Review by TAKASHI FUTATSUGI
1. MC Moggy From The 9 Far East / DJ George Most Focus On MC Moggy "Katrina" (Focus)
大阪発のダイナミック・デュオ=The 9 Far Eastの片割として、又パーティMCとして各地を揺らしまくっているMC Moggy a.k.a. キラニアのソロ名義としては初のストリート・アルバム。昨年暮発売のJazzy Blaze盤同様、FocusのDJ Georgeがド派手なターンテーブル・ミックスを施したベスト的な本作は、発声の良さも生きた“ワイルドでナスティなフロウ”(レゲエ・ファンもイケる!)を最大限に楽しめるよう丁寧に作られた印象。主役の所属するNite Men、Hi-A+Productionらによるビーツも多彩。
2. Swizz Beatz / One Man Band Man (Motown)
再びトップ・プロデューサーの座に返り咲いたスウィズ・ビーツの通算2作目となるソロ作が到着。と言っても今回はプロデューサー=スウィズではなく、ラッパー=スウィズとして勝負をかけているようで、弟分のネオ・ザ・マトリックスやノッツ、ニードルズといった信頼しているトラック・メイカー陣の制作曲が大半で、当の本人はこれまでのフィーチュアリング曲で披露していたようなお祭り系ラップ中心に、テンポ良い“パーティMC”を聴かせてくれる。ボンサグ、帰ってきたキャシディらと共に自らの城フルサーフィスを更に盛り上げられるか?見モノである。
3. Yung Joc / Hustlenomics (Atlantic)
来日公演での生モーター・サイクル・ダンスも記憶に新しいA-タウン・ヤング・ヒーローが早くも2ndをドロップ。事実上ディディを始め、只今ブレイク中のゴリラ・ズー(レーベル・メイトとなるBoyz 'N' Da Hoodの一員)にバン・B、トリック・ダディ、リック・ロス、スヌープ・ドッグ、ザ・ゲーム、ジム・ジョーンズ、と全米各地の強者たちを迎えた本作は、タイトル通り“成り上がり感”の磐石の内容となっている。そのストリート・スマートぶりが全開になったラップ・ワールドは聴く程にクセになる。
4. UGK / UGK : Underground Kingz (BMG)
ヒューストンを代表する、いやサウス・シーンそのものを代表するキャリアと実力を持つアイアン・タッグ=UGKの約6年ぶりとなる6作目が遂に…。ピンプ・Cの服役中にもソロでゲスロで、と引く手数多だった、誰もが一目置く存在なだけに久々感はない。が、この密度の濃さ(2枚組)は普通じゃない。NWAやトゥー・ショートのリメイク物を含め、そして自ら名乗りを上げたような(?)ゲストやプロデューサー陣を含め、今のところ2007年最大級の祭り、なのでは? それにしてもこの強烈なFunk感は何だ。しかも泣ける(=ブルージー)ときた!
5. Remy Ma / The Bx Files (Sure Shot)
テラー・スクワッドを脱退したフィーメイル・ラッパーが放つ事実上の2ndアルバム。マーダー・ムック、T-レックスとマイクを回すロン・ブロウズ名義曲「Tek 9」や、ジェイ・ミルズ、メイノーらとの共演曲も含まれている為、ストリート・アルバム的な趣向は当然強い。だが、よりハードな本来の路線への回帰を語っていただけにタフな“ブロンクスター”ぶりがストレートに出た本作は我が意を得たり!という所なのだろう。ヒート・メイカーズらが提供したビートを含め、このガラの悪さはちょっと他では聴けないくらい。ナメてかかると火傷しますよ…。
6. 2Pac / Numixx Klazzics Vol.2 (Evolution: Duets & Remixes) (Koch / Victor)
今年の命日(9/13)には、ここ日本でも4タイトルのコレクション・アルバム等がリリースされるのだが、中でも目玉の1枚となるのが“デス・ロウ”時代の名曲をリミックスしたあの『Numixx Klazzics』の第2弾となる本作。前回はサウンド面の全てをハウス・バンド=ロウ・ヒッターズが請負っていたのだが、今回はジミ・ケンドリックス+J・マスのストリート・レディオやイル・ウィル・フルトン、イル・マインドらが原曲のイメージを壊さぬよう(?)アレンジし、そこに“デュエット希望”のファン・アーティストたちが乗っかる、というサブ・タイトル通りの内容。これなら熱心なファンもOKだろう。
7. Camp Lo / Black Hollywood (Good Hands)
『Uptown Saturday Night』('97)という色んな意味で眩しスギるデビュー作の壁を中々越えられずにいたキャンプ・ローだが、同作のキーマンだったスキー(・ビーツ)を再々プロデューサーに迎えたこの3rdは中々、調子いい。スキーとのリユニオンと言ってもその全てがあの頃のままである苦もないが、ブラックスプロイテーション・ムーヴィばりのアート・ワークから受け止められる期待感通りの(?)、クロいアルバムに仕上がっている。オールドスクール・リバイバル的な雰囲気もそこそこに、相変わらずネタ使いの冴えてるトラックと軽妙そのものの2MCに舌鼓を打ちたいトコロ。
8. Muro & Zoro / East River Park (Toy's Factory)
King Of Diggin'ことMuroのキャリア初のインスト・ブレイク・ビーツ・アルバムが完成。タイトル通りNYCに思いを馳せた“あの頃”のサウンドを甦らせた珠玉のブレイクの数々に、アート・ワークを担当した『ワイルド・スタイル』のZeroことリー・キニョネスも「思わず興奮したよ!」と熱っぽくコメント。ヒップ・ホップが生んだブレイク・ビーツという概念がそのルーツとかけ離れたところで一人歩きしている今だからこそ、改めて世に問いたかった、と語るMuroの妥協なきパーフェクト・ビーツ地獄に涙せよ。
9. 童子-T / One Mic (Universal)
“言葉ハジくプロ”童子兄さんの3枚目のオリジナル・アルバムは、正にキャリアの頂点となる豪華かつ意味深い1枚に。例のシングル3連発「Don't Stop」→「悲しみにさよなら」→「One Love」は勿論のこと、それらの曲とタメを張る隠し玉もザックザク。Buzzer BeatsのトラックでVerbal、Little、Kohei Japan、青山テルマとリレーする曲や、Zeebraとの久々のタッグ曲、加藤ミリヤ、安良城紅をそれぞれFeat.した曲に、Mummy-D、Jujuとの新名曲、更には「続少年A」まで…。1本のマイクに想いを託してここまできた童子-Tの真価がここにある。
10. Mellow Yellow / 大全集 (File)
94年の結成以来、マイペースに活動を続け、現在の編成に落ち着いた彼らの足跡を辿る“大全集”。古くからのファンは「V.S.O.P part2」「食わず嫌いRemix」「農業革命」のCD化が嬉しいトコロだし、2枚組のボリュームだけに普通なら落とされそうなところまでが網羅されていて、その上、ブランニューとなる「Top Rock」(カッコいい!)も入っているので一見さんもすんなり楽しめる仕掛けに。Kohei JapanとK.I.Nの進化を耳で追うも良し、途中参加のDJ IS'S'が馴染みゆく姿を確認するも良し。UJTのイラスト入りブックレットも付いてるとか!
11. DJ Quietstorm & 4CE Finger / Japanese Alien Human Being (中目黒薬局レコーディングス)
中目黒薬局=DJ QuietstormのサイドMCとして知られる“シャープな言葉と、イカしたフロウの持ち主”4ce Finger(元Limbic System)。彼の“初音盤”は勿論、Quietstormのトータル・プロデュースによるTightな仲だからこそのVibes高い仕上がりに。同郷=北海道よりI.N.I(Mic Jack Production)や、東京のT.H.C Crewに、Killer Bong + JubeからなるThe Lefty、横浜のGYP-C(Socona-C)、西のMili(瘋癲)と駆けつけた面子もイチイチ強力だが主役の器のデカさに驚かされるFreshな1枚。
12. 剣桃太郎 / Xカリバー (Kix)
妄走族より“最後の核爆弾”こと剣桃太郎の初ソロが…。流れ者(アウトロー)を地でゆく彼のライヴそのままの熱量が篭った内容であるのは確かだが、妄 作品でも垣間見られた“ストーリー・テラー”としての魅力も格別だ。特にMista Smithとの掛け合いが面白い“13階段でのフリー・スタイル”の体の「死刑執行0:01」が凄い(←聴いたことがないタイプの曲)。妄 の面々や、G.K. Maryan、D.O、Rino、Twigyらとの絡みも嬉しい、エクスカリバー級の重要作。