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302    COLUMN    UK REPORT

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND

Dennis Brown
 
Greetings Friends,
 
●まず、悪いニュースからはじめたいと思う。ベテラン・プロデューサーのJoe Gibbsが心臓発作で2月21日に63歳(65歳説もあり)で亡くなった。彼は1970年代に、Dennis Brown、Culture、Prince Far I、Barrington Levy、Sylford Walkerらをプロデュースし一時代を築いた男だ(Errol Thompsonと共にMighty Twoと呼ばれていた)。映画『Rockers』に本人役で出演しているのをよく覚えているファンも多いだろう。Gibbsは、カルフォルニア大学の電気工学科を卒業した後、ジャマイカで自身のプロダクションを興し、1960年代にRoy Shirleyの「Hold Them」を初シングルとして送りだした。彼はすぐにClement 'Sir Coxone' Dodd、Arthur 'Duke' ReidやPrince Busterと比較されるほどの大物プロデューサーになる。ロックステディ、初期のレゲエから1970年代後半のいわゆる“ロッカーズ・サウンド”時代に至るまで、Lee Perry、Niney The ObserverからErrol 'ET' Thompsonなどを起用し次々にヒット・ソングを生み出していった。そして、Dennis Brownの傑作『Visions Of Dennis Brown』で国際的な名声を得る。
 
そのアルバム以前にレコーディングしたBrownの「Money In My Pocket」もヒット、Althea and Donnaの「Uptown Top Ranking」も好セールスを記録した。このように順風満帆に見えた彼のキャリアを台無しにしたのは、UK生まれで、ジャマイカで活動していたシンガー、J.C. Lodgeが歌ったCharley Prideの曲「Someone Loves You Honey」のヒットだった。著作権という概念がまだ徹底されていなかったジャマイカにおいて、GibbsはPrideに著作権料を払っていなかった。やがてこの曲がアメリカでもヒットするようになり、運悪くPrideの耳にも届いてしまう。Prideはこの件を裁判沙汰にしてしまい、Gibbsは多額の賠償金のツケでRetirement Roadにあった彼のスタジオまでも閉鎖するほどに追い込まれてしまったのだ。1980年代、彼の息子RockyがマイアミでGibbsのプロダクションを受け継ぎ、父の残した音源を、質の悪いCDで細々とリリースし続けた。2005年、フランス人のJose Jourdainと共に設立した「Joe Gibbs Europe」で、Gibbsはやっとのことで音楽界に復帰した。復活したCrazy Joeレーベルからは多数のタイトルがアナログで再発売された。もちろん、新たなレコーディングも再開したが、以前のような評価を得ることはできなかった。Gibbsのキャリアで一番悔やまれることは、彼が80年代後半から90年代にかけて、まったく活動していなかったことだ。今こそ、60年代後半から70年代初頭にかけての彼の音楽を再評価する時かも知れない。
 
●尊敬されていたプロデューサーでありレゲエのスターだったMichael 'Mikey Dread' Campbellも亡くなってしまった。彼は昨年に脳腫瘍と診断され、それが原因で3月中旬に帰らぬ人となったのだ。彼は1970年代後期にJBC(ジャマイカ放送協会)で革新的なラジオ番組「Dread At The Controls」のプレゼンターとして有名になる。やがて、スタジオ・テクニシャンとしての技術の高さが評判を呼び、プロデューサーとして「Warrior Stylee」のディスコ・ミックスがヒット。アルバム『World War III』では誰も真似もできないヴォーカル・スタイルが注目を集めた。また、Mikeyは6部構成のTVシリーズ『Deep Roots Music』(UKのChannel 4ネットワークで放送された)のナレーションを担当し、シリアスさと明るさが共存している独特のナレーションで好評を博す。80年代中ごろには短期間UB40と契約し、何曲かをプロデュースもした。その後、アメリカに移住し働き続けたが商業的には成功したとはいえないだろう。ジャマイカのIrie FMでプログラミング・ディレクターへの就任という誘いもあったが、彼はアメリカでCaribbean Satellite Networkのアーティスティック・レジデンスというポジションに落ち着いた。アメリカの仕事のせいで、UKにおいてのMikeyの影は薄くなってしまった。だが彼が活躍していた当時、ポジティヴで質の高いレゲエ・ミュージックを作っていたのは事実で、それら手掛けた曲と誰からも好かれるようなパーソナリティによって彼は後世まで人々に思いだされるだろう。彼の家族に慰めの言葉を送りたい。
 
●次は良い知らせがある。当コーナーで何度も辛いお知らせをしてきたAlton Ellisが、化学療法が功を奏し、リンパ線ガンから回復しつつあると、言っているそうだ。なんと、ジャマイカで5月の終わりにステージに立つとも言っているらしい。彼の一刻も早い回復を心から願っている。
 
●Kymani Marleyとの結婚により、公式にMarley一家の仲間入りをしたLauryn Hillが、義理の母親であるRitaの著書『No Woman No Cry, My Life With Bob Marley』が原作の映画でRita Marleyを演じることになったようだ。この映画は2009年中には公開されるらしい。ちなみに、Bobを演じるのは息子のStephen Marleyなのだから、適役に違いない。
 
●Martin Scorsese監督によるBob Marleyのドキュメンタリー映画も、約1年後には公開されるようだ。
 
●BirminghamをベースにするB40のヴォーカルのAli Campbellが、ソロ活動に専念するために、グループを離れてから日が浅い。そんな中、興味深いニュースをBirmingham Mail紙が報じている。同紙は、South-Londonを中心に活躍している、ルーツ/ラヴァーズ・ロック歌手、そしてかつてのポップ・スターでもあったMaxi PriestがUB40に正式に加盟したと伝えているのだ。意外に思う読者もいると思うが、すでにグループは新メンバーでMarleyの「I Shot The Sheriff」のカヴァーを発表しているのだ。僕はUB40全盛期時代の兄弟によるホーン・セクション(トロンボーンにHenry 'Buttons' Tenyue、トランペットにPatrick)がたまらなく好きだった。このバンドで僕があまり気に入らなかったことといえば、Ali Campbellの鼻にかかった歌声だった。これから彼らがMaxi Priestとどのような音楽を創っていくのか、実に楽しみだ。
 Till Next Time................
 
(訳/Masaaki Otsuka)
 

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