Dubwise Revolution
Mad Professor
Interview by Toshiaki Ohba / Translate by Ichiro Suganuma / Photo by Simon Buckland
UKに拠点を置き独特なDUBミュージックを30年間に渡り追求し続けているAriwa Soundsの主宰者、Mad Professor。レゲエ・アーティストの作品はもちろん、Massive Attack、The Orb、KLFといったDUBの影響下にあるアーティストから、The Beastie BoysやRancidに至るまで仕事をこなす。逆に言えば、あらゆる音楽が彼のDUBを求めているとも言えるのだ。
●ダブ・ミュージックに夢中になったきっかけを教えて下さい。
Mad Professor(以下M):僕がダブ・ミュージックを作り始める前は、だだ単なる音楽ファンだった。とにかく色んな音楽が好きだったんだよ。レゲエ・ミュージックはもちろん、ソウル・ミュージックも色々収集していたんだ。だけどダブ・ミュージックを初めて聴いた時に俺は感動したんだ。僕は電気関係の知識がバックグラウンドにあったからかもしれないけどね。
ダブ・ミュージックはKing Tubby、Lee Perryらによって始まったけど、僕が思うに多くの名作ダブ・アルバムは1975〜76年頃に作られているんじゃないかな。僕はそれらを聴いて自分もやりたいと思い立って、1977年に小さなスタジオを始めたのさ。18歳頃だったかな。スタジオって言ってもあの当時だから最初は4トラックだったんだよ。それが1979年になる頃にはプロフェッショナルなスタジオになった。とにかく自分がそれに夢中になって、スペシャルな音楽を作りたいっていう思いやアイデアがあって、スペシャルなダブの楽曲を作り始めたって事さ。
今は2008年だよね? 現在、ダブ・ミュージックはあらゆる音楽に存在しているし、たくさんのファンがいるけど、ダブ・ミュージックが始まった当時は、聴いても嫌いな人もいたし、理解しない人も多かったし、変わった音楽だと思った人も結構いたと思う。だた僕の場合は、その音楽が好きで、それを作る技術があって、テクノロジーが好きだったら、貴重で価値のある音楽と思えたんだよ。
●ダブを定義すると?
M:ダブ・ミュージックはエレクトロニック・ミュージックにおける最初の形だ。そしてミュージシャンじゃなく、エンジニアがその音楽の魂やヴァイブスのクリエイターになった最初の音楽でもある。ダブ・ミュージックにおける重要な要素は、フィーリングとエフェクトなんだ。でも、ただ単純にエフェクトをかければいいって訳じゃなくて、エフェクトのクリエイティヴな使い方が重要なんだ。
●キング・タビーのサウンドの魅力、そして彼から受けた影響と言えば?
M:彼のリバーブ、そしてエコーの使い方、それら全てが好きさ。彼って想像力が凄かったんだと思うよ。とにかくスペシャルなんだ。そのシンプルさとか、全ての音があるべき場所にある感じとか。『King Tubby Meets The Upsetter At The Grass Roots Of Dub』なんか特に最高だね。もちろん僕とは違うスタイルを持っているし、バックグラウンドや方向性も違うから、自分がキング・タビーとどの点で一緒のアプローチをしているのかは分らない。自分が好きな事をキング・タビーが好きかどうかは分らないしね。テクニックに関してもそうだよ。彼が生きていた時代、つまり50〜60年代の機材はバルブエレクトロニック(真空管)を使っていたし、70年代に入るとゲルマニウム・トランジスタになって、70年代中盤にはシリコン・トランジスタになっていった。僕がダブを始めた頃は主にシリコン・トランジスタの頃で、ICに変わりつつある頃だったから、テクノロジーが違えば、アプローチも違ってくるからね。今は更にコンピュータだから。ProTools は全てがどうなっているか知らなきゃいけないからスタジオにはあるけど、あまり好きじゃないから使っていない。好きじゃなきゃいけない訳じゃないからね。僕が実際やっている事は30年間変わってないよ。アナログだし、オートメーションは使わないし、相変わらず24トラックだしね。だから新しい作品を作ってもいつものARIWAサウンドになるんだ。
●ARIWAサウンドの独自性を自身で分析して下さい。
M:それは僕には分らないな。サウンドの中に自分自身が入っているからね。つまりそのサウンドが僕って事なんだ。僕は他に出来る事がないから、自分の出来る事をしているだけなんだ。実際、自分が何をしているか分らないんだ(笑)。でも、それをやり続けているんだ。もしかしたら僕のファンならば、マッド・プロフェッサーのサウンドをリバーブやエコーだけで話を片付けないで、詳しく説明してくれるかもね。
●今後、ダブ・ミュージックはどのように進化すると思いますか?
M:僕たちは神を信じて、未来は彼の手の中にあり、未来は神のみぞ知るところって事かな。今も彼の手の中にあるのさ。僕はただの人間で、未来の事は分らないよ。神に訊く事を俺に訊かれてもさ。とりあえず今は、間もなくリリースされる Susan Cadoganの『Two Sides Of Susan』を終えたところだね。その次は『Dub You Crazy 2008』、その他は古いシングルを集めたARIWAコンピレーション・アルバム『ARIWA Singles Box S
et』をリリースする予定ってところかな。
最後に言っておきたいんだけど、ミスターECとは長年仕事をしてきて、初めて日本にコンサートで呼んでもらったし、オーバーヒートからはアルバムを出してもらっているし、本当に感謝しているよ。300号おめでとう! ここから更に素晴しい25年が送れる事を祈っているよ!
span class="cdtitle">"Dub Me Crazy"
Mad Professor
[Ariwa / ARICD 001]
記念すべきアリワ・サウンズのレーベル第一弾アルバムであり、その後も続く "Dub Me Crazy" シリーズ第一作目。
"King Tubby Meets The Upsetter At The Grass Roots Of Dub"
King Tubby Meets The Upsetter
[Celluloid / LTM 1035]
本文中にマッド教授が薦めているDUBミュージック界の両巨頭による作品。
"Two Sides Of Susan"
Susan Cadogan
[Ariwa / Victor / VICP-64063]
『Soulful Reggae』以来13年振りに2人がタッグを組んだビター&スウィートなラヴァーズ・アルバム。日本先行販売。