを買収して以来、Top20ルーツ&カルチャー系のチャートのうちの15タイトル、Top25レゲエ・アルバムのうちの19タイトルをVP/ Greensleeves陣営のものが占めている。これはほとんど独占状態に近い!!
 
●もし、究極のCutty Ranksコンピレーションを探しているのなら、VPからリリースされている『Reggae Anthology: Limb By Limb』がオススメだ。これを聴けば、何故肉屋で働いていた不良少年が1980年代後半から1990年代初期にかけてスターダムにのし上がっていったのかが分かるだろう。彼の声質、言葉の伝達の仕方、そしてリズムの扱い方、これらすべてが素晴らしい。僕があの時代で一番好きなDJのうちの一人だ。
 
●最近、ヒットメーカーのEddy Grantが、多数のTVやラジオ番組に“ご意見番”として、また“成功した黒人”として出演している。彼の曲は様々な企業のTVCMに繰り返し使用されていて、耳にする機会は多いのだ。『The Best Of Eddy Grant: The Road To Reparation』が彼自身のIceレーベル(流通は大手のUniversalが担っている)からリリースされたばかりで、彼のマスコミへの露出は、このアルバムのプロモーションには好都合だろう。アフリカ、ガイアナ出身のGrantは、UKで自身のレーベルを興した初の黒人アーティストだ。彼はレーベルだけにとどまらず、後にスタジオを作り、果てはレコードのプレス工場も買収してしまう。また彼は、1960年代に所属していた国際的なヒット曲を飛ばしたグループThe Equalsの曲から現在に至るまで、彼が作った曲の全権利も所有しているのだ。もうすぐ60歳になろうとしているが、白人黒人に関わらず、僕が会った音楽業界人の中でも一番商才を発揮した人物の一人だろう。さて、前述のベスト・アルバムには1980年代のインターナショナル・ヒット・チューンが主に収録されている。これらの曲はポップスであり、純粋にはレゲエとは言い難い。しかし、彼のルーツであるアフリカとカリブ諸国の音楽をポップスと巧みに融合させ、キャッチーな曲に仕立ているGrantの才能は評価に値すると思う。もし、Eddy Grantの音楽を聴いたことがないのなら、是非このアルバムを聴いてもらいたい。ビジネスマンとしても才能を開花させた彼の音楽の入門にぴったりの1枚だからだ。
 
●Jah Cure、Luciano、Dean Fraserと共に大規模なヨーロッパ・ツアーを行う予定だったBeres Hammondが“健康上の理由”によりツアーへの不参加を突然表明した。僕は、彼の身に何が起こったか分からないが、ソウルフルなヴォーカリストの一刻も早い回復を願っている。
 
Till Next Time, Take Care..........
 
(訳/Masaaki Otsuka)
 

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