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304    ARTISTS    GARY PANTER


 

"UNEXPECTED" Silkscreen prints 1985

 
 ついにGary PanterのアルバムがCDで再発された。実に25年間お待たせしたことになる。

 Garyとの最初の出会いは28年前だ。メルローズにあったシティ・カフェというところにRozz Toxシリーズのペインティングが、確か6点展示されていたと思う。それはシカゴにあるピカソ作のどでかい鉄製のスカルプチャーをモチーフにしたものだった。早速カフェの女主人から作家の電話番号をゲットし、翌日乗り込んで以来の付き合い。それからは、来日してもらってライヴ・ペインティングをしたり、個展を開催したりしてきた。GaryがLAからNYに移り住んだこともあり、LAよりはNYに行くことが多かった僕もそのたびに電話したりアトリエにおじゃましたりという関係が今も続いている。

 そんなGaryとの付き合いのなかで聞いて来た言葉をいくつか書いてみることにする。
 「父が画家でもあるから描くことが子供時代から好きだった。僕自身はアートの虫(Bug)なんだ。好きなだけだ。たぶんアーティストには誰もトラウマのようなペイン(傷)があるんじゃないかな。僕の場合は育ったオクラホマでの巨大なトルネード(竜巻)や子供の時にシンク(水桶)にはまって死にかけたり…何度か死の恐怖体験をしたことがモンスターのような極端なモチーフを描くことになっているのかもね」

 再発されたCDアルバムには「トルネーダー・トゥ・ザ・テーター」という曲が入っている。

 「アートで成功しようなんて考えること自体がアートを冒涜していることになるかもね」
 彼のアートに対する真摯な向き合い方はこの言葉からもうかがえる。何億円という作品が話題になる時代に、自分の作品を売ることにあまり興味がないと言う。作品が転売され作品そのものの価値ではなく投機の対象のような価値に対してこんな見方もしている。

 「やっぱりいい場所(作品の価値を知る人という意味か)に置きたいからね」

 この言葉は、以前とても気になっていた作品をどこの誰が買ったのかを聞いた時の言葉だ。ちなみにその作品を手に入れたのは「シンプソンズ・ファミリー」の作者であり彼の大ファンのマット・グルーニングだった。そう言えば昨年は「シンプソンズ…」x Vans x Gary Panterのコラボ・シューズも発売された。
 モンスターやSF的なモチーフも多い彼にフィリップ・K・ディックとの出会いについて聞いた答えだ。
 
 「80年頃にパンクペーパーの『SLASH』誌に連載していた“Jimbo”を見たらしくディックが彼の友達を通じて連絡をくれたんだ。留守電に会いたいというメッセージが入っていて『SLASH』でインタヴューをしたのが最初の出会いだったけど、彼が亡くなるまでに4〜5回会ったかな。きれいにクリーニングした“Rozz Tox”(Garyの作品)のTシャツを着て亡くなっていたんだ。変だよね」
 
 「『Riddim』で連載している“DAL TOKYO”はディックの作品に影響されてるかって? う〜ん、そうだね、他人よりも先に行っている人には興味があるから彼の影響が無いとは言えないけど、直接的な影響はないと思う。むしろ高校時代の優秀な友達が書いた詩だね。それは“未来世紀と過去の恐竜世紀の全ての瞬間が今ひとつになったらどうなるのか?”という内容で、その詩に影響を受けていると思う。それと72年くらいから既に僕のスタイルがあって『時計仕掛けのオレンジ』の作者でもあるアンソニー・バージェスの架空の文字を使った小説からも影響を受けているかもしれない」

 こんな彼は音楽にも意欲的である。80年代初頭までにシングルで発表していた曲に加えて、1983年に新曲をLAのシャングリラ・スタジオでレコーディングして完成したのが『Pray For Smurph』だ。再発にあたってはオリジナルのシルクスクリーン・プリントを制作。蛍光インクで布にプリントされた作品が1,000枚しか制作できなかったことで、全世界1,000枚の限定。ヤバい!
 
 更にGaryはNY のカフェ、SFのAmoeba Musicというレコード店などを始めとしてLAやマイアミなどでもマイペースでライヴをやり始めている。
 
 ではGaryにとって絵と音楽の関係はどうなんだろう? 以下メールでのやり取りである。
 
 「絵と音楽は、両方とも僕のとても身近な道具を使ったラフなコラージュだね」
 
 84年にRaw Booksから出版された“Elvis Zombies”にはソノシートがついていたけど、あれには何か特別な意味があったのかな?
 
 「あの曲“Precambrian Bath”と本“Elvis Zombies”の関係は、両方ともテーマは時間と想像と神秘だからあの曲を選んで付けたんだ」
 
 では25年も経ってこのCDが再発された気分はどうだい?
 
 「ちょうど今(日本から)CDが配達されたて来たところだよ。さっそくワイフと娘に見せたんだけど、すっごく嬉しかったね!」
 
 これからOVERHEATのフリークフラッグ(中に入っている布製のシルク・プリントのこと。ジミ・ヘンの曲から名付けられた)を友達に見せて気絶させてやるよ!! そしてミュージシャンの友達に会ったらこのCDを渡すんだ。友人のデヴィン・フリンと僕はバークレイ(Amoeba Music)で来月ライヴがあるから、そこでこれらの曲を生演奏するんだ。ずっと何年も僕をヘルプしてきてくれたイシイとOVERHEATから、遂にこのCD『Pray For Smurph』が再発できて嬉しいね」

 
---- more details and infomation -----
Overheat ●Gary Panter ●Stussy Japan ●4Sight



GARY PANTER『PLAY FOR SMURPH』
【Limited Edition】 全世界1000枚限定 オリジナル特典
布製のオリジナル・シルクスクリーン・プリント(55cmx39cm)付。
蛍光インクでプリントされた“Smurph”のキャラクターはヤバすぎです。
[OVE-0102] 5,250円(税込)



この『Pray For Smurph』の発売を記念してStussyからコラボTシャツ、4sightからSkateboardが発売中である。



"BARLELY NEWPORT 5" Acrylic on paper 1979 



INVATION DE LOS ELVIS ZOMBIES(RAW BOOKS)1984

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