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AKANE
EXPRESSION
 
Text by Norie Okabe / Photo by Takayuki Abe
 

Ryo the Skywalker主宰レーベルBush HunterからシンガーAkaneがいよいよデビュー。トラックメーカーはDaddy Dragon、地元の盟友Wiki(Fire Deepa)など日本勢と、ジャマイカからComputer PaulやSly Dunber等が名を連ねた鉄板の布陣。真摯なダンスホール・アルバムが完成した。
 
 アーティストにとってデビュー・アルバムは“名刺代わり”とよく聞くが、Akaneのデビュー・アルバムは名刺以上に饒舌だと思う。隅から隅まで“ダンスホール”で、ひたむきで芯が強くて……。そんな彼女のキャラクター“そのもの”を体現したアルバムだからだ。
 
 「地元の茨城土浦はサウンドシステムが15くらいあって、実は“隠れレゲエタウン”なんです。昔から普通に周りがレゲエを聴いてたから、私も自然と聴くようになって。今思うと、凄くいい環境でしたね。General Degreeとかジャロのテープとか男臭いのばっかり聴いてました」
 
 マイクを握り始めたのは約10年前のこと。「友達のサウンドマンに“お前、声低いからレゲエ歌ってみれば?”って誘われて(笑)」という、なんとも“隠れレゲエタウン”らしいスタートだ。その後、茨城、千葉を中心に活動する中、2005年地元の先輩であるレコード屋店長からSunsetにデモが渡り、彼らプロデュースの「Cyaan Stop」(feat. Soldier)、「Tree Of Heart」誕生に至った。本作には、その彼女の声/存在を全国に広めることとなった2曲も収録。またBush Hunterに加入する大きなきっかけともいうべきRyo the Skywalkerプロデュース「1Way」(feat. Bigga Raiji)も収録されている。
 
 「Bush Hunterに入ったのは私の強い希望で。アーティストがレーベルを立ちあげるっていうRyoさんがやってきたことは凄いかっこいいなと思ったし、バックアップしてる人たちの結束力も凄い。歌い手目線を大事にしてくれるというか、好きなことをやらせてもらえそうだな、と。実際アルバム1枚作ってみて、今はそれを肌で感じてます」
 
 『Expression』というタイトルは「私の原点“ダンスホール”の音に乗せて自分を表現する」という意味でつけられたというが、まさしく。「To The Mic」での“I'm singer born inna de dancehall”というフレーズが象徴するように、彼女のダンスホール・シンガーとしての天性のセンスをこれでもかというほど見せ付けられる仕上がりだ。また、DJスタイルも聞かせるRudebwoy Faceとの「Oh God..」などゴリゴリ路線もあれば、温もりあふれるナイヤビンギ「Soul Drum」など優しい歌声を披露するチューンもあり、その表現力の幅広さもしっかり刻まれている。
 
 「やわらかいものと攻撃的なもの、両方歌うのが自分のスタイル。それを1枚で表現したかったんです。何年か前までは攻撃的なものばっかりで、実はこんなふうに笑うこともできなかったんですよ。笑ってる顔を見られたくない、女だからってなめられたくないって変に力が入ってたみたい。それが、いろんなアーティストさんと知り合って、いろんなステージを見ることで違う表現法に気づかされたというか。自分の意見ばっかり投げるんじゃなくて、お客さんと共有する時間をもっと大切にしようって、それを一番に考えたいっていう気持ちが芽生えてきたんですよね」
 
 常に自身に掲げるのは「タフであること」。そして目指すは「マイク職人」。「一本筋が通ったアーティストになりたいんです」と最後に語っていたが、このアルバムには、すでにその一本の筋がしっかり刻まれているように思えてならない。

 

"Expression"
Akane
[Riddim Zone / RZCD-45910]

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