TARR US RILEY
PARABLES
Text by Takanori Ishikawa, Transrated by Maki Sekine
「レゲエ・アカデミー・アワード」では見事6冠を達成。この度、すでに名盤と誉れ高い『Parables』がめでたく日本盤で発売されることとなったTarrus Rileyが来日。プロデューサーでもある大御所、Dean Fraiserも同席してのインタビュー。
既に大阪と横浜でライヴも披露したわけですが、日本人のファンの印象はどうですか?
「グレート!だよ。僕の曲をちゃんと聴いてくれて、しかも一緒に歌ってくれたのが感動的だった。自分の曲がこんなに受け入れられているんだ、ってね。言語の違いを越えて“音楽”というひとつの同じ言語を楽しんでくれていると実感したよ」
この質問はもう“耳タコ”かも知れませんが…ちょっと前まで全く無名だったあなたを紹介する時に必ず名前が出てきていた父親=Jimmy Rileyからの影響はありますか? また同様に、アルバムをリリースしたばかりの頃、作品を紹介する記事にはあなたの名前以上にプロデューサーのDean Fraiserの名前がクローズ・アップされてましたね。その点についてはどう思ってましたか?
「父がJimmy Rileyで、プロデューサーがDean Fraiserなのは事実だからね。そう言われることについては別に不愉快ではないよ。事実は事実なんだからとても自然なことだよ。勿論、父から教えられたことも多いし、受け継いでいるものもあると思う。Deanもグレート・ミュージシャンであり、グレート・プロデューサーでもある。でも、そのことは子供の頃から知っていることだからね。僕がDeanと“タメ口”をきいているのを聞いて周囲が驚くことがあるけど、僕たちにとっては自然なことなんだよ。小さい頃から側にいる存在だったからね。実際、僕の娘もDeanと“タメ口”で話しているよ(笑)。そう、それに父親だけではなく、ミュージシャンになることを薦めてくれた母親にも感謝しているよ」
う〜ん、さすがに模範的な回答。そしてアルバムの内容について訊いてみたところ 「楽曲には自分の好きなアコースティックな要素をプラスした」との言葉。最終的な判断はプロデューサーのDean Fraiserが下したそうだ。一体どのタイミングで彼のヴォイスにはアコースティックなサウンドが合っていると判断したんだろうか? ここで同席しているDean Fraiserにも質問してみよう。
「実は最初は全然違うサウンドを考えていたんだ。ただ、彼の声やメロディを聴いているうちにアコースティックなサウンドの方が良いだろうと思った。そう、“She's Royal”をSly & Robbieと録っている時に、もっと生演奏や生の音を入れた方が良いだろうと気付いたんだ。つまり“バック・トゥ・ベイシック”だね。Bob MarleyやPeter Toshの時代に戻って生の楽器をもっと入れていこうとしたんだ。あの時代はみんな、“楽器の音”をリスペクトしていたからね」
一流ミュージシャンならではの回答ですよね。楽器が演奏出来ないプロデューサーには言い難い、過去のミュージシャンへのリスペクト、古くから生き抜いて来た同胞へのリスペクトが感じられると思いませんか?
前述のDeanの発言を受けてTarrus Rileyに現在、ジャマイカのダンスホールで一方の主流であるコンピューターライズドのサウンドについてどう感じているか訊いてみた。
「まず、コンピューターやテクノロジーが嫌いだ、というステレオタイプには思われたくはないね。要は曲に応じてどうコンピューターを使うかだよ。アコースティックなサウンドってものは本当、ベイシックなものなんだ。例えばだよ、今流行しているコンピューターライズドの曲は、2010年にはもうオールド・ファッションになっているかも知れないよね? でも、ベイシックな音を使っていればそんなことにはならないよね? だから僕の音楽はこの先もずっと聴かれ続けると思うんだ。と言ったってコンピューターのサウンドが嫌いって訳じゃないよ。とにかく肝心なことは、コンピューターのサウンドもどうやって曲の中に生かしていくかなんだよ」
あなたの“She's Royal”は日本では女性にも大人気です。ジャマイカではラスタではない女性からも支持されたがために大ヒットを記録したと聞いています。幅広い層に受け入れられた要因は何だったのでしょうか?
「まずね、言っておきたいことは“ラスタはジャマイカではスポットライトが当り難い”ということ。ラスタをハイライトしてくれないんだよ。日本ではちょっと誤解してる人もいるみたいだけど、これは理解してもらいたい。でもこの曲が幅広い層に受け入れられた要因は、第一にリリックスだろうね。女性を褒め讃える歌詞が良かったんだろうね。しかも、それをラスタが歌っているという点が人気になった理由だと思うよ。
最後に今後のプランを訊いた。
「今は次のアルバムを作りたい。プロモーションもまだまだ続けなきゃいけないけどね。日本にもまた来たいね。またパフォームしたいよ。でも、まあ将来のプランは全てJahに任せているよ」
"Parables"
Tarrus Riley
[Victor / WWCD 046]