The Charm Of Wackie's
Mark Ernestus for Basic Channel
Construct by Yasushi Ishibashi / Translate by Ichiro Suganuma
ベイシック・チャンネル、リズム&サウンド、そしてワッキーズ再発シリーズの仕掛け人の片割れ、Mark Ernestusが日本に来ているとの情報をキャッチした我々は、急遽電話インタビューを敢行した。さすがマイスターの国、ドイツのレーベルだけあって、そのこだわりを持った一連の再発はワッキーズへの並々ならぬ愛情から産まれていた。
●どういったいきさつで、このワッキーズ再発シリーズを始める事になったのですか?
Mark Ernestus(以下M):もともとワッキーズが大好きでレコードを集めていたんだけど、幸運な事にUKワッキーズのレイと昔からの知り合いだったり、1996年か97年にN.Y.でヴィンテージのレゲエのレコードを探している時にロイド・バーンズに出会ったりしたんだ。
チョーズン・ブラザーズ名義の未発表曲「マンゴ・ウォーク」のリメイク版「マンゴ・ドライヴ」が、ワッキーズと僕達の最初の仕事かな(注釈:この2曲はリズム&サウンドの第二弾12"シングルとして1998年にリリースされている)。ロイド・バーンズもあの仕事で僕らを信用してくれたと思うし、こっちにはレーベルも配給部門もあって、彼には膨大なバック・カタログがあった。だからこういう流れになったのはとてもナチュラルだったと思う。最初は12"のリイシューを考えてたんだけど、レイが「ラヴ・ジョイズ(のセカンド・アルバム『ラヴァーズ・ロック』)はどうか?」って提案してくれて、そこからは自然と今のラインナップになっていったよ。
●これまでにかなりのタイトルを再発されてきましたが、その中でも思い入れのある作品や苦労話があれば聞かせて下さい。
M:沢山ありすぎて言えないよ(笑)。大好きなのはいっぱいあるし、みんなそれぞれに好きな所があるからね。80年代中頃からワッキーズに夢中になり始めたけど、当初は大して持ってなかった。オリジナル・リリースから2〜3年後、でももうすでにレアになり始めていた頃から買い漁り始めたんだ。まあ今に比べれば探すのは簡単だったけどね。その後もずっと集めていて、今じゃほぼ全部持っているよ。
オリジナル・テープはロイド・バーンズから直接借りたものや、ロンドンのワッキーズにあったものを含め200本程あって、再発する時はそこから起こしているんだけど、例えばアルバムだと「この曲はあるけど、あの曲はないぞ」みたいな事があったりして大変さ。そういった場合はしょうがなくレコード盤からマスターを起こしたりしてるよ。いい機材を使ってるから大丈夫だけどね。
●マスタリングのクオリティが高いのが評判です。再発にあたって何かこだわりはありますか?
M:1995年にマスタリング・スタジオ(ヴァイナル・カッティング・スタジオ)を設立し、そこでマスタリングに関する知識を得たり、自身でレコードをカットする事を学んできたからね。スタジオを持つ前は大体デトロイトやシカゴ、ニューヨークでやっていたけど、最初にカットされる時は出来るだけ現場に立ち会っていた。たまにマスタリング・スタジオによっては、完璧にノイズを除去しちゃうだろ? でもノイズを取ってしまうと、その音楽自体の雰囲気まで変わってしまう。だから、結局はいいバランスを取るのが必要なんだよね。僕たちのアプローチは出来るだけオリジナルの雰囲気を損ねないようにするって事さ!
やっぱりアナログ・レコードが好きだから、CDだけでの再発はしてないんだ。CDを買う人とレコードを買う人は異なるから、自ずとビジネスもマーケットも違ってくるよね。CDだとチェーン店でも販売されていて宣伝広告に左右されたりもするけど、アナログ・レコードを専門店で買う人はコレクターだったり、DJだったりして自分が何を欲しいのかよく分っている。だからアナログ・レコードのマーケットに身を置いている方が楽しいんだ。セールスも実はCDとアナログと同じ位なんだよ(注釈:タイトルにもよるが、CDの販売数はアナログの数倍になるのが普通なので、これは驚きだ。彼らの愛情溢れるクオリティが、アナログ・ユーザーにどれだけ支持されているかが窺える)。
●ワッキーズ再発シリーズの今後の予定を教えて下さい。7"盤に関しては今後もリイシューされないのでしょうか? また、ワッキーズ以外のレーベルの再発シリーズなどはどうですか?
M:3〜5タイトル位かな。今、ラインアップされているのは、とてもレアなシュガー・マイノットやダブ盤とかで、サンプラー・アルバムの第3弾も考えている。多分その位でこのシリーズも終わりだろう…、ワッキーズの音源だって無限にあるってわけではないからね。7"に関しては、今は詳しく言えない。可能性がゼロなわけじゃないけど、もしあったとしてもこのリイシュー・シリーズとはまた別の形でのリリースになるよ。まだ全く不確かだけどね。
もともと音源をライセンスしてリリースするといったリイシュー・レーベルになりたかったわけじゃないから、ワッキーズ以外の作品の再発は考えていないよ。ワッキーズに関してはロイド・バーンズとの特別な友好関係があっての事だからさ。
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『BULLWACKIE ロイド・バーンズとワッキーズの輝き』
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