MADE IN JAMAICA
Interview by Hajime Oishi
Bunny Wailer
Lady Saw
ここ数年、注目すべきレゲエ・ムーヴィが続けざまに世に出ているが、新たな映像作品が公開されることになった。『メイド・イン・ジャマイカ』——バニー・ウェイラーやバウンティ・キラーなどが登場するこの映画について、監督のジェローム・ラペルザに話を訊いた。。
映画『メイド・イン・ジャマイカ』は、アーティストたちの証言とパフォーマンスを組み合わせることによって、ジャマイカン・ミュージックが持つダイナミズムの源泉を探ろうとするドキュメンタリー作品だ。手に汗握るライヴ・シーンも盛り沢山。知るべき「知」を与えてくれる証言も非常に興味深い。
監督はフランス人のジェローム・ラペルザ。80年にはサード・ワールドを追いかけたドキュメンタリー『Prisoner In The Street』も手掛けている監督だ。彼は60年代からロックやジャズを愛してきた生粋の音楽マニアであり、なかでもレゲエに関しては一言ある人物。この映画のテーマについて訊ねると、一気に喋りはじめた(多くの場合、彼の言葉の語尾には「You Know?」が付く。還暦を迎えたフランス人で、こんな英語をしゃべる人物はあまりいないんじゃないかと思う)。
「レゲエ・ミュージックはゲットーの叫びであって、彼らは自分自身を表現しているんだ。私は、この音楽がどこから来ているのか、常に考えてきた。そのひとつの回答を大きなスクリーンのなかでスタイリッシュな形で見せ、私のアイデンティティとヴィジョンを表現したかったんだ。強烈なサウンドと共にね。私には、ジャマイカ人が歌っていることすべてを人々が理解していないように思える。ピース&ラヴ、スプリフを吸うこと——それらも重要なテーマだけど、それだけじゃないんだ。分かるかい?」
「音楽を通して描かれる、社会的、地理的、文化的なポートレイトなんだ」と彼が話すように、この映画は多くのエレメンツ——ラスタファリアニズム、ゲットーの現実、暴力と銃、貧困、生と死、愛と憎しみ、セクシュアリティ等——を取り上げながらも、最終的にはジャマイカという国とレゲエ・ミュージックが持つタフネスへと帰結していく。そこから透けて見えるのは、ジャマイカとレゲエに対する監督の強い愛情だ。
「映画監督としては、チャンスがあれば、多少の困難があっても撮影を行う必要も出てくるんだ。そこがゲットーだろうとね。確かに、たくさんの機材を抱えた白人がゲットーに入っていくことは簡単なことじゃないけど、私はジャマイカを愛しているし、素晴らしい風景がそこにはある。だから、キングストンで撮影することに決めたんだ」
インタヴュー嫌いで有名なバウンティ・キラーがゲットーの困難について話すシーン。撮影の数週間後に銃殺されてしまうボーグルのダンス・シーンと彼の葬式のニュース映像。バニー・ウェイラーやケイプルトン、エレファント・マン、レディ・ソウ、ヴァイブス・カーテルらの素晴らしいライヴ・パフォーマンス。レゲエを愛する者にとっては、全シーンが見所と言えるかもしれない。
「私とジャマイカのアーティストたちが持つヴィジョンを共有してくれることを願っているし、ジャマイカで何が起きていて、なぜここまでレゲエ・ミュージックがビッグになってきたのか、この映画を観ることで深く理解してもらえると思う。劇中で使われている音楽はすべてストロングだし、美しい曲も入っているので、とにかく楽しんでほしいね」
※7月5日より渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー
Capleton
Bounty Killer