TIGGERZ
1974
Text by Naohiro Moro / Photo by Kurofin
Soul Eye(写真右)、Peter Man(写真中央)、La Gaku Suntro(写真左)という寅年生まれ三人衆によるユニットTiggerzを目撃したレゲエ・ファンも多いだろう。その彼らが初となる作品集『One』をリリース。三匹の虎たちがマイク片手に吠えまくる。
7月10日。駒沢のスタジオ・ノアで、Tiggerzの明宝用のリハーサル。バックはStoned Rockers。TiggerzとStoned Rockersは、これで3回目のはずだ。同世代の持つパンキッシュな感性が反応しあっていて、相性がよく合っている風に感じた。そう言えば、Tiggerz自体、Peter Man、Soul Eye、La Gaku Suntroの3人のユニットとして大きなイベントに姿を現したのも、去年7月の明宝からだったんじゃないだろうか。まだ、フライヤーには「Tiggerz」とはクレジットされていなかったが、“Tiggerz プロジェクト”は既に進行中で、実は今回リリースの楽曲のレコーディングも済んでいたという。その明宝のステージで、お披露目的に歌われた「One」には、メイン・ヴァージョンとは別に「Meiho Version」というサブ・タイトルが付いたリミックスとして、今回リリースのミニ・アルバム『One』に収録されている。
Soul Eye。
Ya-Lowプロダクションの立ち上げの頃から、レーベルの本拠地三河出身のディージェーとして積極的に作品を発表し、「分かる?」や「分からん」などの現場人気ナンバーで知られる。この数年は、錦コミュニケーションズ主催の夏のフェス「愛知Reggae Breeze」のMCも担当してきた。だが、今年のMCは彼ではない。今年はTiggerzとして、彼はReggae Breezeに参戦する。1974年生まれ。寅年。
Peter Man。
去年、En-Jointからリリースされた「Sweet & Nice」、今年、カエル・スタジオよりリリースの「If You」などは、着メロ・サイトでも大いに注目されている。大阪でマイクを握って、もう10数年。そのスキルはベテランの域に達する。自身でレーベル「Blappanese Music」を主宰。DUBによるノン・ストップ・ミックス・アルバムのリリースや、オリジナル音源の制作なども着々と進行中。1974年生まれ。寅年。
La Gaku Suntro。
東海エリアを中心に活動してきたヒップホッパー。ストリートにたむろする不良の哀愁を「昭和歌謡ラップ」と自ら銘打ったそのスタイルで表現する一方で、稀に見る毒舌ライムで、腐った社会で安穏と暮らす怠惰な豚をディスる。自身のレーベル「Don Clown Records」主宰。ダンスホール・ビートを乗りこなすそのラップが3MCの中でもアクセントとなる。1974年生まれ。寅年。
この3人が集結して「Tiggerz」となった。そして虎は連帯を叫ぶ。彼らのリリースしたミニ・アルバム『One』はその狼煙だ。
虎とその周辺世代(30代前半)は、一部に、ジャパニーズ・レゲエをここまで引っ張って来た人間をも含んでいる。そして多くはジャパニーズ・レゲエ誕生のムーヴメントからパワーをもらった、言わば、ジャパレゲ冬の時代をブチ破る原動力となった世代だ。彼等が20代前半の頃に、レゲエを全国各地で始めることにより、またお客さんとして参加し、広めることにより、シーンは活性化したと見ることも出来る。そして現在、虎世代は、充分な経験と、スキルを持ち、レゲエと共に生きる覚悟もとっくに定まっている。時は充分に満ちているのだ。
冷静に分析するなら今から5年前、2003年、新世代が生まれた。はっきりと言おう。湘南乃風以前と湘南乃風以降。否定は出来ない。湘南乃風インスパイアは次代の主流になるだろう。僕はいたずらに彼等を否定しているのではない。ただ、虎世代には虎世代にしか出来ないレゲエがあると思うのだ。もっとRudeなレゲエが。Rub A Dubな感じのレゲエが。だが、かく言う僕は辰年なのだが…。
「レゲエって音楽自体が、オレはインディーズだと思うんだよね。インディーズの自由さとか、自分の音楽へのスタンスを守ること。それは変えられないよ」。今年、活動開始20周年を迎えた、Papa U-Geeがそう言っていた。そういうもんだろ? オレもそう思う。みんなはどうだ?
"One"
Tiggers
[Exit Beats / En-Joint / QWCE-10013 ]