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Unmissable Story extra pieces from Ruffn' Tuff vol.13
Steven Stanley

 
Interview by Tadahiro Konoe / Translated by Mizuho Takahashi / Photo by Masataka Ishida
 

 
映画『Ruffn' Tuff』のために取材した数十時間のテープから本編や書籍からもページ数の制限でもれてしまった人達や発言を採録する当コーナー、前号に引き続きトップ・エンジニアの一人、スティーブン・スタンレイの登場。レゲエを愛する生粋の音職人ならではの発言の連続だ。
 
 レゲエがこれからどうなると思うって? そんなの、超能力者か預言者を連れてこいよ。俺にはわかんないから。さっきも言ったけど、俺は受け止めるままにミックスするだけ。だいたい俺は、明日のことはあんまり心配しない。今日、間違いなくいい音が作れたかどうか確認する。それを15年間続けてきたんだから。俺がわかってるのはそれだけだな。

 ジャマイカのヴィンテージ・ミュージック? 永遠だよ。魂の音楽だからね。ビートルズの音楽が死なないのと同じさ。いい気分の音楽だから消えない。絶対に死なないね。これからもずっとここにある。シンプルで素敵な音楽。とりあえず俺が生きている間にはなくならないね。300年後はどうなっているかわからないけど。俺はあんまり深く考えない方だからなぁ。どうなるかは、もっと若い連中に任せることにするよ。ヴィンテージを好きかって? もちろん。ん? 「好き」じゃないな。「愛してる」んだ。それ以外、言い様がない。只々「愛してる」。

 (ジャマイカ音楽における)アメリカ音楽の影響が大きいのは、ハッキリわかんないけど、ここからアメリカが近いからじゃないの? アメリカに行った連中は必ずレコードを買って帰ってきたし。アメリカのラジオを聞けたりするし。今は世界中の音楽が入ってくるけどね。60、70年代は、多分、マイアミに行ってレコードを持って帰ってきてダンスでそれをターンテーブルに乗せてたんだろ? 俺がこの目で見てたわけじゃないけどさ。俺自身が聞いていたのはアメリカやイギリスの音楽。ビートルズだろ。ジェリー・バトラー。それから、ええとなんて名だっけ、思い出せない。今、思い出すからな。えーと、えーと。あっ、O・ジェイズだ! テディ・ペンタグラスも。そっちで名前を挙げてくれた方が早いかもな。そういうアーティストのレコードはここでも買えたよ。マイアミ辺りで買い付けてきて、こっちの店で売ってたんじゃない? そういう店にはジャマイカ産のレコードもあった。今ほどには多くなかったけど。人気は同じくらいだったんじゃない? まあ、でも、ホントのこと言うと、最初は外国のレコードの方が、人気があったと思う。ラジオでもジャマイカの曲より外国の曲の方がよくかかっていたし。それが段々と肩を並べるようになって、今では地元勢が圧倒的に優勢だね。

 どうやってスカからロックステディやレゲエに変化したかって? 俺にはわかんないよ。最初はアメリカのロックンロールを演奏してたと思うんだよね。誰かがそれを怠けてさ、面倒になってゆっくり演奏したんじゃないの? こういうことは俺よりも年上の人にインタヴューしなよ。ロックステディは俺の時代の前に始まった音楽だからさ。あの時代の人ならしっかり答えられるよ。スカは俺のおじさんがやってたな。レイモンド・アルバートっていうんだけど。96年に死んじゃった。彼が生きてたら、君らにもっと詳しく話せたのにね。スカはほら、こうテンポが速いから演奏が大変だろ。スタジオにいた誰かが、腹がいっぱいとかなんとかで、弾くのがかったるくなってさ、で、ギターのテンポが落ちちゃったんだよな、多分。スッチャスッチャって。そしたら、おい、これイケるなって感じで。もっと年配の人に聞いてよ。バニー・リーとかさ。彼なら何でも知ってるよ。こういう話は他の誰かに聞いてくれよ。俺はこっちのことに明るくないから。俺は一日中働いてるだけの人間だよ。ストリート系じゃなくて、スタジオに篭って仕事してるのが大好きなの。ヴァイブスは静寂から得るタイプってやつね。俺はストリートも外出も好きじゃない。外の喧騒とか騒ぎとか喧嘩とか物騒なこととか嫌なんだよ。平和が一番。

 なんでレゲエが世界中で聴かれるかって? 俺も誰かに教えてほしいよ。君たちみたいにジャマイカの外から来た人の方がよくわかってんじゃないの? 日本の人なんかそうだろ? 俺は日本に行ったことないけど、日本の人は俺のことよく知ってるもん。教えてくれよ。お前らがここに来て話してくれなきゃ外の情報はわからない。俺にできることはただ、音楽をいい感じにミックスすること。これだけはハッキリ言える。自分でミックスした音が俺自身を楽しませる。そして、そういう音は、たいてい、多くの人を楽しませるんだ。だから俺は、それを貫き通すだけなんだよね。
 
『Tom Tom Club』
Tom Tom Club

[Sire]
  
■DVD
「Ruffn' Tuff 〜 Founders of The Immortal Riddim」DVD
監督:石井 "EC" 志津男
[Dex Entertainment / DXDS-0064]


  
■CD
「Ruffn' Tuff 〜 Founders of The Immortal Riddim」
O.S.T.

[Overheat / OVE-0100]
¥2,625(tax in)カリプソ、スカ、レゲエなど全16曲のベスト・セレクション。

 
■BOOK
「Ruffn' Tuff:ジャマイカン・ミュージックの創造者たち」
監修:石井“EC”志津男
A5判/192ページ

リットーミュージック¥1,890(tax in)

出演者の中から13名のインタヴュー+石井、石田、落合のエッセイ集。

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