Changin' Course!
Text by Reiko NAGASE SMITH(協力:アイランドツアー)
ハリケーン・ディーン襲来で一週間延期され、9月3日におこなわれたジャマイカの総選挙は、予想を上回る接戦で、野党JLPに18年ぶりに政権が渡る結果となった。
1989年の総選挙でPNPが政権を握って以来、4回目の総選挙、悲願の勝利。
選挙キャンペーンも歴史的な白熱ぶりで、ジャマイカ名物、歌って踊る選挙。オレンジとグリーン(共に政党のシンボル・カラー)にまみれ、オレンジとグリーンを避けること数ヶ月。
“Dis is my story, Potia's story〜”、が、うたうは無名のアーティストたち。レゲエ界のアーティストがポリトリックス(「ポリティクス=政治」を皮肉る造語)に巻き込まれたのも、'90年代までの話。ポリティカル・ガリソン地区(政治色の強いゲットー地区のこと)出身のアーティストたちも、政党色は敢えてださなくなってきた。
テレビやラジオで繰り返しオン・エアされる選挙キャンペーンのCMは、DJクラッシュやサウンド・クラッシュ顔負けの凄絶さ。ルールなしのバッド・マインド争い。結果、野党はAD勝ちしましたね。
政党キャンペーンCMは、圧倒的にJLPに圧されたPNP。首相ポーシャ・シンプソン・ミラーが、過去にどこかで発言した「Not changin' course!」の雄叫びを逆手にとって、「ジャメーカ、いまこそチェンジング・コース!(コースを変えるべきだ)」を合言葉に、JLPは、ジャマイカの大衆をくすぐるわかりやすい政党キル・チューンCMで、笑わせてもくれました。
こういった、言葉の遊びは国民的に大得意。縁起を担ぐジャマイカ人、言っちゃあいけない言葉、嫌いな言葉を避ける傾向はもう伝統的でもあるようで。
GayとかManとか男をあらわす単語を、男が使わないようにする傾向はより顕著に。ジャマイカの地名も、Montego BayがGaltego Bay(ギャルティゴ・ベイ)に、MandevilleがGaldeville(ギャルデヴィル)などManをGalに変えてよぶことを愉しんでるって話、前にも書いたけど、よりエスカレートしてます。
嫌いな言葉を避けるのは、なんといってもラスタファリアンがオリジナル。たとえば……
Live fi vegetable yuh
Dying to meet you(死ぬほどあなたに会いたい)の、dying(die=死)をliveに変えて、meetをmeat(肉=嫌いなもの)にかけてさらにvegetable(野菜=好きなもの)に変えて。うーん、ここまでくると、なんのことやらわかんなくなってくる。
ラスタファリアン的ポジティヴ・ワードは、ラスタファリアンじゃなくても好んで使われ、流行に敏感なお洒落な男の子たちにもハートフルに使われる。
forwardも好きな言葉のひとつ。Mi a come(いま行くよ)より、Mi a forward、のが味がいい。
アルファベットのiが好きなラスタファリアンたち、i&i、irieにはじまってiney、idren(アイドレン←brethren=ともだち)、itection(アイテクション=protection)まで。
Jah guidance and itection、などと使います。
blessは、日本語に訳すと「神様の祝福、神様のご加護」など硬くなるけど、ラスタファリアンのあいだでは挨拶言葉でもある。
Nuff blessings
Stay blessed
さらにラス色が濃くなると、
Blessed in the name of his imperial majesty, jah rastafari
男性が圧倒的に多いラスタファリアンにも、女の子をあらわす言葉はいっぱいあって、empress(エンプレス)、sistren(シストレン=前出idrenの女の子版)、dawta(ダータ=daughter・娘)、lionessなど。「ライオネス」は雌ライオンをあらわす英語だけど、いかにもラスでナイスな言葉でしょ。
Sistren beauty lioness blessing us up wid irie vibes
ハリケーンも去り新政府設立で新学期のはじまり。ジャマイカ、チェンジング・コースでラスペクト。