ROOTS TIME
SILVESTRE JACOBI meets EC
Translated by Kenichi Eguchi / Edited by Toshiaki Ohba
おんぼろ車に乗ってレコードを売り歩くラスタファリアン2人による珍道中映画『ルーツタイム』が面白い。この映画のアルゼンチン出身の監督、シルヴェストレ・ハコビが公開前に来日するとの情報を得て、『ラフン・タフ』の監督、石井“EC”志津男と対談を決行。ジャマイカで映画を撮る難しさについての話題で盛り上がり…。
EC:オレは1984年に初めてジャマイカに行って以来、50〜60回は行ってるけど、この映画を観てどこにでもあるジャマイカの毎日の風景と台詞で「あるある」って感じなの。凄く面白かったよ。で、アルゼンチンに生れてなぜ、レゲエに興味を持ったの?
シルヴェストレ・ハコビ(以下S):10歳にも満たない頃におじいさんに貰ったTシャツにドレッドロックスの絵がプリントされていて「これ何?」って訊いたんです。「これはラスタファリアンで世界的に有名な人」って教えてくれて、それがボブ・マーリーでした。その後すぐにレコードを買って徐々にラスタファリアンも含めてレゲエに興味を持ちました。その後も世界中のエスニックなものに興味を持って、19歳の時にウルグアイでカンドンベ(Candombe)の映画を撮ったんです。カンドンベとはウルグアイに連れてこられたアフリカ系の人達のカルチャー、ムーヴメントの事です。キューバや他のカリブの島々にも行きましたし。そうしたアフリカから渡って来た人達の文化に興味があるんです。
EC:この映画を作ろうと思ったのもそこにあるの?
S:NYで映画の勉強をした後にそうしたものをちゃんと映画にしたくなって。で、最初の長編映画を作るならラスタファリアンの文化と決めていました。
EC:どの位の期間で撮ったの?
S:脚本と配役と撮影とで4ヶ月間。脚本の叩き台はあったけど、ラスタファリアン達の意見を聞きたかったし、きっと影響も受けるだろうから、変わる事は予想してました。
EC:一番大きく変わった事は?
S:それは沢山(笑)。最初に決まっていたのは2人のラスタファリアンのロード・ムーヴィという事。あとラジオが流れている車に乗っている事、ブッシュ・ドクターに連れて行くって事だけです。それ以外は随分と変わりました。
EC:変わっちゃうよね、ジャマイカは。オレも映画作った時は次の日のアポイントさえ入れてなかったし(笑)。だって何百っていうプロブレムを体験してきたからさ(笑)。だから、あそこで何かを撮る事の大変さってよく分るんだ。
S:思っていたよりもずっと大変でした。本当に作りたいという気持ちがないと出来ないですよ。だからジャマイカで作られた映画があれば、もうそれだけで尊敬してしまいます。
EC:設定は何年?
S:特に限定をしたくはないですけど、ボブ・マーリーやピーター・トッシュとかが活躍していた時代かもしれませんね。主役の2人が象徴しているのも昔のラスタファリアンです。
EC:何年に撮ったの?
S: 2003年だったかな。24歳の時ですね。
EC:俳優は誰も使ってないんだってね?
S: そうです。バンドもプロではありませんし。
EC:ジャー・ブルとはどうやって出会ったの?
S: ジャマイカに着いた日にウエスト・インディーズ大学でボボシャンティ達が集まる会議があったんです。そこに彼もいて。彼のカメラの前の存在感、話し方とかそういったものに惹かれてキャスティングしました。彼は映画に出てくるキャラと同様、凄く個性的な人でしたよ。
EC:オレの映画『ラフン・タフ』を観てくれたんだってね。
S: 凄く素晴らしい映画でした。ヴィム・ベンダースの『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を観た時と似た感覚を覚えました。凄くハートを感じたし、観終わった後は凄く良い気分になれました。車の中から撮ってるショットがありましたよね。あの通りを歩くって事はどういう事なのか分りますよ。いつ撃ち殺されるかもしれないし、銃かナイフを持っているボディガードと一緒でないと歩けませんよ。僕は「止めろ! 夕べここで人が殺されたんだから!」って言われ諦めました。世界中であそこが一番タフな撮影場所なんじゃないですか?
EC:他に危険な目にはあってない?
S: それはもう沢山(笑)。特にキングストンですね。役者をあるエリアに連れていこうとしたら「殺されるから絶対に他で撮ってくれ!」って。レゲエやラスタファリアンが伝えようとしている事とは違う方向に向かってる気がして残念でした。
EC:DVDにはオマケ映像があるんだってね。
S:メイキングのドキュメンタリーがあるんです。そこにはラスタファリアンの文化についてのドキュメンタリーも入っていて、同時に役者の実生活のドキュメンタリーも入れる予定です。そちらも是非観て頂けたら嬉しいですね。
9/1(土)より渋谷アップリンクX、吉祥寺バウスシアターにて公開。
その他会場など詳細はホームページ、www.uplink.co.jp/rootstime/
同名のサウンドトラックも9/7、アップリンクよりリリース決定!