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304    ARTISTS    PAPA U-GEE

Papa U-Gee
 
Interview by Hazime Oishi / Photo by Kazuhiko Iwahori
 

今年で活動20周年を迎えるPapa U-Gee。今回発表された『Best+』は、(代表曲の再演を含む)Home Grown演奏による新録音源と、Zion High PlayazとのレーベルZion Highと、自身のレーベルである(Zion High)Kiteki Muzik(設立以降)の楽曲をまとめた2枚組。単なるベスト盤以上の思いが詰まった今作を、彼の経歴と共に紹介する。
 
1時間鳥肌が立ちっぱなしだった。それはPapa U-Geeの活動20周年を記念した2枚組『Best+』を聴いていた時の僕の興奮状態を示すものでもあるのだけれど、実は、取材中も僕は同じように鳥肌を立てていた。Papa U-Geeの話は本当におもしろい。特に93年から94年までの2年間、ジャマイカのコックバーン・ペン(スーパー・キャットも住んでいたゲットー)に居着いていた時のエピソードなどは、ちょっと身を乗り出してしまうほどに刺激的だ。本稿ではそのほんの一部しか紹介できないけれど、それは一冊の本にまとめられるぐらいの逸話と刺激に溢れている。出版社の皆様、結構おもしろい本になると思うんだけど、いかがですか?
 
——ともかく、それほどまでに、Papa U-Geeはレゲエ・ミュージックの奥深くに頭を突っ込み、血肉どころか、神経細胞のひとつひとつにまでレゲエ・ミュージックの何たるかを染み込ませてきたのだろう。横浜の老舗サウンドBanana Sizeに所属し、“Papa U-Gee”という名でDJを始めたのが88年。ファースト・レコーディングはV.I.Pからの「Wicked Japanese」で、これが92年のこと。日本においては、最初期から活動しているダンスホールDJのひとりにあたる。
 
「ジャマイカに住んでた頃? そうだね、今までの人生の最高潮だよ。金はなかったけど、自由だった。コミュニティにも活気があったし、サウンドシステムも四方八方で鳴ってるし。スーパー・キャットは歩いて3分ぐらいのところでやってるし、夢に描いてたような場所だったんだよね。だから、今でも“ガイダンス”っていう言葉を信じてて。夢に描いてると実現するんだよね。それがジャマイカから教わったこと」
 
ラスタマンのコミュニティで過ごした2年間の経験は、レゲエDJとしてのファウンデーション=土台をPapa U-Geeに与えることになった。その後、「ジャマイカで学んだことはこの人たちと出会うためのものだったんだろうなって」と言うほど惚れ込んだZion High Playazと共に(自身の)レーベル、Zion Highを2001年に設立。今回リリースされた2枚組『Best+』のDisc-2には、それ以降の音源がまとめられている。
 
「“長年いろいろなものを積み重ねてきて、こういう音になりました”っていう部分を聴いてほしいんですよね。本当はね、V.I.PとかJAPjamから出してきた(90年代の)音源も入れたかったんだけど、あえてレーベルを自分で起こしてからの、“これが自分の出したい音です”っていうものをまとめたかったんですよね」
 
ここには、いわばルーツ&カルチャーをより明確に意識してからのPapa U-Geeの歌が収められている。とはいえ、彼なりの視点でバッドマン・トークを展開した「Toppe Gangsta」など90年代の音源と現在の彼の歌は——大きく方向性が違うように見えながらも——Papa U-GeeというひとりのレゲエDJのなかで一本の線として繋ぎ合わされてもいる。そのことを証明するのが、新録音源が収められたDisc-1。Home Grownと共に新旧代表曲をライヴ・スタイルで矢継ぎ早に披露していく「Live & Direct Medley」には、先述した「Toppe Gangsta」も「Wicked Japanese」も入っている。
 
「高校生の時から好きだったアスワドの『Live And Direct』みたいにライヴ感のあるレコーディングをいつかやってみたくて。それで、スタジオで一発で録って。こういうやり方って意外とないし、Home Gもおもしろがってくれたね。そこに“Wicked Japanese”とかを組み込んで、“今でもやってるぜ!”っていう部分を出したかった。最近のオレのステ ージを観てない人はルーツ・レゲエのイメージがあると思うんだけど、今でも“Come Down”のオケとかで歌ってるからね」
 
彼のダンスホールDJとしての姿を表現したのが「Live & Direct Medley」だとすれば、その他に収められた新曲は、Papa U-Geeのルーツ&カルチャーな面を見せたものと言えるかもしれない。ここでも彼の歌を支えているのが、10年以上の付き合いになるというHome Grown。
 
「とにかくTancoさん(Home Grown)とやりたかったんですね。Home Gは“素晴らしい”の一言。自分もプロでやってるつもりだけど、本当にプロだと思った。ジャマイカの連中もミックスダウンの時びっくりしてたもんね」
 
「根っこを張って知恵を伸ばしていって、バランスを取っていこう」というテーマを持つ「Roots」、「みんな繋がっていこうっていう思い」が込められた「Jah Jah」。「20年の区切りに一番伝えたかったのがこのメッセージだったんだよね」というこの新曲2曲は、20年間のレゲエ人生でPapa U-geeが辿り着いたひとつの答えとも言えるのだろう。
 
「20年やり続けてもOKなんだ、レゲエは歳を取ってもOKなんだってことを知ってほしいよね。レゲエは説得力がないといけない音楽だと思うしね」
 
そう話すPapa U-Geeの姿には、気負いも飾り気も虚勢もない。真摯にレゲエ・ミュージックと己の人生に向き合う——そんなことを20年も続けてきた彼だからこそ歌うことのできるメッセージ。それに触れるたび、僕の心はどうしようもないほどに揺さぶられてしまうのだ。
 
【初回限定盤】

"Papa U-Gee Best+"
Papa U-Gee
[Spice Recoeds / KTKM-002]


【通常盤】

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