リディム・オフィシャル・ウェブサイト
THE MAZE

Sadiki
from harmoney house to the world
　
Interview by Natsuki Toi / Photo by Fumitaka Miyoshi
　

ムスリムの語で「誠実なもの」という意味の名を持つ新星シンガー、サディキ。クラシカルなファルセット・ヴォイスが心地良い正統派シンガーは、実に自立した大人の男。ベレス・ハモンドの世界を直に受け継ぐ、ニュー・フェイスに話を聞いた。
　
名前同様、一風変わった経歴の持ち主でもある彼。生まれはキングストン。10代でシカゴに移り住み、米レーベルにて別名で音楽活動を始めてからジャマイカに通いだし、業界のプロデューサー達とリンクを深めていく。しかし、彼の運命を決定づけたのは、なんと言ってもベレス・ハモンド。彼のお膝元ハーモニー・ハウスにて徹底的にシンガーのレッスンを受け、「Music is Life Tour」（2002〜2003）のフロント・アクトを務めたのだ。現在ニュージャージーで自身のレーベルを拠点に活動しているサディキに、まずはプロフィールを語ってもらった。
　
「父は有名になる以前のパラゴンズのオリジナル・メンバーだったらしいんだ。というのも、本人は一切その話は語りたがらないから、ボブ・アンディが教えてくれた。父は、僕が音楽の道に進むことには、そりゃ反対したよ。わかるだろ？　でもベレス・ハモンドとは生まれが同じSt.Maryだったから昔から家族ぐるみで知り合いではあったんだ」
　
しかし、「人間としてのベレスは誰にでもオープンだけど、（1アーティストとして）受け入れられることはとてもとても難しかった」。最初は相手にされず、通い詰めた2ヶ月。そしてついに貰った１つのリディムに歌った曲が認められ、ようやく重い扉が開いた。その後は直々にヴォーカル、ソングライティングから楽曲の構成まで、シンガーとしての徹底したレッスンの日々が始まった。「まさにブート・キャンプか、映画で見た“カラテ道場”（笑）、毎日がサヴァイヴァルだったよ」。そうした音楽的なことはもちろん、人間的なことまで、ベレス・ハモンドという卓越した世界に触れた経験は、作品に、そして実際目の前にした本人にやはり計り知れない影響を与えているのは間違いなさそうだ。実にソフトで紳士な印象のサディキだが、強い音楽への愛情と確固とした自立心が「ものを作る人間として、どのように始まり、そして終わるかという一連のことを知っておきたかったんだ」と自身のレーベル、Skinny Bwoy Recordを立ち上げ、今作の『Morning's Come』の全面セルフ・プロデュースにも繋がっている。しかし収録された楽曲はどれも、彼同様とてもリラックスしている。
　
「輝くものが欲しいなら、ぼくのハートをあげる」なんて、スウィートなヴァースが光る「Slipping Away」。ラスタ・エンプレスとの恋愛をうたった「Love In Your Eyes」について、宗教の違いは愛の妨げになる？の問いには「すべての宗教のコアは愛だろう？　だからノー・プロブレムさ」とサラリ（ちなみに本人はムスリムではない）。「Mary's Story」では美しい“Guardian Angel”トラックに乗せて、あえて「この曲では悲しんで欲しいんだ。誰にでも起こりうる残酷な結末を知ることで、多くの若者がそうならないように気づいて欲しい」と語りかける。シング／シングジェイ／ディージェイの両刀ならぬ三刀使いもお手のモノで、ダンスホール・トラックでは見慣れぬプロデューサーKrossとDaddy&Hypaの名が。「彼らはいずれもフランス人で、インターネットを通して知り合ったんだ。今はmyspaceやinstant messageで世界中のトラック・メイカーとすぐリンクができる。すごい時代だよね」
　
そんな故きを温ねて新しきを知る、サディキの音楽とは？
　
「ユニヴァーサル。音楽一本でなく日雇い仕事をしていた時、人生を無駄遣いしちゃいけないと気づいたんだ。全ての人間に神は平等に才能を授けている。僕はただ決意し、そしてその能力を無駄にしないよう努力した結果がこの作品なんだよ。多くの人の人生に、いいインスピレーションを与えられたら嬉しいと、強く思っているよ」
　
"Morning's Come"
Sadiki
[P-Vine / PCD-22292]